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Venture Deals (15) VC Reservesとは?


ベンチャーキャピタリストは多くの秘密を抱えています。どの企業に投資したいか、お気に入りかの起業家のタイプ、そして好きなパートナー&嫌いなパートナー、等です。ですが、彼らの最大の秘密は「Reserve」(準備金)です。信じられないかもしれませんが、ベンチャーキャピタリストがあなたの会社に投資するとき、彼らは実際にはもっと多額の資金の投資を計画しているのです。

(クリント)リザーブ(準備金)とは何ですか?

(ジェイソン)リザーブとは、VCが将来スタートアップに追加投資するため予め準備しておく資金です。もし、VCがあなたの会社のシリーズAの資金調達で500万ドルを投資したからといって、そのVCからの投資は未来永劫それでおしまい、などと思わないでください。実際にはそんなことはありません(VCはフォローオン投資をするからです)。

私たちVCがスタートアップへの投資をコミットするとき、オフィスの後方では密かに次のような一枚の紙を書いています。「今日は5本(500万ドル)投資したけど、あわせて3本(300万ドル)から8本(800万ドル)を将来の追加投資資金として確保しておきます。

(クリント)起業家としては、VCはリザーブのことを裏で考えているんだ、と理解しておくことは重要ですか?

(ジェイソン)我々VCが起業家に対し、リザーブとは何たるかを伝ることはめったにありません。でも、尋ねられたら、私はリザーブについて正直に話しますよ。我々Foundry Groupでは、「1社あたり1,000万ドルまでなら簡単に確保できます。1,000万ドルから1,500万ドルの間のリザーブを確保したいのであれば、あなたの事業が順調である必要があります」と起業家に伝えています。簡単に言うと、1,000万ドルまでならどんな企業でも、リザーブとして確保できる、というのが我々の運用方法です。

起業家の皆さんには、VCに「リザーブっていくらあるの?」と聞いてみることをお勧めしますよ。特に、複数の出資候補先の選択肢がある場合は、次のように尋ねてみたら良いのではないでしょうか。「おたくのVCではリザーブはどうなっている?どうやて使ってる?」と。

話は変わりますが、VCがリザーブを適切に配分できず、大惨事が起こった過去があります。

これはドットコムバブルがはじけた際、実際に起こった話です。当時は、いずれ上場または買収され、投資資金が回収できるであろうと誰もが信じてやまないスタートアップが数多ありました。ところが、突如市場が崩壊し、こうした将来を嘱望されていた企業の多くが突如、資金を必要としました。ところが十分な資金を確保していたVCはほとんどなく、多くのVCは、資金を拠出し救うべき投資先とそうではない先の選別を迫られたのです。

とあるVCでは、ポートフォリオ企業の半分が、資金供給を受けることができず、完全に見捨てられたケースもありました。リザーブの活用は予定されていませんでした。そのVCはお気に入りの投資先を選別し、その企業だけにリザーブを割り当てたわけですが、その選択の一部は正しく、一部は誤っていました。

VCにおいて、リザーブの管理・運用はサイエンスではなくアートです。どれだけのリザーブが将来必要になるかはわからないのです。この運用には、多くの経験の積み上げが必要です。 ただ、一般的にVCは、個々のポートフォリオ企業のために個別にリザーブを配分し管理しようという手法ではなく、投資額に対し、いくらリザーブを用意しておこうという全体感を見ながらリザーブ管理をしています。ちなみに、Foundry Groupでは、四半期毎にリザーブ運用・管理について話し合っています。

(クリント)起業家がVCと話す際、「これだけのお金が必要だ」と言うのは通常だと思います。では、将来必要となる追加資金の水準について語ることは、起業家にとってどの程度重要ですか?

(ジェイソン)とても重要なことです。起業家は今後3年、4年、または5年でビジネスがどのように成長するのか、VCに語り、同意を取り付ける必要があります。したがって、目下の資金調達額だけでなく、将来にわたり必要となる資金額について語ることは本質的に重要です。

今日は500万ドルを調達しますが、24ヶ月後、うまくいったらさらにこれくらいのお金が必要になってきます、といった議論をVCと起業家で展開するのです。もちろん、この議論の内容はすべて推測であり、あまり正確ではないのは十分承知ですが、できるだけ早くその議論をしておくことが重要です。

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