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PEファンドの一般的なマネジメントフィー水準、投資期間、キャリードインタレスト水準等がわかるレポートを発見

「マネジメントフィーの業界水準はおおよそ2%」「ファンドの投資期間は通常5%」「キャリードインタレストは20%が一般的」とはよく巷で言われている「一般常識」だが、果たしてこの常識は本当に常識なのだろうか。そんな疑問に答えてくれるレポートをPreqinで発見した。

結論、上記の常識は正しかった。

以下、レポートの内容についてまとめてみたが、Preqinレポートの購読には会員登録が必須なので、ここではレポートのリンクのみと個人的に気になった部分の抜粋を列挙しておくにとどめておきたい。

LP出資の検討時、出資候補先ファンドのGPとの条件交渉時、「業界水準」「一般的な水準」というデータを頭に入れて臨めば、「これのマネフィー水準は高すぎる」「なんでこんなにGPコミットの比率が高いの?」などDDの議論も深まり、きっと役立つこと間違いない内容だと思う。

https://www.preqin.com/insights/research/reports/manager-selection-and-fund-terms-due-diligence-terms

※尚、「マネジメントフィーとは」キャリードインタレストとは」について知りたい方は、ぜひ過去の記事(以下リンクをご参照)を読んでいただければと思います。

<以下、レポート抜粋>
投資期間の平均値は4.5年:
ビンテージが2021年と2022年のファンドに関して言えば、34%のファンドが投資期間を5年とし、21%のファンドが6年超で設定している。


1.マネジメントフィー

業界平均水準は1.90%だが、マネジメントフィーの平均水準はファンドのタイプにより異なる。
<バイアウトファンド>ビンテージ2021年・2022年のファンドでは2.00%-2.24%

<グロースファンド>同じく2.00%-2.24%が大半だが、ビンテージ2014年から2017年のファンドでは2.01%、2018年以降のファンドでは1.85%が通常。

年々マネフィー料率が下がっているのは、おそらく巨大な規模のファンドが増加し、料率が低くても人件費や家賃等の固定費を十分賄えるためだと思われる。

また、ファンド規模が巨大になるにつれ大きなリターンを生み出しずらくなる中、マネフィー料率が多ければさらにリターンを生み出すハードルは高くなる。したがって料率が下がってきているものと推測している。

<ベンチャーキャピタル>5分の1のベンチャーキャピタルではが2.50%超の水準。過去から変遷を辿ると、2007年には2.33%であったマネフィーが2017年には1.97%まで下がる。しかしその後2021年には2.23%まで上昇している。

<ファンドオブファンズ>ビンテージ2021年・2022年のファンドにおいて1.25%の水準。なお、ファンドオブファンズに対する出資は、直接出資するファンドオブファンズと、さらにその先の出資先のファンドの2段階でフィーを徴収される。そのため、大元のファンドオブファンズのGPにではフィー料率は低っている。

<プライベートデット>2009年以降、フィー料率は下り続けている。2009年では1.83%の料率であったのに対し、ビンタージ2022年のファンドの料率は1.45%まで低下している。尚、メザニンファンドのマネフィー水準は通常のデットファンドより高めの2.00%が相場である。

<その他>
不動産ファンドやインフラファンド、天然資源投資ファンドなどの条件も載っているが、ここでは割愛したい。

2.投資期間終了後のマネフィー水準について

一般的に、10年間のファンド存続期間のうち、最初の3−5年が投資期間とされ、この期間で投資残高を積み上げる。

この間はLPのコミット額×マネフィー料率(上記1の水準)が管理報酬としてGPに支払われる。一方で投資期間が終了後、ファンド解散までの残りの期間は新規投資はストップし、既存投資先の回収業務に専念することになる。

そこで、投資期間終了後は新規投資のためのソーシング費用・DD費用等が不要になり、回収関連費用+日々のオペレーション(決算書作成作業、経費支払業務など)にかかる費用が発生することから、マネフィー料率計算方法が変わるのが通常である。その変更の仕方はさまざまで、
・LPコミット額×ディスカウントしたマネフィー料率
・既存投資残高×マネフィー料率
などを始め、さまざまな計算方法がある。

ビンテージ2020年のファンドについては、20%のファンドが、マネジメントフィー水準を50%近く引き下げている、とのこと(つまり投資期間は2%のマネフィーだったが、投資期間終了後は1%まで引き下げている)。

また、アセットクラスによって、投資期間終了後のマネフィー変更メカニズムは異なっている、という点も特筆すべき点としてあげておきたい。レポートを見る限り、「既存投資残高×マネフィー料率(料率は投資期間中と同じ)」というケースがどのファンドでも最も多い。ベンチャーキャピタルにおいては年々料率を下げていくパターンや、「LPコミット額×ディスカウントしたマネフィー料率」というパターン等様々。

中には「フィーをチャージしない」というファンドも、相応に存在する
。タダ働きとなるのはLPにとっては嬉しい反面それはそれで、回収業務を真面目に行うインセンティブを下げてしまい、結果的に回収すべき資金が回収できない事態も想定されるので、ファンドのGPには、インセンティブをもって回収を行なってくれる水準でのフィー設定をしてもらいたいところ。

3.キャリードインタレスト、ハードルレート

この項目は特に面白い点はなく、ほぼ大半のファンドが20%に設定している。ただしファンドオブファンズについてはキャリーを5%に設定しているケースが最も多く、ついで10%のケースが多い。ハードルレートは8%のケースが大半

4.ファーストクローズからファイナルクローズまでの時間、レイトフィー水準、GPコミットの水準

この項目はファンドによって結構ばらつきがあるようだ。

・ファーストクローズからファイナルクローズまでの期間として最も多いのは12ヶ月、ついで13−23ヶ月。その次に多いのは24ヶ月超。中には「期間を定めず」というファンドも少数ながら存在するらしい。
・レイトフィー(ファーストクローズに間に合わずその後の期間にLP出資した投資家が支払うフィーのこと)の水準は、8%未満が最も多く、次いで0%が続き、8%が3番目に多い。この3つの水準でほぼ大半を占めている。
GPコミット比率(ファンドサイズに対する比率)は、1.00%-1.99%が最も多く、次いで2.00%-2.99%が続き、5.00%-5.99%、10.00%-14.99%が続く

が、あくまでこれはPEファンド全般の平均値の話。ベンチャーキャピタルや不動産ファンドにおいてはGPコミット比率は8%程度まで迫るケースもある。また、少し前にバイアウトファンドにてGPコミット比率が上昇傾向にある記事を書いたが、最近はGPコミット比率も増加傾向にあるのかも知れない。


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