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PEセカンダリー市場の動向について

Lower distributions from PE portfolios will also put pressure on GPs, prompting them to tap the secondary market as traditional exit routes remain challenging. (意訳:IPOやM&A等、従来のExitが引き続き難しい市場環境である中、PEのポートフォリオ企業の売却もそれほど進捗していない。そんな中、GPは早期の投資資金回収を迫ってくる投資家たちから、セカンダリー市場でのExitをするようのプレッシャーを受けるだろう)

https://pitchbook.com/news/articles/secondaries-private-equity-valuations-mismatch-H1-2023


投資先のExitの環境がまだまだ改善しない中、Industry Ventures(ゴールドマンサックスアセットマネジメントをはじめとする機関投資家がLPとして参画)のようなセカンダリー投資を行うファンドに、ポートフォリオ先企業を売却し、Exitを進めて流動性を確保しようとするするPE/VCが出て来ており、中には購入価格の80%ディスカウントで売却しているPE/VCも出て来ている。
セカンダリーファンドにとってはこうした売りに出た投資先企業のうち優良な銘柄をできるだけ割安に購入するチャンスである。今後の市場の回復と共に評価額が上昇するタイミングを待ち、売却の機会を探ることになる。

2022年の株式相場下落とIPO・SPAC上場市場、M&A市場の沈静化以降、PE/VCの中にはキャッシュで配当をほしいというLPからのプレッシャーを受けている一方、IPO市場やM&A市場、SPAC市場の冷え込みでなかなかExitも進捗していない、というケースに出くわすこともあるだろう。そんなときに活用されるのがセカンダリー市場である。この市場でPE/VCは一部のポートフォリオ企業を少し割引で、Industry Venturesのような投資家に売却を行う。

このセカンダリー市場の取引量は2021年にピークを迎えた後、2022年はやや減少し、2023年上半期は前年同期比で約25%減の430億ドルまで減少したとのこと(ソース:Jefferies)。

https://pitchbook.com/news/articles/secondaries-private-equity-valuations-mismatch-H1-2023

この取引量が足元減少した要因については、①2023年上半期の株式市況の回復に伴う非上場株式の評価額上昇により、PE/VCに投資を行うLP(主に機関投資家)からの売却のプレッシャーが少しだけ落ち着いたこと、②LP機関投資家は2022年の相場変化に応じ、PE/VC等のハイリスク・ハイリターンアセットから他のアセットへのポートフォリオリバランスを行なっていたが、その動きも一巡したことを要因に、セカンダリー市場に売りに出る非上場株式が減少したため、と考えられる。

一方で、セカンダリー市場では足元少しだけ取引量は減少したとは言え、買い手市場(売りたい投資家よりも買いたい投資家の方が多い)が続いている、というのが以下Pitchbookの記事の見立てである。

https://pitchbook.com/news/articles/secondaries-private-equity-valuations-mismatch-H1-2023

また、多くのLP投資家のポートフォリオリバランスは引き続き継続され、オルタナティブ投資資産を売り手は今後も増え続け、結果、セカンダリー市場における取引量は下半期に勢いを増す、とも予想される。

では、実際に、セカンダリー投資とはどのように行われるのだろか。ここでは大きく分けて2つの方法を記載しておきたい。

①ポートフォリオ企業の株式をそのままセカンダリー投資家に譲渡する
これは簡単にイメージが湧きやすいと思う。たとえばA社に投資を行っているベンチャーキャピタルが、その保有する株式をセカンダリー投資家に譲渡する、というものである。この場合、A社の株主が売り手から買い手に変更が生じるのみである。

②オポチュニティファンド・後継ファンドに対するLP投資
これは少しイメージが湧きづらいかも知れない。まず、既存のPE・VCファンドの投資先を譲渡するための後続ファンドを組成する。セカンダリー市場の投資家はその後続ファンドにLP投資家として出資を行う。無事譲渡が終われば、既存のファンドの投資家はその譲渡代金の分配がなされ、無事Exitができる。

主な事例として、北米の中規模PEファンド、 Calera Capitalを挙げたい。2023年6月に、Calera Capitl Partners5号ファンドの投資先、ImageFirst Healthcare Laundry Specialists向けの、7億5千万米ドルの後続ファンドを組成した。5号ファンドが保有していたImageFirst社の株式はこの新設後続ファンドに譲渡され、5号ファンドのLP投資家たちはその譲渡代金の分配を受けることが可能になる。

なお、この継続ファンドには、Goldman Sachs Asset Management、Blackstone Strategic Partners、TPG GP Solutions、Portfolio Advisors などのセカンダリー市場におけるLP投資家が参加とのこと。

翻って日本では、まだこうしたセカンダリー市場は普及しておらず、PE/VCのExit手段はIPOやM&Aに限定されているものと思われる。2010年代後半以降、事業会社によるVC投資を皮切りに日本のVC・PEプライマリー市場は急拡大を遂げており、次はセカンダリー市場の拡大に期待を寄せてしまう。

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