Opportunity Fundの投資機会が今は少なくなっているかも知れない件について
特にアーリーステージスタートアップへの投資を主とするVCは、その後投資先企業のうち、勝ち組企業がミドル〜レイターステージに差し掛かった頃にダブルダウン(倍賭け)する目的で、オポチュニティファンドまたはセレクトファンドという名称のファンドを組成することがある。代表的なファンドとしてはシリコンバレーで最も有名なアクセラレータで企業が立ち上がって間もない頃にシードマネーを投資しているY Combinatorが2015年に組成した700百万米ドルのオポチュニティファンドだろう。だが、Y Combinatorはこのオポチュニティファンドからは手を引き、シード投資に専念することを発表した。Y CombinatorだけでなくSapphire Venturesのような著名VCも手を引くことを発表している。こうした動きが相次いだ結果、2022年は同種のファンドが合計70件/94億米ドル組成されたにも関わらず、2023年はこれまでこれまで累計6件しか立ち上がっていない、という足元の状況に至っている。
こうした動きの背景にあるのはシンプルにオポチュニティファンドに投資機会がなくなったからだろう。特に2020年・2021年のコロナ・テックバブル期に高いバリュエーションで資金調達をしている投資先がある場合、2022年移行継続する金利上昇と株式市場の冷え込みが続く現状、その企業価値を維持または上回る条件での追加資金調達は非常に難しく、ダウンラウンドの投資機会しかなくなってしまう可能性は非常に高い。
そんな中、Canaanのように引き続きオポチュニティファンド組成を継続するVCもいるようなので、もし現在のタイミングでオポチュニティファンドにLP出資をする場合、以下の点には気をつけたい(書いてしまうと当たり前のことなんですが)。
・投資対象企業の精査:現在の評価額はいくらで、直近のラウンドはいつかで、オポチュニティファンドから拠出しようとしている金額はいくらか。足元IPO・M&A等のExit活動が停滞する中、Exit時期はいつ頃を見込んでいるか。
・ファンド管理手数料等の諸条件:基本的にはオポチュニティファンドは既存投資先に対する追加投資を主としており、理屈上は投資案件のソーシングコストはかからない筈である。こうした実態面を反映したマネジメントフィー水準や、各種ファンド諸条件となっているか
非常に穿った見方をしてしまうと、単に既存投資先の延命措置をするためを目的としてオポチュニティファンドを組成するなんていうインセンティブを持つプレイヤーも存在するかも知れないため、少なくとも上記二つについては留意の上、ファンド出資検討を進めたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?