見出し画像

Jeff Bezosが「社運を懸けた一大プロジェクト」を嫌うわけ

我らがJeff Bezosの素晴らしいコメントを上述の動画の中で見つけた(動画の中では開始1分をすぎたあたりからの部分です)。

"My job as a leader of Amazon is to encourage people to be bold (...) but it's incredibly really hard to get people to take bold bets, and you need to encourage that.
If you're gonna take bold bets, they're gonna be experiments, but experiments are, by their nature, prone to failure. But big success, a few big successes compensate for dozens and dozens of things that didn't work. You know bold bets like AWS, Kindle, Amazon Prime, and our third party seller businesses. All those things are examples of bold bets that DID work and we paid for lots of experiments.
I have made billions of dollars of failures at Amazon.com. Literally, billionsof dollars of failures! You might remember Pets.com, Cosmo or you know they give myself a root canal with no anesthesia very easily. None of those things are really fun, but they don't matter.
What  really matters is that companies don't continue experiments, companies don't embrace failures, and they eventually get into the desperate position.|
The only thing they can do is kind of Hail Mary bets at the very end of the corporate existence. Companies are, you know, making big bets, the company bets! But I don't believe in company bets. That's when you are desperate. That's the last thing you can do."

(以下、意訳)
「Amazonにおけるリーダーとしての私の仕事は、社員に「もっと大胆になれ」とハッパをかけることだ。大胆に行動する、というのは信じられない暗い大変なことだから、私が後押ししてあげる必要があるんだ」
「ただ、大胆に行動し、挑戦した結果というのは、大抵の場合は失敗に終わることが多い。けれども数少ない大きな成功は、数えきれないほど数多くの失敗の埋め合わせをすることができる。大胆な懸けが大きく成功した事例として、AWS、キンドル、Amazonプライム、そして3rdパーティセラー向けビジネスがあるのは皆さんもご存知の通りだろう。これはうまくいった事例だが、その一方でうまく行かなかった多くの試みにも多額の資金を投下した」
「Amazon.comで私は数十億ドルもの失敗をしてきた。文字通り、数十億ドルの失敗だ!Pets.com・Cosmo、皆覚えているだろうか。これらの失敗は、まるで麻酔薬なしに歯の根管治療を行うくらい、非常に痛ましい経験だった。どれも愉快では無い経験だが、それでもいい」
本当に重要なのは、会社が新たな試み・挑戦をしなくなることだ。会社が失敗を許容しなくなり、結果どうにもならない状況に陥ることだ
「そんな状況に陥った場合にできることは、会社の命運をかけた、神頼みの取り組みを行うことだ。だけど私はそんな会社の命運をかけた事業がうまくいくとは信じられない。それは、もうどうにも行かなくなって自暴自棄になった際に出てくるプロジェクトで、そんなことは絶対にやってはいけない

ジェフ・ベゾスがここで言いたいのは「新規事業はうまくいくかどうか、やってみないとわからない。だから、一つか二つの大きなプロジェクトにその成否を欠けるのではなく、多数の試みをしてみて、その中から一つか二つの大きく成功するプロジェクトを育てる必要がある」ということなのではないかと思う。余談だが、今ではAmazonの収益に多大な貢献をしているAWSも、Jeff Bezosはそのビジネスアイデアに当初反対し、「そんなのうまくいくわけがない」と言っていたのは非常に有名な話である。つまり、新規事業とはそのくらい当たるか外れるか、わからないものなのだろう。

一方でこの考えを典型的・伝統的な日系大企業に当てはめようとするどうなるのだろうか。Amazonのように数多くの事業を立ち上げようとすると、一つ一つの事業アイデアは開始時点では当然ながら小粒な規模になり、結果として経営陣からは「そんな小さいことやって意味あんのか」とその取り組み意義を問われ、予算も承認も下りなくなる。社員は社内承認を得るために「絶対に負けられない、社運をかけたプロジェクト」に仕立て上げないと社内が通らないからという理由で、多額の資本・リソースを最初から投下する計画を作り、無事経営からも承認を取得する。だが、多額のリソースを投下したからと言って成功するかどうかは別問題であり、新規事業の成功確率はジェフ・ベゾスが言うようにほんのわずかなのだろう。多額の資金を投下した物の華々しく失敗に終わり、既存事業で引き続き利益を上げていくしか道がなくなる。新規事業による長期的な収益基盤の多角化の芽を摘まれる一方、既存事業だけにも当てにできないので、それでも新規事業をまた立ち上げるしかない。だが、すでに新規事業を派手に失敗している以上、今度こそは本当に負けられない、失敗できない社運をかけた一大プロジェクトにならざるを得ない。そしてまた華々しく散っていく。。。これがワーストケースシナリオだろうか。

少し妄想が進んでしまったが、新規事業は当たるも八卦・当たらぬも八卦の性質を持つとの認識の下、失敗した時のリスクを可能な限り抑えるためにも、一つ・二つの事業に多額のリソースを投下して成功に賭けるよりは、多数の事業に分散してリソースを投下し、そのうち成功した一つ・二つの事業に対し、成長資金を投下しさらに大きく育てる、と言うやり方が最も合理的なのではないか、と考えられる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?