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ベンチャーディールズ(6) VCの正しい選び方 -Venture Deals / Finding the Right VC

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「Finding the right VC」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、またこちらもベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になる、古典的名著のような本なので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

(ジェイソン)前回の続きです。あなたはベンチャーキャピタルから資金を調達することにしました。エキサイティングですね!では、どのVCから資金調達をすべきか?そしてどのようにディールをクローズするか?それが今回のテーマです。

(クリント)どうやって良いVCを見つけるのでしょう?

(ジェイソン)VCの立場から言えば、付き合う彼氏・彼女を決めるようなものです。それは起業家にとっても同じです。

例えば、最初のデートに出かけて「ああ、今日はとても楽しかった。またこの人と遊びたいな。何かインスピレーションを感じたよ。この人から色々と学びたいな」と感じたしましょう。あなたがVCとの初回面談で、こんな感覚を抱いたなら、それがあなたにとってふさわしいVCです。

VCに対するあなたが抱く感情・親近感は非常に重要です。 平均的なVCと起業家の関係は、米国の平均的な婚姻期間よりも長く続きます(注:起業してからエグジットまで大体10年ー12年かかります)。それを心に留めておくと、適切なVCをビジネスパートナーとして選ぶことは会社にとってもあなた個人にとっても非常に重要です。

これらの直感的・感覚的なフィット感に加え、外に出て他の起業家と話をして裏取りをしておくことも非常に重要です。困難に直面した時、相手型のVCがどんな態度になるのか、を調べておくのです。物事がうまく行かなくなった際に手を上げたり、イライラしたり、滅茶苦茶なことを言い出すVCなのでしょうか?それとも、自分の袖をまくり上げて、スタートアップをさらに助けるように動くVCなのでしょうか?こうしたことを第三者に質問し、良いVCを見つけるのです。

VC自身には「他のCEOを紹介してくれませんか」と聞いてみてください。とある起業家は、「なぜ私の会社が、あなたのお金を受け入れなければならないのかを説明して欲しい」と、私に言ってきたことがあります。これに対して私は「これが私の投資先のCEOリストです。誰でもコンタクトしてください。失敗した企業リストはこちらです。おそらくあなたはこちらから先にコンタクトしたいのでしょう」と説明しました。私の投資先のCEOたちは、常に私について好意的なフィードバックを、起業家にしてくれたようです。

ベンチャーキャピタル業界では評判が全てです。調査・裏取りを行うことに躊躇せず、評判が本物であることを確認してください。ウェブサイト上だけではわからない、真の評判を確認してください。

(クリント)そもそも、どうやってVCとの初回ミーティングに漕ぎ着けるのでしょう?

(ジェイソン)初回ミーティングまでたどり着くには入念な準備が必要です。まず第一に、これから会うVCが誰なのか、についてついて調べてください。ほとんどの起業家は自分たちのビジネス戦略については完璧な準備をしていますが、これから会うVCについてほとんど事前準備をしていません。 TechCrunchやCrunchBaseを見て、自分の会社のステージ・領域に投資しているVCをリストアップしましょう。そして友達、起業家コミュニティ、メンターやアドバイザー、時には弁護士に話をしてVCコンタクトリストを取得するなど、何らかの形で接点を見つけましょう。

メールには相手の目に留まるような、パーソナルな部分に少し踏み込んだ内容を入れると良いです。 「_____様、次の概要をご覧ください。以上」ではダメです。 

「こんにちはジェイソン、あなたはドラム演奏好きなミシガン大卒業生だと思います。私はノートルダム大卒なので、ミシガン大は嫌いですがギターを弾いています。一度話してみませんか」とメールにあったとすれば、それで私はそのメールに興味を持ちますし、この起業家は何だか面白そうだ、という印象は抱きます。その上で、ビジネスプランの内容が良いものであれば、おそらく我々はミーティングを行います。

自分自身の言葉で、戦略的に、言葉を特定のベンチャーキャピタリスト向けに個別アレンジしてみて下さい。そうすればミーティングのチャンスは大幅に広がります。

(クリント)では、VCとの面談に辿り着き、いくつかのVCと話す、としましょう。この時、リードインベスターとは誰で、資金調達の過程でどの程度の役割を担うのでしょう?

(ジェイソン)リードインベスターは非常に、非常に重要な役割を担います。以前話したように、シンジケート(資金調達の一団)に、プロフェッショナルかつ高い評判を得ているリードインベスターを配置されれば、取引をスピーディに成立させ、他のベンチャーキャピタリストにもラウンドに参加できるよう影響力を行使することも可能です。というわけでリードインベスターの選定はディール成否に大変重要です。

(クリント)有望そうな投資家を見つけたとしましょう。ここから成約に至るまではどうなりますか?そこの途上で何が起こりますか?

(ジェイソン)正直なところ、私にはわかりません。ディール成立までのプロセスはベンチャーキャピタルによって異なるからです。 

Foundry Groupの場合を話すと、私は面談は複数回やり取りをしたいと思っっており、内応は、前回の面談内容より前進させたと常に思っています。が、少しでも興味がなくなったら終わりです。

Foundry Groupでは、Noという回答については迅速な決定を下しています。私たちはNo回答の際はすぐに伝えます。Yesの回答には少し時間を要しますが、その場合はすぐに他のパートナーを関与させて検討します。もしあなたがVCと長い期間話をしているにも関わらず、他のパートナーとの面談が一度もなされていない場合、それは悪いサインです(うまく行かない可能性が高いです)。

他のVCでは、まったく異なるプロセスを辿る可能性があります。アソシエイトレベルでの検討、パートナーレベルでの検討を経た上で、月曜日のVC定例会議(*) で、パートナー・アソシエイト全員の面前で、これまで一度も着たことのないようなフォーマルな服を着込んだ上で、プレゼンをしなければならないかも知れません。
*) シリコンバレーのVCは原則、月曜日にVC全体の定例ミーティングが開催され、そこで投資検討案件について話し合いがなされます。従って面談は月曜日以外日程がアポがとりやすいです。

ポイントは非常に明確です。VCに「御社では投資意思決定のプロセスはどのようになされるのですか?」と、いくつか質問してみて、彼らの意思決定プロセスを理解してください。もし彼らが説明したプロセスと現状が噛み合っていない場合、何かがうまくいっていないということです。

(クリント)わかりました。では、起業家が投資家とのミーティングを多数こなしている際中だとしましょう。最初は幾分か興奮しながら臨んできたのですが、今は度重なるミーティングと、書面の準備に少し疲れてきてしまいました。ディールを成立させるにはどうすればよいですか?

(ジェイソン)最善の方法は、タームシートを複数取得することです。あなたができる最善のオプションは投資家間での競争を生み出すことです。

誤った競争を生み出さないようにしてください。嘘はつかないでください。ブラッドが以前言ったように、正直で誠実であることを心がけてください。入手してもいないのに、他のVCから別のタームシートを入手した、などと言わないでください。我々はおそらく他のVCなる人物を知っていますし、裏で真偽をチェックできるからです。

投資家間で競争をさせることに、あなたの手を過度に煩わせないでください。 「念のため、あなたにお伝えしたいだけで別にあなたを追い込もうとしているわけではないのですが、私はすでに他のVCと2回ミーティングを行っており、彼らはこのディールに興味を持っているようです。」と伝えるだけで十分です。今起こっていることについて、楽観的に・熱狂的に・エキサイティングに話してください。私からイエスと言わせるためにプッシュするにはそれで十分です。

(クリント)質問はありますか?

(聴講者)複数のタームシートを手に入れた場合、それらを話しているVC全てに共有する必要がありますか?他に話しているVCが誰なのかは伝えるべきですか?それとも彼らが共謀しないよう伝えない方がいいでしょうか?もしVCたちが共謀するつもりだろう、と感じたら、そもそもその時点でそのVCはベストな選択肢ではない、とは思いますが。いずれにせよ一般論として、何かしらお作法・マナーのようなものはあるのでしょうか?

(ジェイソン)他のVCには何も伝えないようにすることがマナーです。 もし私があなたに「他のタームシートを教えてくれませんか?どんなディール条件ですか?」と訊いたら、あなたはこう答えるべきです。「私はその情報を共有したくありません。他のVCは外部に出したくないと言っていたからです。あなた自身のベストな条件をください、私はそれについて議論したいです。ジェイソン、私はあなたとのビジネスに本当に興味があるのです。」

VCが結託することを許してはダメです。

注意点があります。例えば、私がいつも共同投資しているVCが他にあったとしましょう。「ジェイソンとこのVCは、5社に対して共同投資をしているな」と思ったら、あなたは違ったアプローチをとることができます。「ちょと待てよ、ジェイソンとこのVC両方から資金調達できるかも知れないぞ」とあなたは思うかも知れません。その時は、また違ったアプローチが有効かも知れません(=双方に情報を共有しながら進めることが有効かも知れません)。もちろん、関係性何ももないVCには、情報は共有してはいけないですよ。

(聴講者)資金調達の時間軸についてもう少し教えてもらえませんか?大幅に変動することは承知していますが、クロージングに至るまでの時間枠と、タームシートに調印してからどのくらいかかるものなのか、具体的なイメージを把握しておきたいと思います。

(ジェイソン)タームシートに調印してからクローズするまでの期間は、少なくとも1か月から6週間です。このプロセス全体を完了するには、1週間、2週間、3か月、6か月、です。なお、私たちは起業家に対して、「資金調達とビジネスを並行することはできないですよ」と伝えています(それほど資金調達は時間とエネルギーを取られるものなのです)。

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