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2023年は米国VCにとって冬の時代であったことがわかる記事一覧

一般的にベンチャーキャピタルファンドは運用期間が10年に定められており、10年目の期限到来の時点までに保有する投資先の株式を売却し、LP投資家に出資金及びキャピタルゲインの一部を分配する必要がある。

一方で現在のようにIPOまたはM&A市況が悪化し、投資先企業の株式の売却が難しい場合、ベンチャーキャピタルを運用するファンドマネージャーとして取りうる選択肢は大きく以下の通りである。

  • ファンド存続期間を延長する

  • 保有する株式をセカンダリー市場で(ディスカウント価格で)売却する

  • Continuation Fund(後続ファンド)を組成し、後続ファンドに既存投資先の株式を移行し、引き続き運用を継続する

このうち、3点目のContinuation Fundを設立した実例として、シリコンバレーの大手VC・New Enterprise Associated(NEA)やInsight Partnersの継続ファンドが挙げられる。

Insight Partnersは、既存のファンドから32の投資先企業を新たに組成した継続ファンドに移行する一方、既存ファンドのLP投資家に対し13億米ドル(約1800億円)の出資金を返還した。

(以下は関連する過去記事です。LP投資家としての立場から、継続ファンドへの移行を検討する場合に留意すべき点を記載しています)

https://pitchbook.com/news/articles/active-VC-investors-decline

以上は、ファンド存続期間が間近となったファンドの事例だが、立ち上げてまもない時期にも関わらず、新規投資を凍結し従業員を解雇したファンドマネージャーも存在する。ボストンのOpenViewである。

総額24億米ドルを運用し、17年の歴史を持つOpenViewは、570百万米ドルの第7号ファンドを組成した数ヶ月後の2023年12月、従業員の大半を解雇し、全ての新規投資を停止してしまった。ここから先は生存はすれども新規投資は行わない、「ゾンビファンド」に様変わりしてしまったのだ。

OpenViewだけでなく、新規投資を停止したファンドは2023年1月〜9月で増加している。Pitchbookによれば、同期間で投資活動を行なったファンド(2件以上の新規投資を行なったファンド)の数は前年同期対比で38%減少した。

(ゾンビファンドについては下記の記事をご参照ください)

2023年は冬の時代を過ごした米国ベンチャーキャピタル業界だが、2024年は米国経済が堅調である中、IPO市場やM&A市場も復活する可能性がある。2023年が底だったと思えるような年になれば良いと思う。

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