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ベンチャーディール(31)タームシートに出てくるRedemption Rights、 Founders条項とは / Venture Deals - Redemption Rights, Founders

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「Redemption Rights」と「Founders」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。他の講義も順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、またこちらもベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になるシリコンバレーVCのバイブルなので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

タームシート上で見かけることは多いものの、一般的にそれほど議論にならない用語をここでは二つ解説します。Redemption RightsとFoundersです。

1.Redemption Rights

(クリント)Redemption Rights(償還権)とは何ですか?
(ブラッド)スタートアップに投資する投資家が、将来のある時点で、保有する株式を強制的に投資先の会社に償還させることができる権利です。ほとんどのベンチャーキャピタル(以下、VC)ファンドの寿命は限られています。だいたいファンド存続期限は10年で、延長できてもそこから1、2年です。株式の償還を強制することができます。

ファンドの存続期間が近づくにつれて、VCは(早く投資先から回収をしなければという)プレッシャーを感じ始め、投資先からの資金引き揚げを考え始めます。VCファンドが設立4年目または5年目にスタートアップに投資したとしましょう。一方でそのスタートアップがExitに至るまでに7年〜9年かかる場合、そのVCファンドは途中で会社の売却、IPOまたは株式買い戻しのいずれかの手段を通じて強制的なExitを試みるのです。

ただし、実際にはVCがこの強制的な株式買い戻しを実行するのは非常に困難です。例えば投資先のスタートアップが成功している場合、「もう少し株式を保有していればもっと儲かるぞ」という欲望に駆られ、そんな簡単には手放したくなくなるものです。もっとも、ほとんどのVCが、投資先がずっと成長し続けることを望んでいるのが事実です。

逆に、投資先のスタートアップが苦戦している場合を想定してみましょう。この場合、苦戦している会社には株式を買い戻すお金もありません。VCが強制的に償還する権利を保有していたとて、スタートアップにはその原資がなく、実際にVCに得られるものなどないのです。この強制償還権は過去のベンチャー投資の契約の名残で残っているようなものです。

1980年くらいにと、タームシートには、「VCは5年後または 6 年後の償還権を持つ」という条項が見受けられます。この条項に基づき、投資家は償還を要求していたようです。

ただし現在においては、ほとんどの場合、VCからタームシートに償還権の条項を入れるべき、と主張されたとしても、スタートアップは容易に拒絶することができるし、VCもダメならダメでごねずに条項を外します。というのも、実態的にはVCもこの条項があまり意味をなさないということを理解しているからです。

一方で、実際にこの償還権をタームシートに入れたとしても、スタートアップにとってのその代償はそれほど高くつきません。繰り返しになりますが、もしスタートアップがうまくやっているなら、VCは償還権を行使せずに長期的な成長の果実を享受したいからです。もしスタートアップが苦戦している場合、償還権を主張されたとしても支払うものは何もありません。

(クリント)では、実際に償還権を行使したことはありますか?

(ブラッド)私が関与したすべての投資先で、私が償還権を行使したか、または別のVCが行使した、という状況に出くわしたことは一度もありません。
1980年代に私がベンチャー投資を始めた時、償還権の行使について私に聞こえてきたケースのほとんどは、会社は1ドルまたは10ドルなどのごくわずかな資金で、投資家の株式を買い戻していた事例でした(つまり、うまくいっていない投資先のケースでの償還権行使しか見ることはありませんでした)。

ちなみに、もしVCがあなたに「私はあなたの会社に投資した500万ドルを引き揚げたい」と言ってきたら、彼らが500万ドルを支払ったすべての株式と引き換えに、1ドルで交換する条件を躊躇せず提示してみましょう。意外とうまくいくかも知れません。

2.Founders(創業者は自分の事業だけに集中せよ、という条項)

VCがスタートアップに投資する場合、VCは創業者にはそのスタートアップの事業だけに集中してほしいと考えています。そのためタームシートには”Founders"というその企業だけに集中できるようにしたいと考えています。そのため、ターム シートにはこの条項があるのです。

(クリント)VCが起業家に投資したら、VCはもちろん、起業家には100%j行に集中してほしい、と望むでしょう。しかし、もし仮に起業家が成果を出している限り、別に他の事業や副業に手を出したりしても問題ないのではないでしょうか?

(ジェイソン)VCは起業家の副業についてとやかく言わないと思いますが、その事実を把握しておきたいのです。そのためこのFounders条項をタームシートおよび資金調達契約に入れています。

基本的にスタートアップ創業者は非常に社交的で様々なことに興味を持ち手を出してきた人々です。事実、創業者たちが色々なことに目移りして注意散漫になる状況を過去何度も見てきました。

(クリント)どのような種類の副業を行ってもよいと考えますか。 「いや、これはは完全にアウトだ」と言えるのはどのような活動ですか?

(ジェイソン)個人的な意見としては、コミュニティへの参加、慈善活動、または教育に関するあらゆる活動に創業者が関与することは前向きにとらえており、健全な活動だと考えています。また、他社の取締役会に参加することは健全であると考えています。他社の経営に関与し、様々な問題・課題を見て解決することはたくさんの学びがあります。

ただ、創業者が週に 1 日を費やして、別のスタートアップを支援しているのを見るのは好ましくありません。それは不適切でしょう(他人の会社を構う前にまず自分の会社をどうにかしろ、というのが投資家としての心情でしょう)。

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