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ベンチャーディールズ(23) 優先株主による拒否権とは / Venture Deals - Protective Provision

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「Protective Provision」のセッションの後半部分を和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、またこちらもベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になるシリコンバレーVCのバイブルなので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

今回はProtective Provision(拒否権条項)について説明していきます。昔はこの条項の交渉に数日から数週間かかったものでしたが、今はネットや本のおかげで、約5分から10分で済みます。

(クリント)拒否権とは何に対する拒否権ですか?

(ジェイソン)株主の承認を得ない限り、株主は会社が何かすることを拒否できる権利です。通常、だいたい8から12個ほどの「株主にお伺いを立てろ」項目が設定されます。

株主の承認を得ない限り、会社は売却するな・保有ライセンスを放出するな・多額の借金をするな・既存株主の不利になような株式を発行するな、とといった感じです。

取締役会メンバーに就任するベンチャーキャピタリストは、所属するVC・投資先スタートアップ、LP投資家等、複雑な利害関係を有するステークホルダーに対し受託者責任を負っている旨は以前説明しました。実際、私にはベンチャーキャピタリストとしての自分の利益に反対票を投じるような受託者責任を負うことがあるかも知れません。こうした場合、拒否権条項は「ここに我々Foundry Groupファウンドリグループの署名がなければ、これらのことはできないよ」という手立てを講じることで、その相反する利害関係や受託者責任を整理しうる役割も担っているのです。投資家側にとっては。

拒否権については、昔はかなり長い期間をかけて交渉がなされた契約書上の条項でした。私が90年代後半に弁護士業務を行なっていたとき、拒否権条項の交渉のために何日も契約文言の修正を(投資家と起業家の間で)行き来させていました。

その後、拒否権条項に関する訴訟の判例が多く溜まってきたことから、デラウェアの裁判所でどのように拒否権が実際機能するのか、知見が溜まってきました。また、National Venture Capital Associationのような団体が拒否権条項に関する標準的なフォーマットを出し始めました。

ここ最近では、約2年間ほど私はこの条項について交渉をしたことがありません。だいたい本に載っている条文が標準的なものだと思います。起業家としては、その標準文言から株主承認事項が少なくなるよう、投資家と交渉してみてください。逆に、投資家がいきなり標準文言より多くの株主承認事項をつけてきたら、「え?これどういうこと?」と目を凝らしてみてください。

(クリント)もし投資家が多くの拒否権を要求してきた場合、起業家はどう対処すれば良いのでしょう?

(ジェイソン)日常業務が拒否権条項の影響を受けないよう、十分注意してください。拒否権条項が付与されるのは会社にとって重要な意思決定のみとするよう、投資家と交渉してください。ひどい投資家は、「株主の承認なしにシニアレベルの社員を雇用してはいけない」「5,000ドルを超える契約は株主承認なしにしてはいけない」などと言ってくるかもしれません。なんてこった!いちいち箸を上げ下げする度に投資家のあんたたちにお伺いを立てなくちゃならないのか?なんてことにならないように注意してください。

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