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薬物依存の危険・・子ども達に伝えられること

芸能人が薬物関連で捕まるニュースで、呆れている人も多いだろう。
「薬物は絶対ダメ」ということくらい今時小学生でも知っていると思うが、「暴力はダメ」「盗むのはダメ」等とは根深さの次元が違う。

こういった事件を通じて、子ども達に伝えることはあるだろうか。

「まさか!あの人が?」と言うこともあれば、「またアイツかよ!」ということも少なくない。

依存症関連の本もたくさん出ているし、講演等も増えているが、情報収集をしている人は当事者(薬物依存本人や家族、または支援関係者)ばかりで、その他大勢の人は、自分には関係ないことだと思っていることが多い。

薬物に関する教科書的な情報はあふれているので、わりと現場に近い立場からダークサイドな話をしてみたい。

薬物関連は再犯率が高い

薬物での検挙は、他の犯罪に比べて再犯率が高い。
これは、依存症でやめられないという問題もあるが、それだけではない。

この、再犯率という言葉も微妙な言い回しで、必ずしも2回以上、薬物関連の犯罪を犯した人だけをカウントしているとは限らない。同種の犯罪も確かに多いが、覚醒剤で検挙された後に、依存症から抜けきれず、薬を買う金欲しさに別な犯罪に手を染めてしまうこともある。

逆に、薬だけは手を出さないと思っていても、あらゆる犯罪者に近づくと、そのそばに薬物がつきまとっていて、そこが入り口になってしまうこともある。

乱用と依存は、刑罰より治療

薬物の「乱用」というと、めちゃくちゃ使っていることみたいだけど、そうじゃない。1回でも使っちゃだめなものなので、たった1回でも「乱用」なのだ。

そして、複数回に渡って乱用して依存症という状態になると、そこから抜け出すのは、非常に困難なことだ。どんなに重い罰を与えてもあまり効果が無い。最近は少しずつ認知されてきたが、懲役などの刑罰よりも、「治療」が必要だと言われている。

薬物犯罪者の懲役に対しては「一部執行猶予」という制度も始まっている。本来ならもう少し刑務所に入っていなければいけない後半の期間を、早めに社会に戻して、その分、長めの保護観察を付けながら見守ろうということだ。刑務所の中に薬はないが、刑期を伸ばしても依存症が改善するわけではないということだろう。

重い依存症の人に対して重い罰を与えたらどうなるか。
それは、たぶん、死に向かう。実はこれ、薬物だけじゃなくてアルコールだって同じ事。周囲で支援する人は、依存症患者から依存物を完全に取り上げることも、少しだけ与えることも間違いだとされる。

ヤクチュウなんて死んでも良いと思った人は、ちょっと待ってもらいたい。
なぜなら、あなた自身も、あなたの家族や子ども達も、当事者になり得る可能性はあるからだ。

本当にある怖い話

薬物に手を出す人は意思が弱いと思っていないだろうか。そういう場合は多いかもしれないが、それだけじゃない。例えば、半ば騙されて摂取してしまうこともある。若い女の子に多い。「痩せるよ」とか「疲れが取れる」とかって。もっと怖いのは、泥酔させてすすめられ、朦朧としたままやってしまったということもある。

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シャブ漬けにされて、死ぬまで風俗で働かされるという、Vシネママンガみたいな世界も本当にある。

近づかなければ良いというのは、確かにその通りなんだけど、親と喧嘩して家出すると、急にそういうそういう世界に飛び込んでしまうことがある。タチが悪いのは、心に闇を抱えた子ほど、悪い世界では周囲に認められたような気になって、初めは居心地が良かったりする。

スマホ一つあれば、田舎でも簡単に手に入る。ちなみに、小学生がみんな持っているゲーム機だって、その気になれば簡単に薬が買える。そんなことを書いたら、実際に試す子がいるのでは?という批判がありそうだけど、そういうことを保護者が知らずにいることの方がはるかに危険だ。子どものオモチャとはいえ、昔のゲームウォッチとは訳が違う。

だから、だれもがすぐ側にあると言うことを自覚しておくべきだと思う。
子どもにスマホを持たせるときの約束事なんかは多くの家庭でやると思うけど、スマホゲーム依存や出会い系サイトの心配だけでなく、その延長には、薬物危険性もあるということを知っておいてもらいたい。

決して、他人事じゃない。

薬物はやめられる

学校の薬物に関する啓発教室などでも、「やめられなくなる」という事ばかりが強調されているのが、とても気になっている。やめられなくなるから手を出してはダメ、という理屈は、なんとも根拠のつかみ所が無いようにも思える。

確かに、依存性は他の物質と違って格段に高いことは、当事者じゃなくてもよく知っている。それでも、頑張ってやめた人も沢山いるし、最初の一度きりで本当に更生した人もたくさんいる。

「薬物は怖い物だよ」ということじゃないんだ。人生を壊す怖さを知らない子どもを脅しても、脅しにならない。

当たり前だけど、やめられるなら一度くらい試しても大丈夫と言いたいわけではない。一度だって脳に刻まれた快感の記憶は、一生消えないという。
やめられるけど、一生苦しむということも合わせて理解したい。

ダルク等の自助グループはとても重要視されている。全国に組織があるので、薬物依存に関する悩みがある人(本人、家族も)は、ぜひ相談してみるといい。

常習者はなぜまたやってしまうのか

たばこやアルコールと違って、仕事帰りにたまたま覚醒剤が売っているというけではない。(都会では、それもあり得るけど)

だから、また薬物に手を出したというニュースを聞くと、わざわざ悪い人のところに買いに行ってるというのを想像するかもしれない。実はそうじゃないのだ。

薬物の売人というのは、かなりのリストを持っている。なので、本人が一度捕まって、もう絶対にやめようと思っていても、釈放後には、あの手、この手で近寄ってくる。検挙されていないひとならなおさらのこと。

一度やったひとの携帯の番号なんかが漏れてしまえば、すぐに知らない番号からかかってくる。そして、仕事が首になったとか、離婚したとか、いろんな情報をキャッチしては、弱っているタイミングにつけ込んで接近してくる。

子ども達に伝えられることはなにか

「手を出せば、人生がダメになる」ということは、基礎知識として押さえる必要があっても、薬物抑止のメッセージとしてはほとんど意味をなさないように思う。そんなことはみんなわかっていても、手を出してしまっているのだから。

あらゆる手段で手に入るし、自分の意思に反して仕込まれる可能性もある世の中だということは伝えなければいけない。そして、悪い連中の類は類を呼ぶ友人関係には注意を払う必要があるし、寄せ付けないオーラを育てなくてはいけない。

子ども達に、悪そうな連中と仲良くするなとは言わない。仲良くするのと、悪事を共にするのは別問題だ。本当に危ないときは敏感に察知して、逃げることも時には必要だ。

身近にあっても絶対に手を出さないのは、愛情によって育てられる、心身トータルな強さだ。

ペットを飼っただけで、やめる気になったという元常習者もいる。

手を出すきっかけも、やめる続ける理由も、人によって様々。
だから、子どもを薬物から遠ざける特効薬というのはない。

とにかく、そういうことを洗いざらい、子ども達と情報共有するのがいいと思っている。

「まさか、うちの子が・・」ってなる前に。

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