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自分の一代のことだけを考えない定番作り


僕が発行している「d design travel」は、ここ数年、ワークショップ号というのをその土地に暮らす人たちと一緒に別冊的に作っています。

本誌は年2冊(昨年までは年3冊でした・d newsという新しい雑誌を創刊し、こちらは年4冊出すことにした都合で変更)、県単位で一冊作っているので、たまに「うちの市でも作ってほしい」「僕の村でも作ってみたい」と言われることもあり、このワークショップ号はきまりを設けず、みんなでワイワイ、本誌と同じルールで作ることにしています。

ある市のワークショップ号を作っていく過程でのこと。

参加者の一人が自分が推薦した場所が選ばれなかったことに不満を言い出しました。
本誌と同じルールとは、僕が編集長を務め、

1.その土地らしいこと。
2.その土地の大切なメッセージを発信していること。
3.その土地の人がやっていること。
4.デザインの創意工夫があること。
5.価格が適正であること。

の、5つの基準で、「カフェ」「レストラン」「買い物」「観光」「宿泊」「キーマン」の6つの普段使い出来る場所を選び出す。

ひとことで言えば「外から来た人に”自分の土地”を案内すべき場所」を知っておくためのガイドであり、それをみんなでワイワイと発表し合い、編集長である僕が先の編集方針とともに、決めて一冊にまとめるというもの。

住んでいるひとには、東京で話題の・・・・みたいな場所が出来た方が嬉しいでしょう。

しかし、外から来た旅人は、「その土地らしさ」を求めてくる。特に食事する場所などは、全国ごとにでもあるレストランもいいけれど、出来たら情緒あふれる、その土地で収穫された新鮮で季節感のある食材で、しかも、その土地に長く続いている店、長らくその町の風景になっているような食堂に行きたいものです。

そんな場所は住んでいる人にとっては極ふつう過ぎて、人に言われなければ意外とその価値に気がつかないもの。

それをよそ者である僕と探し出す。

発表し合い、再認識して、自分たちの町らしさを応援し、それがなくならないようにすることで、故郷の情緒、風土、景色を自分たちらしく保ち、その感覚を意識して新しいものを作っていく。

そのためにも「その土地らしさ」はとても重要だと思います。


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