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構成と編集の違い【映像制作のコツ・編集】

テレビや映画などの映像作品は、構成と編集という過程を経て、作品の形が出来上がっていきます。
構成や編集は、撮ってきた映像素材をどのように並べ、どのように意味づけしていくかを決めていく作業です。
人間の身体で言えば、骨と筋肉を作るような作業で、いずれも大変重要な作業です。
この構成と編集は、作品の流れを作っていく、という点では似た工程です。
またしばしばこの二つの作業は、同時に進行することがあります。
今回は、構成と編集とはそもそもどのような作業か、この二つの作業を通して何ができるのかをご紹介します。

構成はシーン、編集はカットを決める

ひとことで言えば、「構成」はシーンの流れを決める、「編集」はカットの流れを決める、ということです。
企画意図、すなわち作品全体で伝えたいテーマやメッセージに向かって、それを効果的に伝えられるシーンの流れと意味づけを考えるのが「構成」です。
この構成の流れに従って、一つ一つのシーンの意味がより引き立つように、1カット1カットの映像の尺や順番を決めていくのが「編集」です。
工程の順番で言えば、「企画」→「構成」→「編集」の順で流れていきます。
また方針の優先順位でも、通常「企画(テーマ)」>「構成」>「編集」になります。
構成は、どのようなテーマやメッセージを伝えるか、という企画意図を実現させるためのものでなくてはなりません。
また編集は、構成で決めたシーンの流れをより効果的に具現化することを目指します。

構成は変わるもの

通常のテレビ番組の制作の場合、ロケ(撮影)の前に構成表を作成します。
企画意図に則って、どのようなシーンをどのような意味合いでどの順序で組んでいくか、そうした流れを大雑把に作っておきます。

構成表をどこまで細かく作っておくかは、番組のスタイルによって異なります。
例えば、クイズ番組などは、どんなクイズを出すのかはもちろんのこと、細かな映像のイメージまで固めてからロケに行きます。そうでなければ、現場でどのような映像を撮れば良いのか、迷ってしまいます。

一方で、ある人物を追いかけるドキュメンタリー番組などは、細かく構成を決めても、それ通りに事が運ぶとは限りません。
その場その場で起こったことや、その瞬間の人物の言動や表情を撮ることが最大の目的なわけですから、ロケ前に作る構成はあくまで試案であって、ロケ現場で構成に縛られ過ぎると良い場面を逃してしまうことになります。

いずれにしても、ロケ前に作成する構成表は、多かれ少なかれ最終的には変更されていくことが前提です。
だからと言って、構成表がいい加減で良いというものではありません。
構成表は、ロケ前にどのような映像を撮りたいかをイメージするのに欠かせないものです。
一見、二度手間のようですが、構成表は番組を制作するそれぞれの過程で、常にスタッフ間で方針を確認するための設計図です。
ロケ前にイメージを固めて構成表を書き、状況の変化に応じて書き直しながら制作を進めていくことが必要です。

編集で映像に意味を持たせる

編集は、構成表の流れに従って、集めた映像から必要な部分を抜き出したり切ったりして、順番に並べていく作業です。
編集は、単に映像素材の不要な部分を切って、適正な尺にしていく作業と考えている人がいます。
しかし、それは違います。
編集は、魔法のような大きな力を持っています。
カットを1つ入れ替えるだけで、順番を逆にするだけで、見る人は全く違う意味やメッセージをその映像から読みとることになります。

有名な映像理論に「クレショフ効果」という言葉があります。
ロシアのクレショフという映像作家で理論家が提唱した、映像編集の根本的な理論です。
クレショフは、無表情の男のカットの次に、美味しそうな料理のカット、美しい女性のカット、棺に納められた少女の遺体のカットを、それぞれつないで被験者に男の心情を読み取ってもらいました。
すると、料理のカットをつなぐと男は空腹であると感じ、女性のカットをつなぐと男の欲望を感じ、遺体のカットをつなぐと悲しみを感じる、という結果になりました。
全く同じ男のカットが、異なる心情を表すものとして視聴者の目に映るわけです。

1カットごとの編集は、構成の流れに従って決めていきます。
そのため、編集作業に入る前に、再度構成をその時点で最新のベストのものにして臨むことが大切です。
しかし、番組制作というのは「生き物」です。
常に変化します。
実際に映像をつないでみると、構成表段階では気づかなかった発見があります。
また構成表では成り立っていると思っていた筋書きが、映像になると物足りなく感じることもあります。
そういう場合は、編集室で構成そのものを検討し直すことになります。
構成表はあくまで、頭の中で作ったイメージであり、机上のものです。
最終的なアウトプットは、構成表ではなく映像そのものです。
そのため映像編集の段階で、構成が変更されることもしばしばあります。

構成と編集でできること

構成と編集は、表裏一体です。
シーンとカットをどのようにつなぎ、どのようなメッセージを見る人に伝えるかを考える作業です。
では、構成と編集によって、見る人の心をどのように動かすことができるのでしょうか。
「構成と編集」には、大きく分けて次の三つの力があります。
➀分からせる力 (意味を理解させる)
②驚かせる力  (次に興味を持たせる)
③泣かせる力  (感動させる)

➀分からせる力
映像は時間芸術です。見る人は、出てくるシーンやカットを順番に頭に入れながら、次のシーンやカットを見てストーリーを理解します。
つまり、どの順序でシーンやカットを並べるかで、理解のしやすさは全く変わってくるわけです。
例えば、シーンの冒頭を街のロングで始め、次に建物の外観、室内、人物の順でつなげば、どの街のどの建物の中に誰がいるのかが理解できます。

②驚かせる力
実際の時間の流れとは関係なく、面白いシーンやびっくりする映像などを見せると、視聴者の関心を引くことができます。
漫才などの笑いが思いがけない意表をついた言葉や発想から生まれるように、本来「理解しやすい」映像の流れをあえて崩して興味を引くことで、見る人に次への期待を抱かせることができます。

③泣かせる力
同じ感動のシーンでも、事前に様々な逸話や事実を打ち込んでおくことで、感動が倍増します。
悲しいシーンだけではありません。
勝利の喜びのシーン。
恐怖におののくシーン。
喜怒哀楽や人間の感情を高める効果は、いずれもシーンやカットの順序によって生み出すことができます。

構成と編集のテクニックを身につけると、同じ映像素材が強いメッセージを伝えることができたり、見る人の情感に訴えることができたりします。
今後、構成や編集の考え方についても記事にしていきたいと思います。

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