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【栄村】行橋智彦さん滞在2回目|5年生の温泉調査発表&温泉染

NOA栄村では栄村公民館がホストとなり、服飾デザイナーの行橋智彦さん (旅する服屋さん メイドイン)が滞在します。

2022年11月10日(木)〜20(日)にかけて第2回目の滞在がありました。今回は、栄村立栄小学校5年生との交流授業や、冬の滞在に向けての植物採集などを行いました。

5年生7名の「栄村温泉調査」発表会

栄小学校の5年生は、総合授業として村内の温泉調べを行っています。7名の5年生は保育園の頃から一緒に生活しているという幼馴染で、栄村温泉調査は4年生から行ってきたそうです。

発表を聴くのは、行橋さん夫妻と栄村教育長の下育郎さん、栄村公民館の樋口正幸館長、島崎佳美さん

この研究を始めたきっかけは「栄村を訪れる観光客の方に向けて、温泉パンフレットを作成したい」ということでした。それぞれの温泉を研究した成果をパンフレットとしてまとめ、壁新聞のように並べたものをもとに発表してくれました。

栄村の温泉イメージキャラクター「おんちー」

温泉の特徴やおすすめポイントを紹介するパンフレットには、オリジナルキャラクターも。栄村の温泉をイメージして作った妖精の家族で、子どもたち自身がデザインしたとのこと。キャラ設定もばっちりで、とてもかわいかったです。

おすすめポイントには、「ジビエのしゃぶしゃぶが大人気!」「運がよければ男湯でカモシカが見られる」など、実際に入浴し、施設を取材した小学生ならではのコメントが書かれていました。

今回は村内10カ所の温泉のうち6カ所についてまとめたものを発表

この温泉調査は、今年度の苗場山麓ジオパーク自研究コンクールにて副会長賞を受賞。「情報量がいっぱいですごい! パンフレットを全部そろえたくなりました」と行橋さんも前のめりで発表を聞いていました。

子どもたちは、「パンフレットを引き続きがんばって作りたい」「栄村以外の温泉にもいってみたい」と、今後に向けた思いも元気いっぱいに教えてくれました。

なぜ栄村に「旅する服屋さん」が?

続いては、行橋さんが、なぜ「旅する服屋さん メイドイン」をやっているのかや、温泉と行橋さんとの出逢いなどを、旅の写真とともに紹介。

3.11の被災地でのボランティアの経験を経て、「車にミシンとコンロを積んで、自分が行きたいと思った場所へ行ったり、自分がいいなと思った場所でミシンを踏んだりしている」という行橋さん。

旅の写真に興味津々

「インドで会った遊牧民の人たちが『最近雪が少なくなってきたけど、雪がたくさん降ると羊の餌の草もいっぱい生えるんだ』と教えてくれて、『雪ってすごいなー』と思っていました。栄村も雪がすごいと聞いて冬が楽しみです」(行橋さん)

栄村の植物で温泉染

「今日は栄村の温泉を使って染め物をしたいと思います。みんなで一緒に体験しよう!」と行橋さん。

行橋さんが小滝地区の山や道路沿いで見つけた植物。スギの皮やドングリ、ホオノキなど8種類

学校には行橋さんが滞在中に集めた村内の温泉5つと植物が8種類。その中から3つの温泉、3つの植物を組み合わせて、それぞれどんな色に染まるのかを実験しました。

温泉を鍋に注ぐと「この匂いは冬だ」「雪消し水の匂いだ」と子どもたち

ある生徒は地元の北野天満温泉が選ばれたことで「やる気スイッチ」がオン! とても誇らしげな表情で北野天満温泉の担当になってくれました。

栄小学校5年生が選んだ温泉染の組み合わせはこちら!

  • 屋敷温泉 秀清館 × キハダ

  • 北野天満温泉 学問の湯 × ユキツバキ

  • 小赤沢温泉 楽養館 × クリ

大きな鍋に温泉を沸かし、植物を煮ること数分。沸騰すると温泉の色に変化が見られました。そこに木綿と絹の布を入れて数十分、ぐつぐつぐつ……。

小赤沢温泉でクリを茹でる。「理科の実験みたい」と子どもたち
手前からキハダ、ユキツバキ、クリ

もっともわかりやすく色が変わったのは、行橋さんが道の駅で見つけて購入したというキハダ。クリは、イガの色に似た渋い茶色に。蒸したクリの匂いも漂ってきました。一番色がわかりにくかったのはユキツバキでしたが、「ハーブティーみたいな匂いがするね」と、香りでも楽しみました。

奥がキハダ、手前がユキツバキ

自分が担当した植物が思ったような色になるか、ならないかで、一喜一憂する様子も見られたり、また、「こっちの方が色が出てる!」と、色がはっきり出ている鍋にたくさんの子が集まる様子も見られました(笑)。素直でいいですね。

色の違いを見てみよう

子どもたちは色の変化にも反応していました。

「これはちょっと山吹色に見えるね」
「ツバキはピンク色っぽくなるんだー」

行橋さんがサンプルとして持ってきてくれたいろいろな色。村内の植物を使って滞在中に染めたもの

ぐつぐつと煮ている間に、行橋さんが他の実験を用意してくれました。ひとつは柿渋で染めておいた布を栄村の温泉に入れたらどうなるか。もうひとつは、今煮ている布を大分県の別府温泉に浸けたらどうなるか……。

別府温泉で実験中

別府温泉は、温泉染文化を広めようと行橋さんが活動拠点にしている場所。江戸時代から続く製法で作られた天然素材の湯の花を溶かし、それぞれの布をしっかりすすいでみると、なんと、色合いに変化が生まれました。

淡いピンク色だったユキツバキの布は青みがかった色に(手前)、渋い茶色だったクリは淡い墨色に(右奥)

「染色では植物、水、金属、この3つが大事。湯の花には鉄とアルミニウムがいっぱい入ってるんだよ」と行橋さん。子どもたちは「すごい! 九州の温泉とコラボだ」と興奮気味でした。

もうひとつの実験である柿渋の布も、小赤沢温泉の中で数分間すすいでいると、色の変化が見られました。

柿渋で染めた布を小赤沢温泉の中でもみもみすると色が濃くなった

染め上げた布は全部で6枚。温泉に含まれる成分によって色の染まり方が変わること、1枚ずつよく見てみると、さまざまな色が表現できていることなどを、みんなで確認しました。

授業の最後に行橋さんは「雪がたくさん降る時期にまた来るよ。そこで100色ぐらいの色をつくって展示するから、みんなも観にきてね」と挨拶。

担任の岡田怜先生曰く「普段はたくさんの人とふれあう機会が少ないので、今日のワークショップはすごくよかったです。子どもたちもとても楽しそう。温泉調査の続きもやる気が出たみたいです」と話してくれました。

あとひと月もすれば、数メートルの雪に覆われる栄村。北信濃の山の恵みを使った温泉染で、どんな色が生まれるのでしょうか。

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