見出し画像

そこにある実存の「未知のモノ」

SFは実存感が重要である。

SF作品を多く手がけているクリストファー・ノーラン監督はCGを極力使わず、セットで撮影することにこだわっている。

そのため、作品に携わるスタッフは『インターステラー』(14)に登場する五次元空間にある子ども部屋とか、『インセプション』(10)に登場する部屋ごとグルグル回るホテルのフロアとかなどの訳わからんセットを実際に作らなければならない。

その苦労は察するに余りあるが、やはりCGで作られた映像と比べると格段に面白く見えるのである。

「未来のモノ」や「未知のモノ」は実際には存在していないからこそ、現実味が必要になってくる。

そのためかノーラン作品に出てくる小道具は大体紙とか鉄とか物理的なもので出来ていて、SF作品にありがちな、空中に浮かぶディスプレイなどは出てこない。

『TENET』(20)に出てきたアルゴリズム装置まで鉄っぽいモノで作っていたのはさすがに物理的過ぎでは?とも思ったが、逆に実存感があるからこそ、そこにあるという恐ろしさがある。

実存感でいうとジョーダン・ピール監督の『NOPE』(22)ではUFOが登場するのだが、このUFOがものすごく実存感があって心底恐ろしい。

音響、照明の演出が凄まじく、まさにそこにいる「未知のモノ」を目の当たりにしてしまった感覚に襲われる。材質も内部は布っぽい素材で表現されていて非常に生々しい。

ジョーダン・ピール監督もまた、「未知のモノ」の物理的な実存感にこだわっているように感じる。

実存感と一番遠いように感じるSFだが、実存感あってこそ「未知のモノ」表現として正しいのかもしれない。

文・イラスト:長野美里

最後まで読んでいただきありがとうございます。反応やご意見いただけるととても嬉しいです!