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【講座レポート(愛知公演)】在宅医療と食べる

特別講師:いしぐろ在宅診療所 副院長 石黒 剛先生

今回の名古屋公演(8/22)は「在宅医療と食べる」をテーマに開講しました。

医療現場は病院の外へ

現在、超高齢化社会の真っ只中である日本は、65歳以上の割合が2040年に最多になると考えられています。社会保障の逼迫や病床数の削減など様々な問題がある中で、政府は病院から在宅へ医療の場をシフトしていく方針で政策を進めています。

医療従事者の活躍の場は病院の外でも求められており、正しい医療を日常でも実現していく必要があります。

エビデンスとエピソード

在宅医療現場で行われている「医療を日常に落とし込む」際には、病院で求められる“エビデンス”だけではなく“エピソード”にも目を向ける必要があります。つまり、その人の人生や価値観などを考慮した医療やケアが求められます。

「医学的な正解やエビデンスは、必ずしもその場の最適解ではない」ということです。

講義の中では、石黒先生自身のおじいさまを看取った時のお話をしていただきました。

誤嚥を繰り返しているが冷たい水が飲みたい、トロミは嫌い、飲めてないけど「うまい」という。

誤嚥して「うまい」は間違いか?

おそらく先生自身が病院医だったら、「誤嚥しているから経口摂取はできない、栄養は経鼻胃管で、または点滴で」と言うかもしれません。でも、在宅医療の現場にいるとそれは患者さんにとっての幸せではないのかもしれないとも考えます。

口に含んだ冷たいお水は全て肺に入ってしまったかもしれないが、それでもおじいちゃんは「うまい」と言っている。これは間違った行為なのでしょうか。

同じように、例えば歯科医学的に正しい、教科書どおりの治療は在宅医療の現場では不適切な場合が多々あります。今回の講義は、在宅歯科診療を行なっている先生方の経験や考えとも合致するものだと思います。

エビデンスとエピソードをバランスよく

さて、医学的なエビデンスとそれぞれの現場でのエピソードは、多様な状況を考慮して選択することが求められます。エビデンスが全てではありませんし、ケアに正解がない場合も多々あります。とはいえ、知らなければ話にならない基本的な知識やエビデンスを軽視することもできません。

今回は、「エビデンスは全てではない、でもそれを知っているからこそ、患者さんや現場に合わせたケアが出来るようになるんだよ」ということを教えていただく講座になりました。

オーラルフレイルを防ごう!

プレフレイルに含まれるオーラルフレイルを防ぐことで食欲を改善し、食事を促すことができます。

オーラルフレイルになると負の循環に陥ってしまい「要介護」へと進行してしまいます。プレフレイルの段階でオーラルフレイルを意識した介入を行うことでフレイルへの進行を遅らせることができます。

プレフレイルへの介入としては、もちろんオーラルフレイルへの介入も重要ですが、運動をしっかりすることや社会に参加することも大切です。

運動や社会との関わりを持つことで、食事がしっかりと食べれるようになったり、身だしなみとして口腔内の治療を積極的に行ったりと心理面にも良い影響が出てきます。

石黒先生:在宅医療現場では正解がわからないシーンに何度も遭遇します。本当に患者さんにとって良いこと、患者さん本人がして欲しいことは本人にしかわかりません。わからないから私だったらどうだろうかと類推する、それでもその答えは本人の答えと100%同じなんてありえません。むしろ「全然違うものなんだと思うこと」がより良いケアを行う上で大切なのかもしれません。答えのない問いに対し、その答えの輪郭をみんなで見つけていく。それこそが多職種連携、チーム医療なんじゃないかなと思います。

参加者の声

・在宅医療に興味を持っていましたが、石黒先生の話を聞き訪問看護をしてみたいと思いました。在宅での口腔ケアについて引き続き学んでいきたいです。
・口腔内だけに着目するのではなく、社会性や運動など様々な視点を持ってアプローチしたいなと感じました。悩みながらでも、本人や家族に寄り添っていきたいです。

BOCプロバイダー講座では、医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士、栄養士などの専門家がそれぞれの専門領域と口腔(ケア)とを掛け合わせた講義を行っています。

Facebookグループ内で全て配信しておりますので、引き続き学びを継続していただけたら幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

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