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日本人F1ドライバー誕生の可能性について

F1観戦が私の趣味の一つだと話すと、同じドライバーばかり勝ってつまらないと言われることがあります。確かに勝敗にだけ注目すると、そう感じるかもしれないですが、勝敗以外にも様々な楽しみがあると思っています。そこで、F1観戦を楽しむうえでの参考情報も書いてみたいと思っています。

最初は、F1の予選の楽しみ方でも書こうと思っていたのですが、各メディアでアルファタウリ・ホンダのフランツ・トスト代表の発言が取り上げられ、にわかに日本人ドライバー誕生に関する報道が出てきたので、そのことについて書いてみたいと思います。

日本人ドライバーの存在の大きさ

やはり、誰でもとっつきやすくなるという点で、日本人ドライバーの存在は重要です。日本人初のフルタイムF1ドライバーの中嶋悟にはじまり、2014年までドライバーを務めた小林可夢偉まで、日本人ドライバーがいることが、日本でのF1人気を支えてきた側面は大きいと思います。しかし、今のF1には日本人ドライバーは不在です。昨年、山本尚貴が日本グランプリでトロロッソ・ホンダのフリー走行を担当しましたが、それが唯一の話題でした。

ここのところ難しいとされてきた、日本人F1ドライバーの誕生ですが、ついに誕生する可能性が出てきました。その期待を最も背負っているのは、F1の一つ下のカテゴリーのF2で今年から参戦をしている角田裕毅(カーリン所属)です。最近F1へデビューしたドライバーには、F2出身のドライバーが多く、ここでの活躍が重要となります。では、なぜF1へのステップアップの可能性が高まったのか、その理由と条件についてまとめてみたいと思います。

F1へ参戦が叶うかもしれない3つの理由

角田選手が日本人F1ドライバーになれるかもしれない大きな理由は、3つあります。

①強力なバックアップ

角田には、F1ステップアップのための強力なバックアップがあります。F1で2チームを運営する飲料メーカーのレッドブルには、将来のF1レーサーを発掘するため、若手ドライバーを育成するためのジュニア・プログラムがありますが、その一員に選ばれています。さらに、日本の自動車メーカーで唯一、エンジンを供給しているホンダの育成ドライバーでもあります。

これまでの日本人F1ドライバーも、少なからずホンダなどの支援を受けて、ステップアップをしてきました。レッドブルとホンダという2つの組織からのバックアップはとても心強いといえるでしょう。

②レッドブルの育成選手の供給不足

これまで、レッドブルのジュニア・プログラムからはたくさんのF1ドライバーが誕生してきました。現在のレッドブル・ホンダのエースドライバーであるマックス・フェルスタッペン、現在フェラーリ所属・4度のチャンピオンであるセバスチャン・ベッテル、ルノーに在籍しているダニエル・リカルドなどが挙げられます。ただ、現在はレッドブルの支配下にある育成ドライバーは潤沢ではありません。

レッドブルの関係するチームにはレッドブル・ホンダの2シートと、アルファタウリ・ホンダの2シートがあります。レッドブル・ホンダの2シートのうち、エースのマックス・フェルスタッペンのシートは固いですが、残りの1シートに座っているアレクサンダー・アルボンは実力を発揮できておらず、来年のシートは危うい状況にあります。

アルファタウリ・ホンダの方のシートは、ひとつには昨年の前半までレッドブル・ホンダに所属して、結果を出せずにアルファタウリのシートに戻ったピエール・ガスリー。二つ目のシートには、以前レッドブルチームにも所属して一度はチームを離れ、昨年に再びレッドブル軍団に戻ってきたダニール・クビアトが座っていますが、安泰とは言えません。

角田の他にもジュニアチームに候補の選手はいましたが、レッドブルは若いうちに育成ドライバーを見極める傾向が強いので、現在はいずれもシートを失い、ジュニアプログラム内に有望な選手がいなくなっています。レッドブル系のシート4枠を埋める、十分な選手がいない状況なのです。現実的には2番手チームのアルファタウリ・ホンダの2枠目のシートが狙い目といえるでしょう。

③若さ

そして、現在のF1はデビューする年齢が若いという特徴があります。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンのデビューは17歳でした。(現在は18歳以上の規定あり。)最近のドライバーのデビュー年齢をみると、今年の唯一のルーキーであるニコラス・ラティフィの年齢はやや上で現在25歳、2019年デビューで活躍中のランド・ノリスは19歳でのデビューでした。

少なくとも20歳代前半ではトップカテゴリーのF1にデビューすることが定石となっています。角田は現在20歳、若さという基準でも十分に満たしています。

F2の参戦の日本人ドライバーには角田のほかに、松下信治、佐藤万璃音の2名がいます。この中で最も年齢の若い角田が、若さという点でも一枚上手と言えます。

条件を達成できるか

このように有利な3条件は整っているのですが、F1にステップアップするには既定の条件をクリアする必要があります。18歳以上であることに加え、様々な自動車レースで加算されるスーパーライセンスポイントというポイントを、過去3年の合計で40点獲得しなくてはいけません。角田が現在保有するポイントは2018年のF4チャンピオンの12点と2019年のF3で得た8点のみ。このポイントを今年中に達成するには、F2で年間ランキング4位以上に入る必要があります。

ただ、難しいと思われた基準も達成できそうな状況にあります。F2の第5戦のレース2ではついに初優勝を手にしたほか、その後の第6戦はレース1、レース2でともに4位。年間ランキングでも目標の4位につけています。F2ではタイヤをドラスティックに使わずに、いかに終盤までタイヤを長持ちされるかという、頭を使ったドライビングが要求されます。初参戦ながらこのレースの特徴に適応して、実力を発揮しつつあるので、年間4位以内といわず、さらに上位を狙える可能性もあります。

期待が高まるあまり、文章が少し長くなってしまいましたが、角田には今年・来年とチャンスの年が続きそうです。私は、久しぶりの日本人F1ドライバー誕生を期待しています。




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