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暗闇のマリア #最終回 誠の明日

#最終回 誠の明日

 
 「俺は生き残ってやる」
 そう言うと、誠は歌舞伎町のアーチの下で黙って手を合わせ、人混みの中に消えた。
 ピンク色の看板を胸と背中にかけたサンドウィッチマンが、手に持ったチラシを差し出したが、彼はそれを手にとることはなかった。

 今夜もきらびやかなネオンサインが様々な店の名をアピールしている。日本中にフランチャイズを展開するコンビニ、個人経営のような居酒屋、消費者金融、雀荘、カラオケ…。それぞれのネオンは自分の店が一番目立つように輝いているが、そこに優劣はなく、個性を発揮しながらも、その全てが集まってこの街の景色を作っている。

 行き交う人はそれぞれの欲望を胸にそれぞれの目的地に向かって歩いていた。その誰一人として誠に目をやる者はなかった。