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暗闇のマリア(習作『暗闇の丑松』より)#011 チンポの数より人生はある

#011 チンポの数だけ人生はある

♪湯男の俺が言っちゃいけない事
言っちゃうけど 
この仕事ってぶっちゃけ快楽
客が整えば傑作 

「あっちいな今日も、当たり前かサウナだからな。」
「甚ちゃん、ロウリュウおねがい」
 4番サウナから声が聞こえる。
「はいはーい、少々おまちを!」
 ここプラベートサウナ松の湯の裏方を任せてもらってまる5年、俺の名は甚太。仕事はできるが独り言がちょっと多い松の湯のアイドル。最近のサウナブームで大忙しさ。なんか知らないが、お金持ちのみなさんがリフレッシュにサウナってのがブームらしく、ありがたいことです。
 個室サウナの通用口から入って、熱々の石の上に冷たい水をザーッとかけりゃ、じゅーっと蒸気が出て、体感温度アップ。そしてまたお客さんはじっと我慢って寸法。
「甚ちゃん、こっちもお願い」
「はいよ」
 いつの間にお客さん、俺の名前が甚太って覚えるんだろうな。全く、ま、ありがたいことでございます。水風呂はお客さんのお好み次第だが、基本は17度。血行促進で免疫力アップときたもんだ。チェックチェック。サーモスタットで水風呂の温度は管理してくれてるんだが、みんなきれい好きだから水が汚えとうるっせえんだよな。その割には汗流してから入ってくれないんだから意味がわからないっての。
「いやーあちいな、ちくしょー」
「甚ちゃん、ちょっと今日のサウナ温いんじゃないかい?温度計壊れてんじゃねえの?」
 まったく個室サウナの客はうるさくって仕方ねえ。サウナの温度も個人の好みだから仕方ないけど、暑いとか温いとかリクエストがうるさいんだよね。個室サウナで部屋が小さいから仕方ないんだよ。まったく…
「はーい、温度上げましたよー、干からびないでくださいね。」

 よし、一通りロウリュウのタイミングも終わったから、飲み物のチェックをしてと、あれ?通用口が開いてるなあ。ちゃんと締めといたのに、おかしいなあ。ここから俺の仕事場が見えると高級感が損なわれるって店長がうるっせえんだよな。いかんいかん。見つからなくって良かった良かった。
 と、俺は表に回ってそれぞれの冷蔵庫にドリンクが3本ずつ入ってるか5つの部屋をチェックして回る。ここの個室サウナも1回2時間2万5千円と、まあお高いお店だから、飲み物だけでなくクレンジングに洗顔料、化粧⽔、ボディクリーム ヘアブラシ。バスタオル、フェイスタオルと全完備。しかし意外にお金持ちってのはケチが多くて、タダと分かったらメチャクチャ使うんだよなあ。
 ま、でもこの仕事してると、お客さんのチンポをいっぱい見るんだけど、世の中にはいろんなチンポあるね。長いのやら、びっくりするくらい短いのやら、先っぽも三角みたいなやつとか、全部がさつまいもみたいなやつとか。おれの一物と比べると、金持ちだからって立派なものぶら下げてるわけじゃないから面白いよね。チンポの数だけ人生はある、いやマンコもあるんだからその倍かwwww。
 ん?さっき締めたはずなのにまた通用門空いてる。おかしいな、鍵壊れたか?なんだこりゃ?包丁か?血だらけじゃないか?誰だ?ここへ来たのか?
 なんだ、こりゃ足跡か?5番サウナからさっきまでまったくなかった、真っ赤な足跡がついてる。
「四郎さん、四郎さん、何かあったんですか?」
 5番サウナの通用口から中の様子を伺って声をかけるが返事がない。でっっけー金玉の四郎さん。
「四郎さん、倒れちゃってませんか?入りますよ」

 そこには血だらけの四郎さんが倒れていた。
うわうわうわうわうわ、なんだこりゃ。大変だ。四郎さんが刺された!

第4幕 了