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二つ目の話題「歳をとるって何?」

男子高校生2人が今日も私の頭の中でお喋りをしていたので、文字に起こしてみました✍️
ふとした時に不安になる〝歳をとる〟が話題のようです💭
もし良ければ最後まで御付き合い下さい😌


「あ~、腰いてぇ……」
「ヨウちゃん弱っちくない?」
「多分元気な方が少数派だと思うよ」
俺らの通う高校は毎年恒例で、年末に大掃除をする。
身長高いから強そう、なんて言われてひたすら大きい物を運搬した一日だった。
「湿布買いに行く?」
「いや、多分寝たら治る」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだよ思うよ」
「弱っちぃのに回復力は高いね」
「……まぁ、まだ若いから」
「若いから、なのか」
シロは顎に手を当てて「う~ん」と唸り出した。
「何か気になる?」
「うん」
「言えそう?」
「……あのさ、歳を取るって何だと思う?」
「歳を取る、か。」
俺は今日もシロの質問の答えを真剣に考える。
特に今日のは俺の話から出たものだろうから、いつもより気合が入る。
「寝ても疲れが取れなくなったら『歳を取ったなぁ』って言いそう」
「体力の衰えが歳を取るってことなのかな」
「うーん…まぁそれもあるんじゃ無い?」
「他の意味もあるの?」
「うん。あると思う」
「それってもしかして『大人になる』だったりする?」
「え、うん。そうだね」
シロは立ち止まって夕焼けを見上げた。
あぁまた、シロの目から輝きが消えている。
こんな綺麗な夕焼けに照らされているはずなのに、どうして。
「ヨウちゃんはさ、大人になりたい?」
「…どうだろう。お金を稼げるようにはなりたいかな」
「俺思うんだけど。大人になったら、こうやって綺麗な夕焼けを立ち止まって見上げることも無くなっちゃうんじゃないかなって…」
「そっか。」
きっとシロの中にある感情は〝寂しい〟なんだと思う。
だからそれが少しでも無くなるなら。
それなら、俺は。
「シロ」
「うん?」
「シロがいいなら、毎週金曜日にお散歩をする約束をしようよ」
「お散歩…?」
「うん。その日は絶対残業頼まれても断って、恋人のデートも断る」
「毎週金曜日に?」
「そう。で、ここで夕焼けを見ようよ」
「それって…ヨウちゃんはいいの?」
「あたりまえじゃん。俺はシロと『夕焼けが綺麗だね』って笑ってる大人になりたい」
「何それ」
クスッと笑ったシロの目はちゃんと輝いていた。
良かった…まぁ、ほんとに俺のしたいこと伝えただけなんだけど。
俺はずっとシロの隣に居たい。
「ねぇヨウちゃん」
「うん?」
「その日は歩きながらおにぎりを食べようね」
「おにぎり?いいよ」
「毎週違う具が入ってるやつ買おう?という訳で今日はツナマヨおにぎりを食べます」
「え、今食べたいだけ?もしかして」
「あ、バレた?一生懸命考えてたらお腹すいちゃったんだもん」
「まぁいいけどさ。お母さんの作るご飯もしっかり食べなよ?」
「それは別腹だよ。だって今日シチューって言ってた」
「シロの一番好きなご飯じゃん」
「うん。『今日大掃除なんだ』って伝えたら作ってくれることになった」
「そっか。良かったね」
「…ほんとに。優しい人なんだよね」
シロにとって〝今の〟お母さんはとても優しい人。
でもきっと、それが今の限界なんだと思う。
シロに中には、いつまでも〝前の〟が居るから。
「なぁシロ」
「ん?なぁに、ヨウちゃん」
「…俺は明太子でもいい?」
「うっわ、無し」
「なんで」
「何でも。今日はツナマヨの日って決めたじゃん」
「シロはね?俺はまだ決めてないよ。それに腰痛には明太子の方が良いんだって」
「何その話、初めて聞いたよ?腰痛に効くおにぎりの具って発表されてたの?」
「うん。俺の中では」
「ヨウちゃんの中のランキングって世界共通だと思ってる?間違いなく俺には通用しません」
シロの中に誰が居ようとも、俺は俺のままシロを笑顔にさせる。
あの人たちがシロから奪っていったものはきっと取り返せない。
俺にはどうしようもない。
「とにかくあのコンビニでツナマヨ買ってね?先に言ったのは俺だから」
「…まぁ、うん?」
「その顔!!絶対明太子買う顔だ!!」
「さぁどうかな」
『どうしようもない』で立ち止まるわけにはいかない。
俺はこの楽しい時間をまだ手放したくはない。
出来ることなら、この先ずっと守っていたい。
「腰痛にやられてるヨウちゃんが、俺より早くコンビニに着いたら折れてあげるよ」
「え、ちょっと。そもそもシロに勝てないのに」
「はいはい、言い訳は駄目だよーだ。よーい?スタート!!!」
駆け出したシロの背中を俺は必死に追う。
出会った頃からずっと遠くにあるような、そんな華奢な背中を目掛けて走る。
追いつけないことに切なくなるけど、足は止めない。
いつかきっと、シロの先を行って足元を照らしてやるんだ。

~続く~
⇒三つ目の話題「夢って何?」

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