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アフターコロナの地価動向 ~令和3年 地価公示から考える~

新型コロナウイルスの影響を本格的な関心事として捉えるようになったのは、確か2020年の2月ごろでしょうか。

その後、季節性のインフルエンザと変わらないという楽観論は吹き飛び、この原稿を執筆している2021年4月に至っては「第4波の到来」が本格化しつつあることなど昨年においては微塵も想像することができませんでした。

このような中、2021年3月23日にコロナ禍初となる地価公示が公表されました。

不動産のプロからは、今回の地価公示について、納得できるものと受け止められる向きがある一方、価格は全然下がっている気がしないので違和感がある、という意見も聞こえてきます。

地価公示というと不動産鑑定をやっている当人にとっても「表向きは」重視しなければならない「規範性のある」ものですが、個別の不動産鑑定では、あまり意識しないという鑑定士も多いのが実情です。

しかしながら、今回のようなブラックスワンが飛び交う状況においては、やはり、頼りがいのあるものに見えてしまいます笑

このように掴みどころのない状況に置いて公表された令和3年の地価公示は、「変化のベクトル」を示す題材を与えてくれる貴重な資料となっております。

では、今回公表されたデータを元に特徴的な傾向を指摘していきましょう。

 全般的な傾向

不動産マーケットにおいては、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災を経験後、異次元の金融緩和策、インバウンド促進策などを受け全般的に底堅い状況が続いてきました。

一昨年あたりから「そろそろ上昇もここまでじゃないか?」という声も聞かれ始めましたが、どこ吹く風という感じで昨年までは、力強く推移してきました。

ところが、今回の地価公示ではコロナショックの影響を受け状況が一変しました。

地価公示 その1

軒並み下落というのが全国的な状況ですが、あまり変化していないかな?という感じですね。

特に、三大都市圏の商業地については、これまでの上昇の反動とも言える急落が目立っています。

 オリンピック需要やインバウンド活性化を見越した期待バブル的な過分な要素がはげ落ちたというのが実態ではないでしょうか。

 一方で、今回の急落を一過性のものと見るか、今後のトレンドとなるかについては、ワクチン接種の状況などのコロナ禍の収束状況次第であり視界不良と言えます。

次のデータからビビッドに変化していきます。

インバウンド需要のはげ落ち

今回の地価公示データで特徴的なものとして、従来、インバウンド需要に支えられ力強い地価上昇を続けてきた商業地につき地価下落に転じた地点が多く出現しました。

地価公示 その2

これらの地域は、従来、外国人観光客をターゲットにおいたホテル開発が過熱し、これらの観光客向けの免税店などが多く出店したエリアと重なり、今回のコロナ禍により大きな打撃を受けたというのが顕著となっています。

底堅い別荘地

一方で、インバウンド需要が減退したものの、国内需要や今後の成長期待に下支えされたリゾート地・別荘地もあるなど一括りにできません。

例えば、軽井沢や熱海などの首都圏からアクセスの良い別荘地は、インバウンドの減退の影響より国内のリモート・移住需要がここにきて顕在化しむしろ前年より地価上昇ペースを強める地域も散見されます。

地価公示 その3

熱海や軽井沢のセカンドハウス需要は富裕層に見られる動きと考えられますが、一般の住宅地においても戸建回帰現象が起こるなど、今回のコロナ禍が「住む」「働く」ということからみた不動産に対する価値観の変化のきっかけになったのは間違いありません。

物流は依然として強い

コロナ前からEコマースの台頭により物流施設用地に対する需要は底堅く推移していましたが、今回のコロナで更に強さが顕著となったと言えるのが物流不動産でしょう。

地価公示 その4

日本では海外と比較してEコマースの成長余地がまだまだ残されていると考えられます。物流専門REITが数多く出現しており以前と比較して各段に流動性が向上しているセクターであり、今後要注目のセクターとなっています。

オフィスマーケットはどうなのか?

最近、お客様から「オフィスの価格・賃料はどうなるか?」ということをよく聞かれます。オフィスについては「テレワークが進んでいる状況であり、解約や減床というニュースをよく見るが、本当のところどうなのか?」という疑問をお持ちの方がプロの中にも多いです。

商業施設やホテルマーケットとの比較では底堅いという意見もあり、現状ではあまり変化がないという感覚を持っていらっしゃる方が多いように感じます。

不動産価格は、収益性(賃料)により左右されることは論を待たないでしょう。
今回のコロナ禍で一つ言えることは、ホテルや商業施設など売上の影響を直接的に受けやすいアセットの賃料が下落し、不動産価格の下落に直結したということも指摘できるでしょう。

一方で、オフィスについては、契約期間が比較的長期であることにより賃料の改定サイクルも同様になだらかであるということが指摘でき、コロナ禍の影響が完全に織り込まれていないと考えることもできます。


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