見出し画像

【ながおし!②】「体験から学ぶ」教育を 中井 健太 さん・澤 紗奈 さん

長浜で推したい!長浜でこの活動を推している!そんな人々を紹介する「ながおし!」。
第2回目は、長浜で「体験から学ぶ」民間教育を進める中井健太さんと澤紗奈さんとお話を伺いました。

フレッシュなお二人

「体験から学ぶ」体験教室やフリースクールを運営している二人は、大学卒業後、県外から長浜へ移住。長浜に新しい風を持ち込んできてくれました。
※「合同会社andstep」…詳しくは下記リンクを参照。

そんな二人が長浜に来てくれたきっかけとは。
二人とも、出会ったときは教育学部の大学生。
教育実習や、民間のNPO団体の活動を体験する中で、「学校の現場にすぐに出るよりかは、社会経験を積んで、自分を向上させてから教育現場に出たい」という意見が一致し、一緒になにかやろう!と意気投合したと話します。

最初はオンラインで社会貢献コミュニティを立ち上げて活動していたけれど、「やっぱり教育が好きだし、携わりたい」という思いをずっと抱いていた二人。
そんな中、澤さんが長浜で民間放課後児童クラブ運営などに取り組む人と出会い、長浜に学校を作ることで意気投合。

澤さんは、その人との話を経た直後、中井さんに「長浜に行こう」と電話をしたそう

学校を作るためには、その土地にいなくては。
都会的な面と自然豊かな面を備えた長浜に魅力を感じ、「これもご縁」という思いで卒業後すぐ、二人で移住しました。
長浜の人のあたたかさや、都会的な面と自然豊かな面を備えた土地に「こんなに教育に適した土地はない!」と、徐々にのめり込んでいったと笑顔で話す二人。
中井さんは「この活動をしていて、川ひとつに大人がこんなに集まり、夢中になれることがすごいと感じる」と話します。
地域の人々に、守っていく、後世に続けていくという熱量があることに感動したそう。

米川での授業。子どもたちも楽しそう

二人が生まれ育った場所は、中井さんは大阪、澤さんは東京。
緑からは少し遠い場所で、ビルやマンションに囲まれて育ちました。
長浜に移住して、都会にはない、人と人との強いつながりに魅了されていきます。

教師になりたいと思ったきっかけを聞くと、中井さんは、中学2年生のときの担任の先生が大好きで、その背中を追いかけて教職を志したそう。
澤さんは合唱が大好きで、ウィーンへ行ったり、賞をもらったりするなど、色んな体験をする中で、音楽にずっと関われるように、音楽の先生をめざすことに。
そこからは京都の大学に進学し、教師をめざしたとのこと。
「私自身も周りの大人に豊かな経験をさせてもらったから、『先生』になるならそういう存在になりたいなと思っています。」と笑顔で話します。

色んな経験を経た澤さんだからこそ、活かせる視点がたくさんあるのだろう

長浜で、若い人にやりたいことをやってもらうにはどうすればよいか。
そして、子どもたちにやりたいことを見つける・そこへ進むマインドを育ててもらうにはどうすればよいか。
市でも模索していることを、二人にも聞いてみました。
中井さんは、「そのマインドが育つきっかけは、出会いではないでしょうか。」と真剣な目を見せます。
「自分を助けてくれる大人や、かっこいいと思えるような大人の出会いがあって、その背中を追おうとする気持ちの流れがあるのでは。」と話します。

担任の先生の背中を追いかけて教師をめざした中井さんだからこそ、説得力がある

澤さんは、「私がやりたいことをやろうと思ったのは、自分のコンプレックスからです」と話します。
「自分の思いを上手に人に伝えることができないけれど、歌だといくらでも表現できます」と微笑みます。
自分を変えてくれた大人や、豊かな経験をさせてくれた大人たちと出会った二人が、その志を抱え、子どもたちをやりたいことへ走らせていくのかもしれません。

そんな二人の子どもたちと向き合う姿勢とは。
それは、「子どもたちには、一つのことを突き詰めていくのではなく、色んなことを体験してほしい」ということだと話します。
「体験教室やフリースクールが『いるだけの場所』にならないように、参加するしないは自由だけど、いろんな体験ができる時間は提供する準備はしています。」と中井さんは話します。
その時間は、プログラミングや動画制作、実験や自然にふれる体験、秘密基地を段ボールでつくる、まちの人やお友達と関わるなど、大人でもわくわくするようなラインナップ。

iPadを使った授業の様子

また、もう一つ、その中で大事にしていること。
「子どもたちが自分たちで考えることについては、時間をかなりとります。」と中井さんは話します。
教室では、子どもたちに、「今日は何をやりたいか」ということから、「作りたいものを作るにはどうしたらいいか」まで、自分たちで考えてもらう流れになっているとのこと。
そこで、上級生の子たちが率先して、下級生の子たちに呼びかけて、自分たちで考えて進めるそう。
その中で、困っている子にも声をかけるなど、気配りをする様子も見られるんだとか。

自分で考えているときの、子どもたちの表情は真剣だ

「自分たちは、子どもたちが困ったときに一緒に調べる人なんです。」と澤さんは言います。
子どもたちは今の学校で、教えてもらって、結果を享受することが当たり前になっている。
大人も、子どもたちにやり方を教えたくなってしまう。
けれど、「自分で考えるときに、助けてくれる大人がいることが大事だと思います。」と澤さんは言います。

子どもたちに優しい眼差しが注がれているのがわかる

「子どもたちが最初に失敗すると、そのことを聞きに来てくれるから、大人が教えたかったことをしっかり教えることができるんです。」
「できないならできないなりに考えてやる、思考するという機会を作っていければいいんです。それが楽しいと思えればずっと成長し続けることができます」と澤さん。
子どもたちからも「学校では全部教えてもらえるし、結果が分かるけど、(このステップラボでは)結果が分からないし、自分たちで考えてできるのが嬉しい」との声があるそう。
その声が、自分たちもすごく嬉しいと中井さんと澤さんは笑います。

子どもたちの話をするときは本当に楽しそうなお二人

今後の目標や展開はありますか、と聞くと、「最終的には、オルタナティブスクールにしていきたいです」との答え。

※オルタナティブスクールとは……
「はっきりした定義はありませんが、現在の公教育(公立学校や私立学校)とは異なる、独自の教育理念・方針により運営されている学校の総称で、フリースクールなども含まれます。」

NHK WEB特集,2023年2月14日,「新たな選択肢の学校“オルタナティブスクール”とは」

すべての子どもたちに学校だけじゃない選択肢を作りたいとの思いから、「それを街中に色んな教室を作れたらいいなと考えています」と夢は広がります。
また、澤さんは「変わり続ける時代に合わせて、未来を見た教育を考えてくれる学者さんと、昔から日本のアイデンティティを作るという、重要な役割をもつ学校現場には、距離があります。その距離を埋めることができるのは、思考や探求の学びを深める民間教育ではないかと考えています」と真剣に語ります。
長浜に教育の新しい選択肢ができる日は、そう遠くないのかもしれません。

楽しそうに、だけど真剣に教育の未来を考えていると感じる

この1年、長浜で活動してきてどうでしたか、と聞くと、「地域というキーワードが、思ったよりも自分たちにフィットしたと思っています」と中井さん。
「自分たちですべてを完結させようとしていたけれど、活動する中で市役所の方に相談したり、地域の方に入ってもらったりすることを考えるようになりました。」と、「長浜らしさ」を体感してくれたそう。

自分が子どもだったら、この先生たちと一緒にどんな成長をしたんだろう。
うらやましく思うと同時に、長浜の子どもたちに新しい選択肢を運んできてくれたことに、とてもうれしく感じました。
彼らと子どもたちが進む未来は、笑い声が響いていることでしょう。

                             (さかい)