心の虫
昔々、あるところにチセツがいた。
チセツは、大人なのに子供っぽい男だった。
体は大人、心は子供。
子供のくせに、うぬぼれが強く、上から目線だった。
チセツは思う。
……俺はすごい。みんな大したことない。それなのに、なぜ、認められないんだ。
みんなチセツが子供だとわかっていた。
……この人は、いい歳して、全然、成長しないな〜
チセツは、自分を知らなかった。
チセツは、占い師に観てもらった。
占い師は、神様のような人だった。
……あなたの心に虫がいる。その虫は、おびえる。傲慢になる。怠ける。その虫をよく感じなさい。
チセツは、心を感じた。
怖がるとき、傲慢になるとき、逆ギレしそうになるとき、心にいる虫の響きを感じた。
……なんだろう、この虫。
毎日、毎日、虫を感じた。
虫は、居心地が悪くなり、チセツから出ていった。
チセツから子供っぽさが消えた。
チセツは占い師に言う。
……あなたのおかげで虫がどこかへ行きました。あの虫は、なんだったんですか?
占い師は、微笑んで言った。
……宿題です。それを片付けないと、次へ行けないので。
チセツは「え? なんのこと?」と不思議に思った。
占い師は、姿を消して、その声だけがいつまでもチセツの耳に響いた。
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