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【出産レポ③ 39w2d】いよいよ出産

内診の結果、子宮口3センチで入院が決定。PCRを受ける必要があり、陣痛の中綿棒を鼻につっこまれるのは地味にダメージでした。

受付から出産まで通しで対応してくれた助産師さん(仮称Aさん)がとても頼りになる方で、全て終わったあと分娩台からその方の名前を聞いて「一生忘れません」と伝えたぐらいありがたい存在でした。手際よく様々手配しつつも、私が安心するようにたまに冗談を飛ばしてくれます。

病室では、1時間くらい痛みに耐えていました。しばらくして「しおこんぶさん、ごめんなさい。今合計3人もお産の方がいて、麻酔の先生がなかなか来られないんですよ」と報告を受けました。
その頃は、そうなの…?と思いつつ「とはいえもうすぐ来てくれるでしょ、私ラッキー人間だし」と望みを持っていました。

そのうち何人かが部屋にバタバタ入ってきて、
「しおこんぶさん、ストレッチャーに移動できます?」と言われましたが、
その頃は痛すぎて起き上がるとか無理な状態になっていました。波が来るたびにベッドの手すりを引っ張ってやり過ごしており、ちょうど「手すり掴み」に忙しかったため、一回目は無言で拒否。

Aさん「しおこんぶさん、お産がかなり進んでますから分娩室に移動します。起き上がれないなら、転がれます?」
私(速攻で)「無理です、、、!」
いやいや、動くとか無理ですって、という痛み。
Aさん「無理じゃない!」
先生「しおこんぶさん、こっちに転がってください!」
私「ころがって落ちないですか?」(もはや自分の状況は把握できておらず。笑)
Aさん&先生「大丈夫大丈夫!」

仕方ない‥手すりを手放して思い切ってゴロンと転がったのですが、それが、命綱を泣く泣く手放すみたいな感覚で。「これ離したら私どうなっちゃうかわかんないですけど?」と半ば投げやりな気持ちで、えいやで転がり、無事分娩室に運ばれました。
どうやら麻酔師の先生を待つ間に私のお産が予想以上のスピードで進んでしまったよう。

運ばれている間、不穏な会話が聞こえてきました。
助産師のAさんが先生に、「無理なら無理って先生からしおこんぶさんに説明してもらわないと!どうします?」と迫っている。

無理とは‥?

嫌な予感がしていたが、現実を受け入れられなかった私は
「麻酔、麻酔お願いします、、!」と懇願。
Aさんが周りのスタッフに、
「もう一度(麻酔科の)〇〇先生に電話してみて!」と指示してくれました。

しかし、願い虚しく、麻酔科の先生が来られないこと、麻酔を打つ際の体勢によって赤ちゃんが圧迫され危険が及ぶ可能性があるので麻酔なしで産んでもらう旨を伝えられ、麻酔という希望の光だけを頼りに耐えていただけに、絶望感がすごかった‥。

この時既に子宮口が全開。麻酔を打つより早く産まれますよと言われ、分娩代が安くなるから良いかと覚悟を決めたところで、Aさんの携帯に朗報が。

Aさん「今麻酔科の○○先生が繋がって来てくれるということだけど、先生どうしますか?」
先生「‥」
私(先生が発言する前に)「お願いします、、!!」
天が私に味方してくれ、先生にきてもらうことに。

この頃、痛みはどんどん強くなり、お腹の中を岩みたいな硬く大きいものが骨盤をメキメキ壊しながらお尻に向かっておりてくる感じがしていました。これはいよいよファイナルステージに入ったなという感覚で、経験したことのない痛みと恐怖感。
それまでは一応平静を保つ余裕がありましたが、この辺りから声を出さないと耐えられないように。なんか色々ひどい状態だけどもう羞恥心とかどうでもええわと思い、「お尻押さえてくださいー!」とか叫んでいました。

麻酔科の先生が到着し、麻酔を入れる際に痛くても身体を動かさない必要があるが大丈夫かと聞かれ、大丈夫かはよくわからないけど、全力で頑張る旨伝えました。
麻酔を投与される時、陣痛がきたので、
「痛いですー!」と叫ぶと、Aさんが身体をグッと抑えてくれました。針の痛みは陣痛に比べれば全くもって痛くなく、しばらくしたらふーっと痛みが消えてゆき、ぼやけていた視界がクリアに。その時見えた助産師Aさんや先生が自分を覗き込んでいる光景が印象的。
平常心を取り戻した私は、もうこの世界の悪さも全て許せますってくらい仏な気分でした。

ほぼ同じタイミングで産まれそうな人が隣の分娩室にいるらしく、Aさんが「私しおこんぶさんのお尻押さえてるので、先生あっち行ってください。まずこっち終わらしてから、そっちやるので」と忙しく人員采配する様子を、感心して眺めている余裕がありました。

麻酔の直後は痛みと共に全ての下半身の感覚がなくなり、落ち着いてしまった感覚がありましたが、少ししたら陣痛と同じペースでお腹の赤ちゃんが動いている波が感じられるように。

8-9回ほどいきんだとき、「いい感じですよ〜、頭と髪の毛見えてます」と。
次のもう一息で、お股の間にゴロっとした硬いものを感じ、スタッフ3-4人が
「おぉー!」と安堵の表情で乗り出して来て、
次の瞬間、Aさんが、赤ちゃんを抱きかかえ取り上げたのです。
自分の足の間から、ドラマでよく見るような小さな体がにょきっと姿を現しました。はじめから人形でも仕込んであったんじゃないのと思うくらい、丸い頭と黒い髪、手足のついた完璧な赤ちゃんで「本当に赤ちゃんだ!」と純粋に驚きの感情でした。お股越しに目撃したこの光景は忘れられません。

ひとりの人間がこの世界に産まれるということに、言葉では言い表せない感動を覚えました。本当に言葉ではなんとも言い表せない神秘!
自然と安堵の気持ちで涙が出てきました。
赤ちゃんは小さな身体を震わせながら泣いていて、「もうおしっこもうんちもしたよ〜」と、笑顔の看護師さんの腕の中に抱かれていました。

Aさんが記念撮影のため横に連れて来てくれ、小さく温かい存在が本当にいとおしく、その後の処置のことはあまり覚えていません。

早速撮影してくれた写真を携帯で見たら、ガッツ石松顔で驚いたものの、何はともあれとても尊く、愛おしく、深夜対応してくれた病院の皆さんへの感謝の気持ちと、早く夫や家族に伝えたいという気持ちでいっぱいでした。

そんなはじめての私のお産。


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