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俳句講師のひとり言:相手を決めつけず、「座」としてのクラスへ

俳句講座(クラス)の生徒さんのほとんどは「俳句をやってみたい」「勉強したい」という目的や興味をもって参加してくださっています。前向きで熱心な方が多いです。

でも、たまに「特に俳句に興味はないけど、暇なので時間つぶしに」といった方もいらっしゃいます。それもアリと思います。

入口はどうであれ、その後に面白がってくれれば結果オーライ!

その「たまに」の中で、以前「どうしよう……」となったことがありました。

ある方(●さん)が入ってこられたのですが、●さんは俳句に興味がなく、ともすれば俳句や教える側への配慮がないような発言をされることがしばしば。

最初「失礼だ!」と内心、私は怒っていました。

俳句に興味がないのは構わないけど、相手や俳句をバカにするような発言を繰り返すのはヒトとしていかがなものか。

暇つぶしに来ているのはいいとしても、もう少しその態度はなんとかならないのかなあ。

以来、そのクラスの日が近づくとユウウツで。ため息ばかり。

しかし、生徒とはいえ受講料をいただいているので、「嫌ならやめていいですよ!」と切り捨てるのも大人の態度としてどうかだし(私が相手と同じ土俵に立ってもなんだかな~だし)。

トラブルになってもなんだしなあ。

インストラクター経験のある人たちに相談後、「ちょっと様子を見て、それから考えよう」とこの件はひとまず保留。

講座の代表にも事情を説明して、いざというときには対処法を話し合う……という流れを事前につくりました。

「ま、その前にこんなに色々言っているのだから受講料の切れ目に辞めるかもしれないなあ」そう思っていたのです。

しかし……

受講料の切れる月、スタッフさんから「●さんが更新手続きと次クール受講料の支払いをされた」という連絡が。

えええ~!?? 
何その、やる気満々ぽい態度??
あんなに「俳句をやりたくて来てるわけではない」とか、いろいろ言ってたのに。
何なの、真の目的は? ウチの講座には何もめぼしいモンはないぞ!←驚きすぎて、もはや思考がおかしくなってる(-_-;)

実はこの日、奇しくも別のクラスにいた生徒Aさんがご自身の都合により当クラスへ移籍。

Aさんは私のクラスのベテランさんで、俳句の実作や句会に慣れていること、何よりも明るく積極的な方なので●さんともすぐに打ち解け、結果的にその日から私と●さんの架け橋になってくれたのです。

そこで、チャンス! とばかりに,その日、私は俳句とクラスに対する●さんの気持ちを聞いてみました。

すると、相変わらず俳句に積極的に興味があるわけではないけれど、つくることの楽しさ、人と一緒にいる楽しさを感じ始めて続けたい、という心境になったそう。

さらに、●さんは長く続けたお仕事を辞めたばかりで、これからの人生と自分を探している途中とのことが判明。

なるほどね!

そして、話しているうちにわかったのが、●さんに「俳句や人をバカにしている」つもりはなく「率直に物を言う性格」ゆえにそうなっているのだということ。

だからって何でも言っていいというわけではないけれど、それがわかればこちらにも和やかな雰囲気を保ちつつ可能な対処法はある!

また、●さんは「根は真面目で頑張り屋。負けず嫌いなタイプ」ということもわかったので、その日のクラス、●さんには「良い点を指摘しつつ、ほかの人よりも改善点をより率直に指摘する」方法に切り替えました。

初心者さんは結構、はじめのうちは自信がなくて「あまり強いことを言わないで」という方も多いです。作品を人前で発表すること、鑑賞を言うことにもドキドキしている方もいます。

でも、最初から物おじせず発言し作品をいっぱいつくって見せてくれる●さんには、より「やる気」を喚起するベクトルへ切り替えたほうがよい。

そのためには「(俳人同士なら当たり前の指摘でも)講座だと言われるとキツイ」言葉も時々織り交ぜてざっくばらんに伝えよう。

そして、クラス終了後。
帰り際の●さんはこれまでに見せてくれたことのなかった笑顔で「さようなら~♪ 来月もよろしくお願いします!」と挨拶してくれました。

もちろん今回の件では、社交的なAさんがクラスの雰囲気と方向性をズン! 変えてくれた力が大きいと思います。
「Aさん、移籍してくれてありがとう!」という思いでいっぱいです。

結果として、このクラスは現在も少人数ながら続行中。縁の不思議なめぐりあわせを感じます。

つくづく俳句講座(クラス)は「俳句の魅力を伝える」だけでなく「人と人を繋げる「座」」の場だと痛感します。そのためには講師であるこちらも「この人はいろいろ言うから生徒としてダメ!」と様子を見ずに安易に決めつけてはいけない、との戒めになった経験でした。

最後に余談。

この日の帰り際、受付でスタッフさんと話していたら、まったく別の講座の体験に来ていた方がきました。

「いかがでしたか?」とスタッフさんが聞いたら、体験者さんは「受けない。ダメだ、あの講師は。授業も簡単すぎる!」と強い口調で言ったのです。

ひええええ~(‘◇’)ゞ
思わず背筋が凍り付きました。

どんな授業内容だったの???
てか、先生、クラス中にどんな態度とってたの????

私のクラスの体験者さんも同じことを感じたことがあったのだろうか……あったら謝りたい。

自分に「慣れ」による慢心はないか。
他者に対して狭い心になっていないか。

改めて、講師として気をつけていこうと思った瞬間でした。


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