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好きな本のはなし(俳句、短歌、ほか)

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句集、歌集をはじめとした「好きな本」の感想ページです。
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#本紹介

まどやかな祝福:阪西敦子句集『金魚』

金魚揺れべつの金魚の現れし 華やかに鰭を動かし、水を遊ぶように泳ぐ金魚。 複数あるいは品…

あんこ
11日前
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【俳句掲載】『名句水先案内』(角川俳句コレクション)

角川『俳句』連載の「名句水先案内」(2020年4月号~2022年3月号)。 今回、角川俳句コレクシ…

あんこ
1か月前
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明日のある日常:折島光江句集『助手席の犬』

「できるだけ普段着の言葉で、普段着の景色を季語とともに俳句として詠みたい」 自分の心と身…

あんこ
2か月前
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【俳句掲載】『全国・俳枕の旅62選』

俳人・広渡敬雄さんが『全国・俳枕の旅62選』を上梓なさいました(出版社:東京四季出版)。 …

あんこ
2か月前
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軽やかに、カラフルに:箱森裕美句集『鳥と刺繍』

雷鳥や刺繍の花のその軽さ 句集タイトルのイメージにもっとも近い作品を挙げるとすれば、上記…

あんこ
4か月前
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独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』

死角の無い句集である。 どこから読んでも、どの句を読んでも面白い。 溜息が出るほどだ。 全…

あんこ
6か月前
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月を仰ぐことを忘れない人:杉山久子句集『栞』

句会でも思うけど、俳句作品がまとまって掲載された句集を読むたびに思うことがある。 「どうして同じ17音なのに、作家によって言葉や型の表情が全然違うのだろう」 「作者が違うのだから当たり前だ」と言われればその通りなのだけれども、それでもたった17音しかなくて、季語を使って、ある程度同じ条件の縛りの中で詠んでいるのに。 実際に完成した作品を目にすると、似ているようで全然違う17音がそこここに屹立しており、句集を読むたびに作家の世界観は読者である私の感覚を揺らしながらいつも遠く

客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

中くらゐの町の大きな秋祭 街と町。同じ「まち」でもこの二つは違うと思う。 大雑把にいうと…

あんこ
10か月前
24

異界への招待状:俳句誌『LOTUS』第51号

クラクラするほどの痛いほどの今夏の太陽。 八月になって、通りは急にふっと音の存在を忘れた…

あんこ
10か月前
22

俳句のみが発揮しうる魅力:現代俳句文庫88『金子敦句集』

いつもウキウキ、ルンルン♫で俳句を作れるなんてことは先ずなくて、大体句会や締切など「必要…

あんこ
11か月前
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感謝の証:渡部有紀子句集『山羊の乳』

あれは、所属する俳句結社「炎環」の記念大会。 当日、お祝いの為に出席してくださった大勢の…

あんこ
11か月前
20

第一句集『揮発』、紹介いただきました

先般、簡易版として限定作成した柏柳明子・第一句集『揮発』。 早速、ご購入のお申込みをいた…

あんこ
1年前
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【俳句】玉響(たまゆら)の思い:馬場龍吉句集『ナイアガラ』

ポップで明るい表紙。 まるで懐かしいレコード・ジャケットのよう。 そういえば、レコードを買…

あんこ
1年前
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明日へ弾む言葉たち:三輪初子句集『檸檬のかたち』

表題句 切る前の檸檬のかたち愛しめり 何となく切るのが惜しくなる檸檬の形状と感触。 切った後の金色の果汁と香りを想像しながら、今しばらく「まったき姿」を五感で楽しんで。生き生きとした感覚が快い一句だ。 本句集は下記の句から始まる。 こはれさうな自由隠せし春ショール 「自由」。美しいけど不確実なもの。 でも、この作家になんと相応しい言葉か。 次の句は、小さな旅立ち。ささやかな日常。 折紙の舟出てのひら春愁ふ そして、再び「自由」。 雪解川渡り了へれば自由人 心細そうな