公務員と副業 -最近の事例から-

「公務員はどこまで副業をしていいのか?」という問題については、これまで様々な議論がなされるとともに、果敢にも無届副業に挑んだ結果、処分を受けた多くの公務員の屍を礎として、あまたもの先例が生み出されてきた。

さて、賃貸不動産の経営については、人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について(昭和31年8月23日職職―599、人事院事務総長発)によって明確な基準が定められ、任命権者の承認を要するものとそうでないものとが区別されている。

しかし、近年広がった副業の形態である同人活動やYouTuber活動については、その利益が多額なものとはなりづらいものであるからか、公務員が行うそれについての処分事例が最近まで見当たらなかった。

ところが今月に入り、立て続けにこれらの活動を巡る懲戒処分が公表されることとなった。

【概要】

被処分者(陸上自衛隊3等陸曹、処分当時30代)は、平成29年6月から同31年3月にかけて、YouTubeにゲーム実況動画を投稿し、これに対する広告収入として約108万円を得、停職4日の懲戒処分を受けた。

【概要】

被処分者(高知県教諭、処分当時40代)は、平成25年から令和2年10月にかけて、同人誌52作品を執筆し、これを販売することにより、1100万円超を売り上げ、約175万円の利益を得、戒告の懲戒処分を受けた。


検索した限りにおいて同様の懲戒処分事例は見当たらなかったため、おそらく初の事例になるだろう。

それぞれ懲戒権者が異なるため、処分の程度について同一に論じることは適切ではない上に、投稿又は発表した作品中、信用失墜行為等、他の処分事由に当たるものが含まれていたか、また、得た利益について、必要に応じて確定申告を行っていたか等、処分の程度を決するにあたって様々な要因が考えられるため、一概に比較することはできないが、個人的には注目すべき事例だと考える。


なお、前述の形態における公務員の副業について、以下の解釈及び処分事例があるので、最後に紹介する。

人事院「義務違反防⽌ハンドブック -服務規律の保持のために-」

Q. 単発的に講演を依頼され講演料を得た場合や、研究成果等を雑誌等に単発的に発表し報酬を得た場合などは、第 104 条の兼業に該当しますか。
A. 第 104 条における「事業に従事し、若しくは事務を⾏う」場合とは、「国家公務員としての職務以外の事業⼜は事務に、継続的⼜は定期的に従事する場合」を⾔いますので、上記のような単発的に従事する場合は、第 104 条の兼業に該当しません。(後略) 

【概要】

被処分者A(警視正、処分当時50代)は、平成27年6月以降、警察官昇任試験に関する解説を執筆し、出版社から執筆料として13回にわたり計約880万円を受領し、その際、国家公務員倫理法に基づく贈与等報告書を提出せず、減給10分の1(3月)の懲戒処分を受けた。

被処分者B(警視正、処分当時50代)は、平成30年3月以降、警察官昇任試験に関する解説を執筆し、出版社から執筆料として3回にわたり計約120万円を受領し、その際、国家公務員倫理法に基づく贈与等報告書を提出せず、戒告の懲戒処分を受けた。

被処分者C(熊本県警視、処分当時50代)は、平成25年1月から同28年3月にかけて、警察官昇任試験に関する解説を執筆し、出版社から執筆料として約200万円を受領し、戒告の懲戒処分を受けた。

注:A、Bについては特定地方警務官(各都道府県警察において巡査から昇任した警察官。国家公務員)であるため懲戒権者は警察庁長官となり、Cについては地方公務員にあたるため、懲戒権者は熊本県警察本部長になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?