【読書記録】野良猫を尊敬した日 著:穂村弘

穂村弘さんのエッセイはとても好きだ.他の著作のエッセイ集も読んでいるのでそれも読書記録に残したいとは思っている.

幾らか,他の作家さんのエッセイを読んだことがあるが自分の中で穂村弘に勝てるエッセイストは居ない(穂村弘さんはエッセイ一筋ではないが…).何が穂村弘のエッセイ足らしめているんだろう.

一つ思うのは,世界の相対化がうまいのだろう.穂村さんの「現実入門 ほんとにみんなこんなことを」の著作に一際言えることではあると思うが,自分の世界と一般の人が感じている世界の差分を砂浜からひと粒の砂金を見つけるが如くの精密さで取り出すことができているのだろう.

自分からしてみれば読めば読むほど「たしかに!!」みたいな共感の嵐だ.ネット回線を申し込むのは自分も面倒くさいし,陸上選手がアクセサリーを付けているのを見て走る時に邪魔にならないのかな,と自分も思っている.

穂村さんは観察眼がいいのかもしれない.だから,エッセイに出てくる人々がとても魅力的に映る.自分も他者と面白い会話だったりしているかもしれないのに穂村さんみたいに書き起こせない.自分の感情や考えを文字に起こして自分で把握することはできない.そこは穂村さん,羨ましいなと思う.穂村さんは何気ない日常の機敏を丁寧に掬い取ってくれる.丁寧に掬い取ってくれるからそのエッセイがとても愛おしい.

加えて.読んでいてすごいなと思うことは「自分は駄目だ」みたいなことを書いているのにそこに変な卑屈さは感じないこと.なんというか,独立性が垣間見れるのだ.他者は他者,自分は自分という.そこに,自分はこれでいいのかな?みたいな少しふにゃふにゃした感じがするのだ.そこがとっても魅力的に映ってしまう.

私は何故か穂村さんの全てが羨ましいのだ.


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