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梅雨の摩耶山が楽しみで仕方ない

5月30日(土)晴れ。下山部下見を兼ねて、Y川君、Kっこ、Hm、Kと掬星台〜地蔵谷〜トゥエンティクロス〜森林植物園〜再度公園を歩く。今日も粘菌を探す。掬星台の外階段の下にマンジュウホコリ、掬星台の端っこの切り株にサビムラサキホコリ。

粘菌。名前に菌とつくけど菌ではなく単細胞生物であり、自由に動き回ることができ、キノコやカビのように胞子を飛ばすボーダレスっぷり。動物のようで動物でない(べんべん)。野に咲く花のように可憐なわけではなく、南方熊楠をして「混沌たる痰(たん)」と言わしめた、どちらかというと気持ちの悪い系。しかしその痰が子実体に変形するとキュートな姿に変身するギャップ。故横山ノックならきっと「魅惑の変身」と感嘆したに違いない。(フォンテーヌ)

もう一つの魅力は、どこにでもいるのに「気づかないと会えない」ということ。粘菌は「人は目を見開いているようで実は何も見ていない」ということに気づかせてくれる。この時期、山に来るほとんどの人が「新緑いいね〜」とか言ってるけど、新緑という植物はない。水道筋で「下町いいね〜」というのとなんら変わらない。下町なんていう街はない。水道筋は水道筋で、コロッケはD居かM野かH出で全然違う。ともかく、山の中で粘菌を見つけた時は年金をもらった時くらいうれしい(知らんけど)。何がうれしいかというとみんなが気づいていないのが楽しい。街でみんなが気づいてないであろうものを見つけた時に小躍りするように。

下山はそこそこのスピードで下りるので、小さな粘菌を見つけるのはそこそこ難しい。粘菌の気配を感じ、集中する。腐った木を見つけ、枯葉を裏返さなければならない。でも、漫然と下りていた山道が俄然面白くなってくる。粘菌に会いたいのに毛虫(いや、それは失礼だ。テングチョウの幼虫)と目が合い、キノコ(いや、それは失礼だ。ヒトクチダケ)に挨拶したり。そうやって山を下りていると疲れる。いや、疲れるというよりお腹一杯になる。まるで水道筋を歩いている気分になる。

小さなアップダウンを繰り返し、再度公園に到着。売店でビール。まずいわけがない。三宮行きのバス停前に倒木があったのでにじり寄ると、朽ちた木にサビムラサキホコリの子実体がいた。美しい。しかし下山で疲れた同行者の胸にはあまり響いていないと思う。それでいい。

三宮まで市バスに乗る。再度ドライブウェーのヘアピンカーブを右へ左へ巨体を揺らしながら、車内アナウンスで神戸の素晴らしさを語り続けるという異色の路線バス。三宮到着。打ち上げはお目当のDごが満席で高架下のOや。広い座敷は我々だけ。従業員が少ないからか注文はネットでお願いしますと。190円のハイボールが薄くてそんなに酔わなくて済んだ。

水道筋に戻って灘中央市場の工作室Yやへ寄って、お願いしていた摩耶山用の傘デバイスのプロトを見せてもらう。傘の柄を持つと低音が響く。傘の柄がウーファーになっていた。素晴らしい。粘菌、傘、梅雨の摩耶山が楽しみで仕方ない。


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