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ISO9001と経営:誰のためという視点の欠落は何をもたらすのか(札幌ドームと札幌オリンピックと4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解)

ISO9001と経営:誰のためという視点の欠落は何をもたらすのか(札幌ドームと札幌オリンピックと4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解)

■ISO9001への向き合い方

経営があって部分的な最適解としてISO9001がある。ISO9001を限定したものとして考える必要は無い。ISO9001に流れている思想的なものを自分なりに解釈していつでも引き出せるようにしておけば良い。

■なにげなニュース

○札幌ドーム、日本ハムが去って際立つ“迷走感” 市民が不安視する五輪への“新計画”はどうなる 
2023/10/06

 日本ハムの新旧本拠地の明暗が早くも分かれている。今年から新たなホームグラウンドとなったエスコンフィールド北海道(以下:エスコン)の評判は高く、多くの人が足を運んでいる。一方で旧本拠地の札幌ドーム(以下:ドーム)は市民の懸念通り、厳しい船出となった。

 暗い見通しも多い中、さらに市民が懸念する話もでている。2030年札幌冬季五輪・パラリンピック招致に向けドーム敷地内に新月寒体育館を建設するというものだ。5日には2030年の招致は断念したと報道されたが、2034年以降の開催を目指して仕切り直すことになった。

「(五輪を)札幌へ招致できるかは未知数。新月寒体育館という新たな箱物を作ってもその後はどうするのか?札幌ドームさえ黒字化できない札幌市が、また1つ負の遺産を抱えることになるはず。その場合には札幌市民の税金が投入されるという負のループが繰り返されるかもしれない」(スポーツマーケティング会社関係者)

https://dot.asahi.com/articles/-/203155?page=1

こうした記事の背景を少し考えてみる。

■札幌ドームの売上

札幌ドームは札幌市が運営し貸館料で収益を賄っている。
株式会社札幌ドームの決算報告書やその他の記事で見ると、

・2023年は約30億円あった売上が15億円ほどになる。
・日本ハムの開催試合は600試合ほどあり、稼働の半分を占めている
・日本ハムが札幌に移転したのは2004年である。
・2004年以前の売上は20億円程度であった。(但し黒字)

と言うことが分かる。
日本ハムに頼らなくとも20億円程度の売上で一定の事業になりうることが分かる。とはいえ、稼働の半分が日本ハムに依存していた状況を改善しない限り売上は見込めないだろう。

さらに言えば、設備の老朽化対策や最新設備への移行などを考えると漫然と構えていても何も解決しない。

ちなみに、突然北海道の景気が良くなっているわけではない。財の移転が発生しているだけである。下記のニュースを見ると分かる。

○新球場、1年目は好調=営業利益は大幅増―プロ野球日本ハム
2023-10-13

今年度の営業利益は、札幌ドームを本拠地としていたコロナ禍前の2019年(9億5000万円)から大幅増の26億円となる見込み。自前の施設となったことで、札幌市所有で第三セクターが運営していた前本拠地の頃と比べて収益構造が改善された。今後は冬季もイベントを開催する予定。 

https://sp.m.jiji.com/article/show/3072339

いってこいで15億円である。

■顧客と提供するサービス

確かに最初の記事のように明るい未来が待ち受けているとも思えない。何を間違えたのだろうか。時間を巻き戻して考える必要がある。

札幌ドームは「貸館料」で収益を上げているという。いわゆる場所貸である。
一般的にこうしたビジネスモデルは貸し会議室などと同様のメカニズムになる。
基本的な価値は「空間」「利便性」「設備」であろう。

しかし、札幌ドームのような広さであると理容の場面が限られてしまい、日常的に使うことはできず、当然稼働率も低くなる。顧客価値を「場所」という概念でくくっている限り市場は狭くなる。

従って、日本ハムのように定期的に大規模ナイベントを開催してくれる顧客は優良顧客であったはずである。彼らのニーズに耳を傾け、双方の利益の一致点を見いだすべきである。こうした努力を怠ったのは札幌ドームであり、顧客が離れていったのは当然のことである。

また、危機感のなさも致命的であろう。

彼らには、おそらくは「顧客は誰か」「提供するサービスは何か」という概念がない。
以前、ドキュメントを見ていたが「エスコンフィールド」のお客様は、「市民」であり、彼らに提供するものの一部をんいほんハムファイターズが担う。当然、運営に関しての方針などもあらかじめ計画されている。彼らの目標は集客(人が集う)である。

札幌ドームが考えるべきは「イベント開催する顧客捜し」ではない。そんな発想だから「半分に仕切って」という妙な発想になる。

市民を顧客とみるならば、行政サービスや社会課題解決に向かうべきである。
単に空間を提供するのではなく、空間に意味を見つけなければならない。

■負の遺産しか残さないオリンピック事業

それがどのような意味を持つのかを議論しないもののもう一つにオリンピックがある。
あれほどさわいだ東京オリンピックは何を残したのだろうか。
出場した選手の自己満足以上の何を残したのだろう。
施設は維持管理が必要なので、相変わらず税金を垂れ流ししているのではないのか。

○「このままだと解体されてしまう可能性も…」札幌市が30年の冬季五輪招致断念…そり競技予定地「スパイラル」維持に不安の声も
2023年10月6日

札幌市が2030年の冬季オリンピック・パラリンピックの招致を断念する方針を固め、そり競技施設「スパイラル」の使用が計画されていた長野市では、施設の維持について不安の声が聞かれました。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbc/764431?display=1

こうした声を無視するかのように、「とにかくやるんだ」の姿勢は変わらない。

○【五輪札幌招致】目標 2030年から2034年以降に切り替える方向…札幌市長がJOC山下会長と会談へ
2023年10月5日

札幌招致をめぐっては、東京大会をめぐる汚職や談合事件などを受け、市民から招致へ反対する声が高まっていました。
 30年大会の開催都市の内定は年内の可能性もあり、招致には地元の支持率の向上が課題でした。

https://www.uhb.jp/news/single.html?id=38165

「あなた方はうれしいかもしれないが私には関係ない」という声を無視してはならない。

■ 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

誰にどんな便益を与えるのかを漫然と考えた結果が上記であれば、もう1度考え直してほしい。

ISO9001:2015には、これに注意喚起する規格要求事項がある。

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
 次の事項は,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため,組織は,これらを明確にしなければならない。
a) 品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者
b) 品質マネジメントシステムに密接に関連するそれらの利害関係者の要求事項
組織は,これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し,レビューしなければならない。

しかし、これは既知の「顧客」に対する「製品サービスの提供」に限定している為に、顧客価値の再定義を想定したいない。そのため、既存事業の価値増大の為の変革につながらず、無為に居間のビジネスにしがみつく結果になる。

しかし、札幌ドームや万博協会に顧客視点があるとも思えない。
あなたの会社では、上記と下記の戦略性をどう考えているのだろう。

5.1.2 顧客重視
トップマネジメントは,次の事項を確実にすることによって,顧客重視に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
a) 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を明確にし,理解し,一貫してそれを満たしている。
b) 製品及びサービスの適合並びに顧客満足を向上させる能力に影響を与え得る,リスク及び機会を決定し,取り組んでいる。
c) 顧客満足向上の重視が維持されている。

誰が顧客かを考えない行動はは目を覆いたくなる結末を迎えることもありうる。

<閑話休題>

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