見出し画像

戦略人事:イエスマンだけの組織にしないために(ビッグモーターと内部通報制度)

■形がい化している内部通報制度

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社のレポートに興味深い記事がある。

○あなたの企業の”内部通報制度”形がい化していませんか?

内部通報窓口を設けている企業は少なくない。だが国内企業では通報受信件数は少なく、中には「受信件数ゼロ」というところすらある。内部通報制度の形骸化が懸念されるところだ。

 興味深いデータがある。デロイト トーマツ リスクサービスが2016年8月に発表した「内部通報制度の整備状況に関するアンケート調査」※の結果だ。

 有効回答数230社のうち、「内部通報窓口がある」と回答したのは217社94%に上る。2006年の公益通報者保護法の施行から10年が経過しており、同法の成立によって内部通報制度が日本企業に広く浸透し、整備も進んでいるようだ。ただし、その一方で、直近1年間の国内の通報受信件数について尋ねたところ、「10件未満」と答えた企業が149社72%で最多となっている(「窓口はない」もしくは「実績値を把握していない」と回答した企業24社を除く)。これらの企業で、法令違反、規定違反、パワハラ、セクハラなどの問題が起こっていないのであればいいのだが、実際にはこれらの問題があるにもかかわらず、通報が行われていないと想定される。内部通報制度が形骸化しているのだ。

https://toyokeizai.net/sp/170123deloitte_tohmatsu/index.html

内部通報制度があっても、その報復人事がおこなわれ、訴訟になるのはその一部にしか過ぎずほとんどが泣き寝入りになっているという印象を拭いきれない。

有名無実化していることは多くの報道ニュースからもうかがえる。

○内部通報で会社と8年闘争 オリンパス元社員が直面した法の不備

消費者庁が管轄する同法(公益通報者保護法)は「抜け穴だらけのザル法」との指摘も多かった。オリンパスに在職中、同社などへの公益通報を巡る裁判で最高裁判決による勝訴が確定し、一躍時の人となった浜田正晴さんもそれを痛感した一人だ。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00304/111900043/

■今更という気がする消費者庁の対応

○ビッグモーター内部告発に取り合わなかった前社長と制度の欠陥 対応が鈍かった政府の言い分を聞くと?
2023年8月2日

先の報告書によれば昨年1月、社長宛ての内部告発がLINEで行われていた。だが社長だった兼重氏は「個人的な確執」と取り合わなかった。
 この年の6月には別ルートで内部告発を知った損保側が同社に対応を求め、今年1月に調査委が発足。しかし報告書の完成は6月下旬。最初の内部告発から約1年半もの時間を要した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/267179

そもそも、ビッグモーターが会社としての組織機能を有していたかは疑問符がつく。いわゆる内部統制のかけらも見当たらない。そんな会社に今頃何を求めるのだろうという記事が見られる。

○ビッグモーターに報告要請 消費者庁、内部通報状況で
2023年08月03日

消費者庁は3日、保険金不正請求問題などが起きた中古車販売大手ビッグモーター(東京)の内部通報体制について、公益通報者保護法に基づく報告を求めたと明らかにした。新井ゆたか長官は同日、定例の記者会見で「体制が未整備だと確認できているが、正式な報告を求めたい」と説明。勧告などの措置については、報告を受けてから検討するとした。

ビッグモーターの外部弁護士による調査報告書では、社内で内部告発があったにもかかわらず、「もみ消したと言わざるを得ない」「結果的には握りつぶす形となった」などと指摘。通報に対する調査主体や方法の規定が整備されておらず、通報者に対するフィードバックの有無も曖昧で「積極的な利用が期待できない」とも言及していた。

https://www.47news.jp/9675765.html

■経営者の責任

オリンパスや東芝のように大企業だけでなく、多くの企業で「内部通報制度」が機能していないかどうかは分からない。内部通報制度ではないが「ハラスメントの相談窓口」を第三者機関に委託したり、中立的な権限を与えて個人情報の秘匿をしっかりやっている企業もある。

一方で「誰がそんなことを言っている」といって、詰め寄る経営者や管理者もいると聞く。
彼らの特徴は、「自分が聴きたくないことを聴かない」というメンタリティであろう。

「経営者はイエスマンを回りにおいてはいけない」と言われている。
なぜならば、彼らは鏡に映る自分のようなものであり、いないも同然だからだ。
むしろ弊害が大きい。なぜならば、耳に入る情報が意味が無いにもかかわらず量だけは確保できる。

情報の正誤が分からない状況で意思決定をするのは博打に近い。

「内部通報制度」が機能しないのは、組織風土として「イエスマン以外を排除する」というメンタリティが働いている恐れがある。それは知らず知らずのうちに多くの企業が陥る罠である。

ビッグモーターを人ごとのように言うのは間違っている。

<閑話休題>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?