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なにげなニュース:オオカミが来た(中国の不動産崩壊)

■読まれなくなった新聞

2023年に、100年近く続いていた「週刊朝日」が廃刊となった。
新聞の購読数も減っており、紙媒体の情報誌の存続は、単純に部数を追いかけるのでは難しいだろう。

紙面を飾るほとんどのニュースは前日のネット情報で確認済みのものであり、目新しさはない。紙面も限られているために深掘りもできず、その内容は表層的である。

物理的な制約がある以上仕方ないとしても、それを打破する術を持たないと生き残れないだろう。

しかし、ネットなどで広く情報を見ることができると言うことのデメリットも大きい。
それは、一定時間が過ぎると取り上げられることが少なく、また、取り上げられても多くのメディアの切り口は同じであり、独自性も見られない。

■立ち消えにならなかった中国恒大の破綻

中国恒大の債務超過の話題が上がったのは2年前のことである。

○中国恒大、事実上のデフォルト 事業は継続へ
2021/12/7

複数の欧米メディアは7日、巨額債務で経営危機に陥っている中国不動産大手「中国恒大(こうだい)集団」の米ドル建て社債の保有者が、6日の期限までに利払いを受けていないと報じた。これにより、同社として初のデフォルト(債務不履行)状態に陥った可能性がある。デフォルトになってもすぐに事業を停止せず、地元政府の監督下で海外の債権者との債務再編の協議などを進める見通し。

https://www.sankei.com/article/20211207-XJBRLN6DDFKJLCG7FIICOSKRMQ/

にもかかわらず、その後中国の不動産市場に対する懸念はあるもののそれ以上の問題が浮上することはなかった。もちろん噂は飛び交っていたが、経済ニュースで問題視されることはなかった。「オオカミが来た」という輩もいなかったのだろう。

ところがここに来て突然表面化した。

○不動産大手・中国恒大集団、アメリカで連邦破産法適用を申請
2023年8月18日

中国の不動産大手・中国恒大集団(エバーグランデ)は17日、米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。中国では不動産危機が深刻化しており、世界第2位の経済大国への懸念が高まっている。

https://www.bbc.com/japanese/66541377

■すでに準備をしてきていた投資家たち

日本のニュースではこぞって取り上げるがリーマンショックのような混乱は見られない。

○中国不動産危機、民間から政府系に波及か-国有開発業者が赤字警告
2023年8月18日

中国の国有不動産開発業者が広範な損失について警告しており、住宅危機が民間部門から政府系企業に拡大しつつあるとの懸念に拍車をかけている。

2年にわたる住宅不況は中国経済を弱体化させ、民間不動産開発業者の何十件ものデフォルト(債務不履行)の引き金となった。次は碧桂園かもしれないとの観測も広がっており、国有企業も影響は避けられないことが損失警告から読み取れる。また、未完成プロジェクトを引き継ぎ、住宅購入者への引き渡しを確実にすることで市場を支える国有企業の能力も低下している。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-18/RZK74CT1UM0W01

○中国の資産運用大手「中植企業集団」、債務再編へ…経営陣「破綻も選択肢」
2023/08/17

ロイター通信は17日、中国の資産運用大手「中植企業集団」が、債務の再編を行う予定を明らかにしたと報じた。すでに全ての投資商品で支払いを止めたともしており、デフォルト(債務不履行)を回避できるのか、予断を許さない状況だ。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20230817-OYT1T50204/?from=smtnews

○「恒大ショック」再び、中国不動産大手の経営危機 約1兆円の赤字、迫る「碧桂園」の流動性リスク
2023/08/17

またもや中国で大手不動産会社の経営危機のニュースが広がった。

月上旬から碧桂園に関するさまざまな噂が飛び交い始めていた。8月7日、「仏山市自然資源局の土地譲渡価格第1期分の早期支払いに関する督促状」という文書がネット上に出回った。それによると、碧桂園が所有する広東省仏山市南海区にある土地は、今年7月15日までに第1期分として13.7億元(約270億円)が支払われるはずだった。

しかし、規定期間内に支払われなかったため、契約違反となった。

https://toyokeizai.net/articles/-/695098?utm_source=smartnews&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

すでに投資家は織り込み済みであり、知らないのはそうしたニュースに関心を寄せていない層だけであろう。

■オオカミが来たと騒がないメディア

すでに新聞が取り上げる一面は、共通的な重要性を示しているかもしれないが、各個人が置かれている状況を配慮していない。すなわち、自分にとって「オオカミが来た」という情報にはなり得ない。

自分自身が「オオカミが来た」と騒がない限り、情報は集まらない。
そうした時代のメディア論を確立しないと、突然倒れた中国恒大に驚くだけの事態になる。

経営者にとっては致命的になりかねない。

<閑話休題>

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