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ISO9001と経営:監視を丸投げする危険(4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス)

■審査の場面で気になること

マネジメントシステムは、「組織」「機能」「標準」を要素としている。

「標準」とは、簡単に言えば全社員が守るべき「ルール」になる。それが明文化されている場合もあれば、暗黙のルールになっているものもある。ただし、個人によりやったりやらなかったりすることが望ましくないものは明文化するのが原則である。

それはいろいろな形になっている。たとえば工場に記載される「5S」などはポスターという形で表示されることが多い。「規程」という形ではないだろう。

こうした「標準」は、皆が守ることが前提になる。自分の都合で省略して良いものではない。ところが、「忙しい」「影響が少ない」「態勢に影響はない」などの理由で、省略されたりするプロセスが時々見受けられる。

私自身の専門分野はシステムの設計開発なので、それを例に取ると

・要件定義などをまとめた設計書を作成する
・実際に実装するときに修正が発生する
・しかし簡単な修正なので、設計書には反映させないで製造する
・テストを行なう際には、その修正を前提にしたものなので不具合は出ない

すなわち、変更管理ができていないことになる。しかし、これに対し「多少の変更は記録に残さないことを認めている」と言われると「水掛け論」になる。また、そうした変更管理は各部署のプロジェクト毎の管理リーダーに任せていると言うことになると、マネジメントができているかどうかは価値観の差異になり、解決できない。

■現場任せの弊害

現場に権限を与えていること自体は問題は無い。しかし、どのようにしているのかを把握するのは組織の責任である。それを怠ると問題が出る危険が高い。

○安全帯の使用状況を監視せず 建設業の代表者を書類送検 古河労基署
2023.04.15

茨城・古河労働基準監督署は、組立て等作業主任者にいわゆる安全帯の監視を行わせなかったとして、「小松建業」の代表者(茨城県古河市)を労働安全衛生法第14条(作業主任者)違反の疑いで水戸地検下妻支部に書類送検した。令和4年11月に、小松建業の労働者が高さ14メートルの鉄骨の梁上から墜落して骨折などのケガを負う労働災害が発生している。

 労災は、古河市の大規模倉庫建設現場で発生したもの。被災した労働者は骨組みの組立て作業に従事していた。

 安衛法では、建設物の骨組みなどにおいて金属製の部材で構成されるもの(高さ5メートル以上)の組立てや解体作業について、組立て等作業主任者に要求性能墜落制止用器具の使用状況を監視する職務を行わせなければならないと規定している。作業主任者だった同代表は、監視を怠っていた疑い。

https://www.rodo.co.jp/column/148741/

法令違反ももちろんではあるが、実際の作業を検証するための記録を残していないから監視もできないと言うことになる。

■規格要求事項を漫然とみないこと

どこまで文書化するかは組織に任されていると主張する人々がいる。
その根拠の一つは

7.5 文書化した情報
7.5.1 一般
組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。
a) この規格が要求する文書化した情報
b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報

注記 品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は,次のような理由によって,それぞれの組織で異なる場合がある。
-組織の規模,並びに活動,プロセス,製品及びサービスの種類
-プロセス及びその相互作用の複雑さ
-人々の力量

しかし、これは欺瞞に陥りやすい。前提条件を認識しなければ、自己都合のルール作り頓用になってしまう。下記の規格を尊重しなければならない。

4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス
4.4.1 組織は,この規格の要求事項に従って,必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む,品質マネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,かつ,継続的に改善しなければならない。
4.4.2 組織は,必要な程度まで,次の事項を行わなければならない。
a) プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する。
b) プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報を保持する。

すなわち、業務プロセスを明らかにするとともに、それを実証するための記録を整備することを求めているはずである。それを自分の都合の良いように、プロセスを省略して記録を残さないという文化を形成してしまえば、問題が起きたときに検証ができなくなる。

<閑話休題>

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