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ISO9001と経営:投資対効果と社員満足度(7.1.3 インフラストラクチャ)

ISO9001と経営:投資対効果と社員満足度(7.1.3 インフラストラクチャ)

■報道への疑問

2023年5月、新型コロナの5類移行に伴い、コロナ対策が大きく緩和される方向に社会が動いた。これに伴い、「テレワークの廃止、出社義務」がクローズアップされた。

その弊害が、ニュースに取り上げられることがある。

○在宅勤務がなくなる?

2人の子どもを育てる30代の女性からNHKに寄せられた声です。

「私の働いている会社ではコロナが5類に移行することに伴い、テレワーク(在宅勤務)が廃止されます。テレワークがなくなると、子どもの通院や、保育園・学童のお迎えに支障がでます。ぜひ、実態を取り上げてほしいです」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230421/k10014043881000.html

在宅勤務やリモートワーク、テレワークが廃止されたというニュースはそれなりに説得力がある。

○テレワークを廃止する企業が増えたのはなぜ? 廃止によるデメリットも紹介
2023.07.13

ウィズコロナからアフターコロナへと移行しつつある今、テレワーク廃止を検討する企業が増えているようです。テレワークはさまざまなメリットがある一方で、課題も生じており全ての企業が最適に感じているわけではありません。

テレワークを廃止する企業が増えたのはなぜか? コロナ禍での暫定措置であったため

テレワークは企業にとってコロナ感染対策への暫定的な措置だったため、従来のオフィスワークに戻しても問題ないと判断することがひとつの理由に挙げられます。新型コロナは季節性インフルエンザと同様に「5類」へと移行し、感染や重症化するリスクが低減したため、テレワークを廃止するという企業が増加傾向にあるのです。

https://jinzainews.net/26791907/

これは、いやいや「テレワークにした」ので元に戻す企業が増えたと言う論ではあるが、これは感情的な論である。

なぜなら、リモートワークはコロナ前から推奨されており、多くの起業で準備をしていた。何も準備をしていない企業が、十分な対応ができなかっただけである。

■リモートワークのハイブリッド化をしている企業

リモートワークを行なう為には、当然情報インフラを整備しなくてはならないが、それ以上に人事制度やワークフローの整備が必要である。労務管理や賃金制度を整備しなければ従来のような働き方を前提とした組織運営を余儀なくさせられる。管理者に過度な負担がかかるののはその典型であろう。

私の知っている企業では、すでにテレワークの準備を進めており、ワークフローを会社にいようが自宅であろうが対応できるようになっており、あらかじめ決めてある任意の時間にに上司に報連相を行なうようにしている。残業申請がなければ、強制的にネットワークを遮断する。

別の会社では、出社するかどうかは本人の申告で行なう。そのため、固定したデスクはなく、出社日に予約したデスクあるいはスペースで仕事をする。オフィスは余裕のある空間になり快適性を増した。

そうでない会社はどうなっただろう。
揶揄された記事ではあるが、そうした側面をうかがわせる記事がある。

○無念のテレワーク廃止「あんなに苦労したのに……」ワンオペ情シスの本音
2023/04/13

「テレワーク 廃止で苦労 水の泡」

新型コロナウイルスが流行し、オフィスへの出社が難しくなった2020年春。当時、多くの企業が一斉にテレワークを導入したことは記憶に新しい。一方で、大きな負荷がかかったのが情シス部門である。早急なテレワーク環境の構築が求められ、従来よりも厳しいセキュリティ対策や社員に対してのサポート業務が求められるなど、情シスの苦労は並々ならぬものがあっただろう。

https://news.mynavi.jp/techplus/kikaku/20230413-2627208/

■働くヒトの思い

リモートワークを、実際にそれに触れる人々がどう思っているのかを調べた調査結果がある。

○テレワークに関する意識調査
雇用者・管理職ともにテレワークの満足度高く、管理職は「孤独感・疎外感」を懸念
2023年8月7日
https://www.jpc-net.jp/research/detail/006528.html

少し抜粋すると以下の通りである。(○数字は中野が付記)

①テレワーカー、管理職ともに、約40%がテレワーク実施により「生活」および「健康(身体面・精神面)」に「良い変化があった」(「良くなった」と「やや良くなった」の合計)と回答した。一方で、10%程度の回答者は「健康(身体面・精神面)」において「悪い変化があった」(「やや悪くなった」と「悪くなった」の合計)と回答(図23)。

②自身のテレワークでの働き方に満足しているかについて、テレワーカーの82.6%、管理職の78.1%と約8割が「満足」(「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計)と回答(図26)。

③テレワークで働くときの課題として、 テレワーカーは「仕事ぶり(プロセス)についての評価の適切さ」(30.7%)、「仕事の成果についての評価の適切さ」(29.4%)、管理職は「孤独感や疎外感の解消策」(46.8%)、「上司・先輩からの十分な指導やアドバイス」(45.3%)、「オーバーワークを回避する制度や仕組み」(43.8%)が「課題だが解決していない」と回答。また、テレワーカーは管理職と比べてそれぞれを「課題だと思わない」声が多かった(図27~30)。

④勤め先のテレワークが廃止・制限されたとき、テレワーカーの58.7%、管理職の64.1%が「今の勤め先で継続して働く」と回答。一方で、テレワーカーの16.4%、管理職の9.6%が「退職・転職を検討する(退職・転職した)」と回答した(図33)。

ここから分かることは、
(1)テレワークにはメリットもデメリットもある。ヒトによる。
(2)メリットを感じているヒトは、それを失えば退職のリスクがある
(3)継続してゆくためには課題がある

と言うことであろう。
これを放置したまま、一方的なテレワーク中止はリスクが伴う。

下記の記事も参考にすると良い。

(参考)
○第13回 働く人の意識調査
「5類」移行で感染不安は減少、テレワークは大企業の実施率低下で過去最低に
https://www.jpc-net.jp/research/detail/006527.html

○テレワーク廃止は得策?企業の動向や失敗する企業の特徴オフィスの在り方を解説
https://www.kokuyo-marketing.co.jp/column/cat69/post-177/

■ISO9001と経営

「ISOに取り組んでいるのに儲からないのはなぜだ」という質問を受けたのは10程前だ。いまでは「それはあなたが儲けると言うことに無頓着だからだ」と切り返すかもしれない。

ISO9001:2015には、儲けるために配慮して欲しい項目が網羅されている。
たとえば、

「7.1.3 インフラストラクチャ」
組織は,プロセスの運用に必要なインフラストラクチャ,並びに製品及びサービスの適合を達成するために必要なインフラストラクチャを明確にし,提供し,維持しなければならない。
注記 インフラストラクチャには,次の事項が含まれ得る。
a) 建物及び関連するユーティリティ
b) 設備。これにはハードウェア及びソフトウェアを含む。
c) 輸送のための資源
d) 情報通信技術

こうしたことは、事業がスムーズに進めるための基礎となる。
しかし、儲からない会社は次の視点がない。

①投資対効果を考えない
 必要だからやるという発想では、投資を無駄にしかねない。
 たとえば、先の例では「リモートワークのための通信環境を整備」したとしても、それを使わない状況になればイニシャルコストは無駄になる。
②リプライの発想が狭い
 何を便益して求めるのか?これを財務的な視点だけで見てしまう傾向がある。売りが寝アド簡単に上がるわけではない。むしろ波及効果を広く見なければならない。社員満足の向上、離職の防止、採用面での広告効果、残業時間などの低減などいくつもある、近視眼的な発想では費用対効果は分からない。
③優先順位がない
 そのため、投資戦略がなく目の前の問題解決に向かう。戦略がなければそうした以降かなどと言うことを言っても評価基準を作ることができない。戦略の評価ができなければ投資が手段ではなく目的化する。過剰投資の一因になる。

<閑話休題>

(その他の参考記事)
○経営側VS労働者 米国で加熱する「リモートワーク」是非議論
2023年8月27日

 コロナ発生以来、企業の職場実態を追跡してきた調査機関「WFH Research」(本部米スタンフォード大学)が公表した今年6月時点の最新データによると、米国の主だった企業の場合、職場への「完全復帰者」は全体の59%だったのに対し、「フルタイム在宅勤務」が12%、オフィス通勤と在宅勤務の両方をミックスした「ハイブリット」型が29%だった。

 オフィスへの完全復帰をいまだに渋っている従業員は、全体の41%とかなり高い割合であることを示している。

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/31165

○リモートワーク革命は死んだ? 米国で広まる出社回帰 社員は出社命令に反発、半数が辞めた会社も
2023年09月26日
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2309/26/news055.html

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