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戦略人事:自分で自分の首を絞めることなかれ(人手不足と2024年問題と引っ越しのサカイ、キオクシア)

戦略人事:自分で自分の首を絞めることなかれ(人手不足と2024年問題と引っ越しのサカイ、キオクシア)

■人手不足の本質的問題

少子高齢化、2024年問題(残業時間の抑制)、コロナによる外国人労働者の減少など、様々な理由があるだろうが、多くの事業で人手不足が問題となっている。一方で、失業率は一定水準にあり、雇用のミスマッチが存在することも分かっている。

本質的な問題は、飲食業、宿泊業、建設業、運送業での「現場で働く人々」を低賃金で働かせることで成り立つ、その産業構造が問題の根幹である。

ひととき話題となった「エッセンシャルワーカー」が社会に必要だと言いながら、彼らの貧困には目を背けて「低賃金」を押しつける社会である限り人手不足問題も解決しない。

こうしたことは、バスの運転手不足など地域のインフラの崩壊にもつながる。
しかし、彼らの自助努力だけでは解決できないだけでなく、企業自体の無責任さもこれらを助長することになりかねない。

企業自体が認識を改める必要がある。

■企業責任

企業に勤める人々はどうしても声を上げず楽なっている。
しかしそれが容認されているわけではない。
企業が、弱者の搾取を前提にすることは社会的にも認められない傾向は続くと期待されるニュースもある。

○サカイの出来高払い賃金認めず 「自助努力反映されていない」―地裁支部判決、運輸業界に波紋
2023年09月11日

 作業量などに応じた「出来高払い制」を中心としたサカイ引越センター(堺市)の賃金制度の妥当性が争われた訴訟で、東京地裁立川支部が8月、「同社の制度は出来高払いに該当しない」として未払い残業代などの支払いを同社に命じた判決が波紋を広げている。運輸業界で出来高払い制は広く取り入れられており、サカイは即刻控訴。業界各社は高裁での審理に注目している。

労働基準法などの規定では、出来高払い制賃金は残業代を計算する際の割増率が低く、月給制と比べて残業代は少なくなる。サカイの賃金体系は基本給が月6万~7万円程度と低く、大部分は「業績給」などと呼ばれる同制度扱いの手当となっていた。

前田英子裁判長は8月9日の判決で、出来高払い制賃金について、「作業量などの成果に応じて一定比率で定められるもの」と定義。同社の業績給の一部は、売り上げが営業担当者と顧客の交渉で既に決まっており、作業員は会社から指示された作業をしているだけだと指摘し、「(作業員の)自助努力が反映される賃金とは言い難い」として当てはまらないと判断した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023091100100&g=soc

○クロネコDM便配達員「使い捨てられた」「契約終了は一方的」 ヤマト運輸と団体交渉求め組合結成
2023年9月11日

 ヤマト運輸がカタログなどの配送サービス「クロネコDM便」の配達を来年2月から日本郵政に委託するのに伴い、全国に約3万人いる配達員との業務委託契約を一方的に終了するのは不当だとして、全国一般三多摩労働組合(東京都国立市)が11日、会社側に団体交渉を求めるため、労働組合を結成したと発表した。組合側は都内で会見し、配達員の加入を呼びかけた。(岡本太)

 会見には、全国一般三多摩労働組合の朝倉玲子書記長も同席し、問題点を訴えた。「労働者を非常に安い金額で使い、使い捨てにする。しかも経営側の都合で突然解雇しても責任を取らなくていい。これはヤマトだけの問題ではない。(高本さんらが)労働者に当たると明らかにすることで、こういった問題の歯止めにしたい」と力を込めた。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/276699

■教育コスト、採用コスト、訴訟コスト

企業の活動を支えるものとして「ヒト・モノ・カネ」と言われる。ヒトに関わることも戦略的に取り組むべきであり、それを戦略人事と呼ぶことができよう。
企業の戦略は、社会への関わり方を提議している企業理念に元ずくべきであり、決して「入ってくるお金」のことだけを考えるべきではない。
戦略人事はヒトが定着することによるメリットにも目を向けるべきである。

ヒトに報いる企業というブランドはヒトの定着を促すという仮説には、一から教えなくてはならないという教育コストの低減、採用媒体にアクセスしなくてはならないという採用校ストの削減、そして上記のような訴訟コストの回避を伴う。

人事戦略を策定する際に、こうしたコスト面にも目を向けるべきである。

安易なリストラは「コストカット」とともに「パワーカット」にもつながることを自覚すべきである。

○半導体キオクシア、早期退職募集 56歳以上、業績悪化で
2023年09月21日

半導体大手キオクシアが、業績悪化を受けて早期退職者の募集を始めることが21日、分かった。国内で働く56歳以上の正社員を対象とし、北上工場と四日市工場の従業員も含む。応募した社員には退職金を積み増し、再就職を支援する。募集人数は定めていないという。

https://www.47news.jp/9887906.html

○「生産性向上」必ずしも善ならず-「リストラ型」は成長難しく
2008年度 論文

近年サービス業では、リストラを進める一方パートや派遣など非正規雇用者を大幅に増やしている。こうした労働者への職業訓練は少なくてすむ。つまり企業は人的資本の蓄積がない中で生産性だけを無理に上げているのである。こうした非製造業での「後ろ向きの生産性向上」パターンは、必ずしも生産性の向上が経済全体の成長率向上には結びつかない。

技術水準の高い企業は、競争的な環境になるほど、競争から一歩抜け出すために一層の生産性向上のために努力する。だが先端的な技術水準から遅れた企業は、多少生産性向上に向けて努力したところで、現在の競争状態を脱して優位に立てる確率は低いため、生産性向上への意欲を失ってしまうという。

https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/miyagawa/02.html

<閑話休題>

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