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システム思考:活動の連鎖は遅延遅延する(人口問題と在庫問題)

■遅延
 システムダイナミクスの考え方に「遅れ」がある。
 現在何か問題が起きているからと言って、その対処をしても、その対処の効果が出てくるのに時間だがあると言うことだ。
 例に出るのが、生産と在庫の関係である。
 現在、在庫が足りなくなると言うことで、生産ライン(すなわち工場)を増やしても、その工場で生産がはじまるのに時間がかかると言うことである。これは資材の調達も発注してから納品まで時間がかかると言うことである。

 市場は動いている。半年後に現在の生産能力の2倍になっても市場のニーズが一段落すれば過剰在庫が発生し、財務負担が重くなり経営を圧迫するということがある。

 こうした遅れを配慮したシステムの把握が必要であり、これを怠るとろくな結果にならない。下記はそれを示している。

○中国の港に「空きコンテナの山」が積み上がる事情
コロナ禍での不足から一転、深刻な供給過剰に

空きコンテナ過剰の背景には複数の要因がある。なかでも根本的なのが、コンテナの作りすぎだ。新型コロナ流行後のコンテナ不足と運賃急騰をきっかけに、コンテナ・メーカーに注文が殺到。イギリスの海事コンサルティング会社ドリューリー・シッピング・コンサルタンツの調査レポートによれば、2021年だけで700万TEU(20フィートコンテナ換算)を超えるコンテナが生産された。これは平時の年間生産量の3倍近い数だ。

https://toyokeizai.net/articles/-/653722?utm_source=smartnews&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

■人口問題も遅延する。

 こうした遅延は人口問題でも同様に発生する。
 簡単に言えば何か対策を取っても良くない方向に動くリスクがあると言うことである。
 中国の人口減も同様である。

○中国の人口減少 緊張高める行動に警戒を
2023/2/6

中国の人口が61年ぶりに減少に転じた。中国国家統計局は、2022年末の総人口が前年末比85万人減の14億1175万人だったと発表した。インドの人口が中国を上回り、世界最多となった可能性がある。

人口減は経済の縮小、ひいては国力の低下に直結する。中国では、国民全体が豊かになる前に高齢化が進む「未富先老(みふせんろう)」が現実のものになりつつあり、貧富の格差も拡大している。

https://www.sankei.com/article/20230206-HS7FHVXEQZIE5KMM65N4GDQMQI/

しかし、こうした数字は突然現れるわけでもないし、いろいろな要因を配慮しなければならない。

出生率に着目すると、1990年代から2.0を下回り初め、直近では1.8程度であろうか。
その間、乳児死亡率は下がり続けているものの1990年代ではまだ、4%程度あり、かなり高いことが分かる。したがって、若年層(すなわち生産年齢人口)は少ない状態がずっと続いていることになる。

一方で、中国の人口は増え続けている。その理由は、高齢者の死亡が少なくなり、すなわち平均寿命が延びていることが考えられる。1990年には65歳程度であったものが、2020年には80歳になっている。死亡率がかなり減っていることが分かる。

(参考) https://datacommons.org/place/country/CHN?hl=ja

年齢構造が変わっていること(高齢者の比率が高いこと)、農村部の人口が減り、都市部の人口が増えていること、これが、若年層の就労意識を変えかねないことなどが、産業に与える影響も無視できない。

それを伺わさせる記事を見ることができる。

○中国でブルーカラーの「高齢化」が進む背景事情
40歳以上が5割近くに。技能人材の不足が深刻
2023/01/18

中国の労働力人口のなかで「ブルーカラー」の高齢化が進んでおり、40歳以上の比率が5割に近づいている――。中国首都経済貿易大学の中国新就業形態研究センターが先ごろ発表した研究報告書から、そんな実態が浮き彫りになった。

ブルーカラーは、建設業や製造業などの第2次産業とサービス業が中心の第3次産業の現場で働く賃金労働者を意味する。上述の報告書の推計によれば、2021年時点の中国のブルーカラー人口は4億人を上回り、7億4700万人の総就業人口の5割以上を占めている。

その年齢構成を見ると、ブルーカラーの平均年齢はすでに生産年齢人口の平均年齢(38.8歳)より高くなっている。冒頭で述べたように、ブルーカラー全体に占める40歳以上の比率は5割に近づいており、50歳以上が28%に上るなど、高齢化が顕著なのが実態だ。

https://toyokeizai.net/articles/-/645780

■システム思考があるのか疑問に思う

 少し考えれば分かるのだが、仮に今日妊娠したからと言ってすぐに生まれるわけではなく、一年後にこの世に生を受ける。そして労働人口になるにはさらに10数年後になる。その期間ずっと出生率を上げてしまえば、今度は逆に人口過多になりかねない。

 もう一つ忘れているのが、「生め」といって子供を産む環境にはないと言うことである。現在、我が国でも、お隣韓国でも、そして中国でも、「産み育てられないという貧困」がある。すなわち、システムの要素に「貧困」が加わった全体システムを考えなければ少子化は解決できない。

 下記の記事はとても正気の沙汰とは思えない。

○「未婚子女も産め」…人口減少に焦った中国、産児制限を解除
2023.02.02

中国は昨年新生児数が1949年建国以来初めて1000万人以下に落ちた。昨年956万人が生まれたが、2021年1062万人と比較するとはるかにこれを下回る。CNNなど外信は中国が長期間実施してきた産児制限の政策と生活費・教育費の上昇など景気低迷不安が影響を及ぼしたと分析した。

1980年代から「一人っ子政策」を守ってきた中国は人口危機の兆しを捉え、2013年夫婦のうち片方でも一人っ子の場合、2人の子女を産めるように政策を転換した。続いて2016年には全面的に2人の子女を産めるようにしたほか、2021年には「一家庭3人子女」も許可した。

https://s.japanese.joins.com/Jarticle/300533

 とはいえ、異次元の少子化対策といって、何にも施策がなく、予算さえ付ければどうにかなると考えているこの国のトップもシステム思考があるとも思えない。

 下記の記事を対岸の火事と見て欲しくない。

○出生率「0.78」世界最速で少子化が進む韓国で起きていること 経済苦に悩むシングルマザーを支えるのは
2023年2月27日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/233409

<閑話休題>

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