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戦略人事:人材のシェアリングとベーシックインカム(AIとITがもたらすもの)

ブルーカラーとホワイトカラーで異なる戦略

■囲い込み戦略

昨年来話題に上るのは「ジョブ型雇用」であり、その目的は、優位性の高い事業推進のために優秀な人材が欲しいという企業側の切実な要請がある。しかし根底には、「優秀な人材を当社だけのものとして囲い込みたい」という思惑が見え隠れする。

なぜならば、ジョブ型雇用とセットになるのは「新卒採用や初任給」の話題であるからだ。もちろん中途採用や社員のキャリアプランもあるが、いずれも長期雇用が前提であろう。なぜならば、競争優位の高い事業は、その成果が出るまでには長期の活動が必要であり、それを維持するためには人材の囲い込みは必須だという信念が企業側にあるからだ。

■疎かにされる現場の人材

一方で、汎用性の高い職務の人材は使い捨てのような扱いを受けてる。エッセンシャルワーカーと言っても彼らの労働環境が改善されることはない。ウソだと思うのなら、コロナ渦での彼らの処遇の話、解雇されるがママの飲食店や宿泊業の彼らのことを思い出すといい。現在の人手不足が解消されないのは、元の職場が魅力的でないからであろう。

こうした、人手の偏在は現場での価値創造が必須の産業で顕著であり、建設業や運送業では深刻化している。なぜならば、何も対策を行なっていないからだ。

■自動化やリモート化が進む世界

IT+AI(+」ロボット)の世界が進んでいる。
もちろん、人材不足の解決もあるが、効率化や安全対策、事故の未然防止などの効果も期待できる。ざっと目についたものをいかに記す。こうした技術の活用は、人材に対する考え方もけるだろう。

○初心者も熟練工に パナソニックが工場向け電動工具「アゼロス」
2023/3/28

近年、工場では高齢化や人手不足が課題となっており、総務省の統計によると、製造業の就業者の8・6%が65歳以上、23・9%が非正規雇用になっている。

アゼロスは事前に設定をすることで必要なねじ締めの回数を本体に表示したり、正しくねじ締めができている場合には判定ランプが緑色に点灯したりして作業をサポートする。技術にかかわらず一定の品質で作業できるため、経験の浅い女性や外国人労働者でもベテランに近い働きができるという。

https://www.sankei.com/article/20230328-TNAETMYGUNN2LI5ODIVQ5JFXSI/?utm_medium=app&utm_source=smartnews&utm_campaign=ios

○日立Sol×奥村組、建設現場でフック不使用者を検知するAI活用サービス
2023/05/16

同サービスは、画像認識AI技術の活用により、鉄骨上作業における墜落制止用器具(安全帯)のフック不使用者を自動検知し、一定時間不使用状態が続いた場合に通知を行うもので、不安全行動を抑止し、事故軽減に貢献する。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230516-2680398/?lead&utm_source=smartnews&utm_medium=ios&utm_campaign=sp_app

○回転寿司の店員が「皿」を数えなくなっている背景 間違うと売上減、迷惑動画の影響も
2023年05月17日

 店員にとっては、わざわざテーブルに出向いて皿を数える必要がなくなるので、空いた時間を接客などに振り分けることも可能だ。長期的には店舗の省人化にもつながる。

 コロナ禍や迷惑動画の影響もあり、大手回転寿司チェーンでは回転レーン上の寿司を見て「おいしそうだから食べてみよう」というシーンは減りつつある。タッチパネルで注文した商品だけを提供するスタイルが主流となれば、皿を数える行為は減っていくことになる。飲食業全体では人手不足が深刻化しており、人件費も高騰しているので、こうした傾向は強まる可能性がある。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2305/17/news040.html

■先を見通した戦略人事

熟練工が要らないと言うことにはならないだろう。しかし、熟練工がいないと仕事が進まない分野は少しづつ減るだろう。そこには、技術的なハードルを下げて「多能工化」を進める戦略への移行が必要になる。現場労働者のスキル分布が大きく変わるはずである。

そうしたときに、必要人材の偏在が起こりこれの流動化が大きく求められる。業界全体を見れば、余っている人材があれば不足している人材への移行や流動化を進めなければならない。

囲い込みの戦略ではなく、シェアリングの発想が必要になる。企業の卑しい発想を改める必要があるだろう。

■ベーシックインカム

一方で、働く人にとっては「安定性」のない雇用は避けたいと思うだろうし、これがまた「人材の囲い込み」を助長する。これを防ぐためには、企業内もしくは業界内でのベーシックインカムを補償するべきである。最低賃金は時間給であるが、ここで言うベーシックインカムは年収である。年齢や被雇用者あるいは家族構成などに従って、「衣食住、教育」に必要な報酬を設定する。業績に応じて支払われる特別な報酬は企業によって差があっても良い。

社会主義とか共産主義の話をしているのではない。人の働き方で最大のパフォーマンスを出すことを臨むのであれば部分最適ではなく、全体最適を考えろと言っているのだ。

<閑話休題>

2023/6/2

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