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なにげなニュース:自治体のデジタル化の温度差(マイナンバーカードのシステムの未改修問題)

■システム開発の経験者からみた不思議

○マイナ証明書交付サービス、44自治体で未改修…システム提供の富士通から報告
2023/07/11

 河野デジタル相は11日の閣議後記者会見で、マイナンバーカードを使ったコンビニエンスストアでの証明書交付サービスを巡り、システムを提供する富士通Japan(東京)から44自治体で過去のシステム改修が適用されていないとの報告を受けたと明らかにした。デジタル庁はサービスの停止と速やかなシステム改修を要請した。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230711-OYT1T50138/

河野デジタルは、おそらくシステムというものに対して素人なのだろう。
「速やかな改修」がどれほど大変かを理解していないのではないだろうか?

この記事を見ている人も、自治体によりITサービスグループ環境が異なることを知らないかもしれない。

・パソコンを使っていたとしても、Oのバージョンが異なる
 Windows10、Windows11ならまだしも、Windows7を使っているかもしれない。
 ネットワークの接続環境も分からない。
・オンプレミスもしくはクラウド
 相変わらず自前のサーバーを運用しているかもしれない。
 OSもWindows ServerかもしれないがLINUXかもしれない。
 先端的なところではクラウドサービスを使っているかもしれないが、AWSやAZUREなど選択肢はいくつもある。
・運用
 尼崎事件でも分かるように運用を外部委託していることもある。

自治体ごとにIT環境が異なると言うことは何を意味するのか?

■自治体の数だけシステムがあり得る

もちろん、基本機能は共通であろう。
しかし、ローカル環境で動かすとしたら、スタンドアロンかクライアント/サーバー型か、クラウドであれば、すべて同じプラットフォームにできるかなどの事情があるとしても類型化できるとしてもそれなりの種類になる。

さらには、自治体毎に公布の手続きが異なればフロントエンドのUIも変えなければならない。短期間で単一のシステム開発会社が対応できるとは思えない。

下記の記事は分からないでもないが別の問題を抱えている恐れもある。

○富士通、マイナ誤交付で揺らぐ「IT最大手」の足元
システム障害が頻発、大規模組織再編が遠因か
2023/07/13

富士通などによると、システム利用が集中して負荷が高まった結果、印刷処理管理プログラムに不備があったことで、利用者とは別人の個人情報が記載された証明書が横浜市や東京都足立区などで印刷されたという。

デジタル庁の指示の下、5月にはサービスを提供している自治体で利用を停止し、点検を実施した。動作確認をしたうえでサービス利用を再開したものの、6月末に福岡県宗像市で同様の誤交付が発生。富士通は提供先の全自治体に対してサービス利用の停止を要望し、再点検の実施に追い込まれた。

https://toyokeizai.net/articles/-/686242?utm_source=morning-mail&utm_medium=email&utm_campaign=2023-07-13&utm_content=1&mkt_tok=OTA3LUpLVC0yNTEAAAGM6v9zB8C47lQEBT_UDzJPbU2mU5WeHmcT8_r6NSYZlza994LtcONjw7PykKTtQ3NdvtzLFE0DhZ_oSH_sdhyZ3J67Mqp2AtkTxQVsyCUaJMnOtSk

■SIベンダーの多重請負構造

多くの大手SIベンダーが自分たちでシステム開発をするというのは幻想である。
多重下請け(協力会社、さらにその子会社、一時的な発注先など)の構造があり、私自身は5次受けを経験したことがある。

そんな多重構造では、プロジェクトが終了すれば皆解散する。終わった後に補修とか言われて招集されても応じることは稀だろう。

マイナンバーカードを運用するに当たってはまずはすべきなのは自治体毎のバラバラのデジタル環境を統一することである。なんてことはわかりきっている。

それを無視して「やれ」としか言わない某大臣は退場した方が良い。

■その他の四方山話(富士通と癒着)

 全国の自治体に向けてのシステム開発だ。確かに共通プラットフォームは必要だが、システムを設計開発する経験から言えば、共通プラットフォームに対するAPIを公開し、個別アプリは入札で行なうのが常だ。こうした個別アプリまで富士通が担っていたとしたら、何かしらの癒着があったのではないかと危惧する。

<閑話休題>

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