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ISO9001と経営:三大無策に頼らざるを得ない現実(事故ゼロと10.2 不適合及び是正処置)

ISO9001と経営:三大無策に頼らざるを得ない現実(事故ゼロと10.2 不適合及び是正処置)

未然防止も再発防止も幻想に過ぎない。

■三大無策

あくまでも個人の意見ではあるが、再発防止策の三大無策という言葉がある。
・再教育
・周知徹底
・管理強化
である。なぜ三大無策かと言えば、周知徹底や教育、管理は今までやってきてこなかったのか。やってこなかったとしたら、そもそも経営の「無責任」である。まずすべきは経営者の「再教育」である。

どうしてこうなるのかは、原因の分析ができないからである。規格要求事項には「10.2 不適合及び是正処置」があり、下記の記載となっている。

b) その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため,次の事項によって,その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。

  1. その不適合をレビューし,分析する。

  2. その不適合の原因を明確にする。

  3. 類似の不適合の有無,又はそれが発生する可能性を明確にする。

しかし実務の問題として「原因」を特定する技術が総じて低い。
それは、原因を「誰が」「何をした」ということに誘導しがちであるからである。
たとえば「Aさんが、決められた手順をおこなわなかった」にしてしまうと、Aさんの教育に帰着してしまう。「決められた手順で作業を行なうことができない」ことに目を向けなければ「手順の改善」に行き着かない。

■工場の事故ゼロは困難である。

あまり話題になることは少ないのだが、これがトヨタと言うことになるとニュースとして取り上げられるようだ。

○トヨタ、生産停止が拡大 18日は7工場に―取引先部品メーカー火災
2023年10月17日

中央発条によると、コイルばねを製造する工場の乾燥炉が爆発して火災が発生し、従業員2人が軽傷を負った。警察と消防が原因を調べている。爆発により建屋が損傷しており、同社は対策本部を設置し、復旧を急いでいる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023101700269&g=eco

○取引先で“爆発事故”…トヨタが16日から国内の一部工場で生産停止 豊田自動織機等と合わせ6工場10ライン
2023/10/17

 車用のバネを手がける大手取引先メーカー「中央発條」の藤岡工場で16日発生した爆発事故の影響で、バネの調達が難しくなったことが原因だということです。

https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20231017_30668

ところで、実は工場での火災などは少なくなく、特に電気系統の設備の老朽化に伴う火災などは減っていない。
https://image.sompo-rc.co.jp/reports/r227.pdf

また、周囲への大きな影響が出る場合にはともかく工場内で処置できる程度の火災や人身事故などはニュースになることはない。実体としては、「工場事故ゼロ」を叫ぼうが、起きるときには起きるし、事故は個別事情が大きいので再発防止も難しいと聞く。

■対策は三つ

(1)三大無策
パターン化された事故についての対策はすでにされているはずである。火気厳禁や電気設備の取り扱いなどは普通に行なわれているはずである。したがって(朝礼などの)周知徹底や定期的な危険予知の教育、労働安全の管理などは当然の施策になる。とはいえ再発防止にはならない。

(2)ヒヤリハット
ヒヤリハットを減らすのではない。ちょっとしたことに気がつく感性を磨くことである。常に変化に気を配ることで「危険」を「減らす」という視点で活動することである。ただし、これには「自覚」が必要になる。下記を参照して欲しい。

7.3 認識
組織は,組織の管理下で働く人々が,次の事項に関して認識をもつことを確実にしなければならない。
a) 品質方針
b) 関連する品質目標
c) パフォーマンスの向上によって得られる便益を含む,品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献(特にここ)
d) 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味

(3)プランB
ISO9001:2015の規格要求事項では扱われていないが、適切な製品・サービスが提供できなくなったときのプランBは用意しておくべきである。場合に寄ってはラインの組み替えやサプライチェーンの再構築も求められるかもしれない。さもないと、慌てることになる。

下記については準備された行動だと思いたい。

○トヨタ、生産停止が拡大 18日は7工場に―取引先部品メーカー火災
2023年10月17日

中央発条によると、コイルばねを製造する工場の乾燥炉が爆発して火災が発生し、従業員2人が軽傷を負った。警察と消防が原因を調べている。爆発により建屋が損傷しており、同社は対策本部を設置し、復旧を急いでいる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023101700269&g=eco

○中央発条、代替生産開始 コイルばね 国内外の工場で
2023/10/18

 中央発条(本社名古屋市)は17日、藤岡工場(豊田市)で発生した爆発事故を受けて、国内外の工場でコイルばねの代替生産を始めたことを明らかにした。爆発した工場の生産ラインの復旧に時間を要することから同様の設備を持つ工場で早期の生産再開を急いでいる。18日以降に順次出荷を再開する予定。

https://nordot.app/1087162473528885627

■教訓

起きるはずのないこと、起きてしまっては困ることはいずれ起きるだろうと言うことを想定しておかなければならない。未然防止も再発防止も幻想に過ぎない。

であればプランBを作ることに手を抜くことは勧められない。なぜならば、それは致命傷になる兼ねないからだ。失われたものを取り戻すことは難しい。

なぜ事故ゼロを目指すのかと問われれば「死んだ人間は生き返らないからだ」と答える。それでも、そうなったときの「プランB」は必要だ。

<2023/11/01>

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