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低賃金が払えない企業の意義(どこがおかしいのだろうか)

最低賃金が払えない企業の意義(どこがおかしいのだろうか)

■最低賃金の計算方法

最低賃金の計算方法は公開されている。

(1) 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)

(2) 日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

(3) 月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

※所定労働時間の例
年間所定労働日数は250日、1日の所定労働時間は8時間

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-13.htm

月給とは、いわゆる基本給と資格当てなどを含めた、毎月固定的に支払われる賃金(残業代や交通費などは除く)にになる。

仮に、最低賃金を1000円とすると。

月給=250×8×1000円=200,000円

になる。これは手取りではない。額面である。
これを、ボーナスが4ヶ月として年収換算すると、20×16=320万円である。
正直、新入社員か?と突っ込みたくなるほど安い。

■生産性向上は不可欠

さて、人件費が320万円として、コスト的にはその倍640万円を稼がないと会社は維持できない。この辺の数字は感覚的なものだが、最低限自分の給与分以上に稼いでくれないと困る。例えば、30人の会社であれば、事務方が数人いたとしても、年間5千万円ほどの利益が必要だ。原価率にもよるが、やはり一億円以上の売上が求められる。

こうした中で、現在用の高騰があっても元請けは値上げに応じないというのはこの国の構造的欠陥であるが嘆いても仕方ない。打つ手は3つだ。
①とにかく生産性向上
②賃金カットもしくはリストラ
③無体な取引先をカット
 即効性の高いものは②ではあるがおすすめしない。組織能力の低下を招くからだ。
 生産性向上(①)+独自製品の開発により③がおすすめだ。

■お互い努力しない労使

○最低賃金の水準に隔たり 引き上げ巡り労使
2022/7/26

厚生労働省は26日未明、2022年度最低賃金の引き上げ額を議論する中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会について、労使間で引き上げる水準に隔たりがあることを明らかにした。

https://nordot.app/924419245815398400

「上げろ」という労働者側と、「上げられない」という経営者側の意見が合うことはない。賃金を企業活動システムの中に合理的に組み込めない今の経営者に理解はできない。賃金はコストではなく投資であることを。生産機械をもったいないからと安物の機械で不良品を出すようなものだ。だから安易に以下のような議論にたどり着く。

○原材料高に苦しむ中小企業 これ以上最低賃金上がると…「人手足りないけど、雇えない」
2022年7月24日

「人手が足りないけれど、最賃が上がると採用の時給も上がって雇えない」。東京都内を中心に菓子店3店舗を運営する中小企業の男性社長(40)はため息をつく。従業員はパートら5人。小麦など原材料価格は上がり続け、包装用紙は昨年比1.5倍だ。商品の値上げを検討するが、「消費者に値上げを受け入れてもらうためにも最賃は引き上げるべきだけど、うちの経営体力がもつか綱渡りだ」と不安が尽きない。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/191451

■持続可能な世界

最低賃金という概念は必要だろう。さもなくば、どういった基準で賃金を支払うかのたががなくなるからだ。しかし、単に「払え」という枠組みだけではすまない。今の資本主義が、価値の対価を正当に流通させる仕組みにはなっていないのであれば、調整するための仕組みが必要になる。
 政府が無策というわけではない。
 下請法や不正競争防止法などでの法整備。公正取引委員会などの監視システム。ベーシックインカムの議論もしている。しかしこれだけでは不十分である。
 企業が適正な富の分配をするメカのズムを作らないと多分無理である。
 社会主義国家にしろといっているのではない。文字通り「持続可能な経済システム」を作れといっているのだ。そうした健全なシステムの設計をして少しずつ実装しなければならない。
 もっとも2000年立ってもできないのだから、同じ時間かかるかもしれない。いつかできるだろうか。

<閑話休題>


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