名人戦第三局、第四局~勝負の場に居続けるということ~

先月の敗戦は私にとって自分を見つめ直す良い機会になった。連珠の内容としてはポカなのだが、精神的にもう少し根深いものを感じ取らざるをえない。
自分はいま名人戦の挑戦手合を打っている。何のために打っているのだろうか。それはタイトルを争っているのだから言うまでもなくタイトルのためである。勝てばハッピー、負ければそれまでのことは全て水疱に帰すというわけだ・・・という考えが強かった。実際、これは事象としてはほぼ間違いのないことだろう。「負ければ全部水の泡」という部分こそ自分の勝負に対する恐怖の根源だと自覚した。今期の挑戦手合では自分比としては相当な量の練習やその他準備をしてきたという認識があった。対局することで改めて分かることだが、同じ舞台にいる相手というのは大抵自分の1.5倍から2倍くらいは少なくともやってきているものだ。その事実に直面して「ああやっぱりなぁ」という気持ちと「これを負けたら全部無駄になるかもしれない」という恐怖を感じた。それが最も悪い方向で発露したのが二局目の敗戦だった。
挑戦手合に次いつ出ることになるかは一旦置いておく。いままで連珠を通じて勝負に携わってきたことを踏まえると、これからも当面は勝負の場に居続けるのだと思う。その中で、特に重要とされる対局が来るたびにこのメンタリティではそう長くないうちに身体か心に異常をきたすだろう。この方向性からは変わる必要がある。
局後だったか、具体的にいつかは忘れたが神谷くんの話で「こういう場、こういう相手と打てるのは刺激になる」というものがあった。あぁこの人は人間が本当にできているなぁと感じた。私の方も結果はさておきこの勝負を通じて強くなっている実感があった。そうか、まずは場に居て、精一杯打ち、強くなることが大事なんだ。勝負がどちらに転ぶかは時の運。強くなることは最後には自分を裏切らない。そうだ、と。今回の番勝負は準備の段階からして非常にストレスフルな日々を過ごした。そのときはどうしてこうなるんだろうという方向にばかり考えてしまっていた。これは強くなる貴重な機会なのだ。そう思って、この場を与えていただいたことに感謝し、正面から向かう気持ちになれた。
第三局、第四局は内容としてはお互いにミスがあり、どちらが勝ってもおかしくないものだった。私としては現時点で出せる分はだいぶ出せたかと思う。もう一つの問題として、心は入れ替えられても身体は緊張しているため、ほとんど寝られないというものがあった。これは次局の課題としよう。
最終局、引き分けでは私は敗戦となるわけだが、そこに意識をとられずに打ちたい。もう一段階強くなれればと思っている。

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