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僕には夢があるんだ。

1章 僕には夢があるんだ


源 「僕は、石ころ源(げん)。
庭にころがっている石ころだ。
おむすび形のどこにもある石ころだ。
でも、僕には夢がある!
その夢を実現する話だよ!」


庭の方で何かがザワザワしている。
 耳をすますと、石ころがしゃべっています。
 「私の方がきれいよ」「俺の方が丸い」「私のくびれどう?」「俺の方が格好いいぞ」…
 石ころ達も色々な思いを持って生活しているのでした。

 仲間「源ちゃんは何を思ってるの?」
 源「う〜ん」
 源には、ある思いがありました。
 でも、まだ誰にも言ってません。
 源「僕には夢があるんだ。」
 仲間「へえ〜 なんだい、その夢は?」
 源は、思い切って言いました。
 源「川を見たいんだ!」

 一瞬みんな黙った後、ゲラゲラ笑い始めたました。
 全員「ゲラゲラ ゲラゲラ」
 仲間「源ちゃん そんなの無理だよ。俺達には足がないんだから」
 源「でも でも川に行って水に入りたいんだ。」
 仲間「こいつは変わった子だよ。 ゲラゲラ」
 仲間2「源ちゃんは可愛いね でもそんなこと言うのは子供だね!」
 源の思いは強く、毎日川の流れにいる自分を夢見ていました。

2章 無理かな

源は「川を見たい」という夢を思い続けました。
源「でも、どうすりゃあいいの? 無理かな…」
ただ、日がすぎるだけでした。


ある日、目の前をアリが横切りました。
源「アリさん アリさん 教えてくれない?」
アリ「なんだい? 石ころ 今忙しいだよ」
源「僕は夢を持ってるんだ。夢の実現する方法を知らない?」
アリ「夢? 何言ってるんだ! 仕事、仕事、仕事で俺は忙しんだ!」
「家には子供が腹を減らして待ってるんだ。」
源「大人はいつも仕事仕事と言うだよな」

今度はハチが飛んで来ました。
源「ハチさん ハチさん 夢の実現する方法を教えてくれない?」
蜂「夢? 何言ってんだ! おいらは戦いの準備をしているんだ。
 敵が攻めてくるかもしれないのに夢? 坊や何言ってんだ!
北から敵が攻めて来るんだよ!」

芋虫


今度はイモ虫がやって来ました。
何か慌てています。
源「どうしたの? イモ虫君」
芋虫「鳥が来たんだ!
 僕を食べようとしてるから逃げているんだよ!」
源「それは大変だ。僕の後ろに隠れな!


鳥がやって来ました。
鳥「美味しそうなイモ虫がこっち来なかった?」
源「来た 来たよ。あっちに行ったよ」
鳥「そうか あっちか」
鳥は飛んで行きました。
源「もう大丈夫だよ。イモ虫君」
芋虫「助かったよ。あいつに姉さんも弟も食べられっちゃた!
 お母さんに君に助けられたって言っとくよ。ありがとう!」
源「注意して行きなよ。」
芋虫「は〜い」


次の日、青いきれいなちょうちょが飛んで来ました。
蝶「ここらあたりで、私の子供を助けてくれた石ころはあなた?」
源「子供って、あのイモ虫のことかな?
 お母さんって蝶なの?」
蝶「そうなの。イモ虫はサナギになって、蝶になる
  jんですよ。
  お礼に何か願いを叶えてあげましょう。
  何か願いはありますか?」
源「僕の夢かなえてくれる?」
蝶「どんな夢?」
源「川に行き、水に入りたいんだ!」
蝶「石ころには足が無いから、無理かな?
 でもね、夢を実現するには、その「無理かな」と言う思いを無くさないとね!
 心の奥底にある「無理かな」という思いをね!」
源「どうすれば、いいの?」
蝶「夢が実現している自分をイメージするのよ。
 川の中で、すずんでいる様子をイメージするのよ!
 すごく気持ちよく、楽しくて、夢が実現したことに感謝している自分をね。
 それも夢で見るくらい何回も何回も、実現した自分を頭に描いてワクワクするのよ。」
源「へえー そうやって「無理かな?」と言う思いを消すんだね。」
蝶「そうなのよ! そうなのよ! 疑っちゃダメ! 夢を頭の中でいっぱいにしてね!
  頑張って! またね!」
源「ありがとう 僕 頑張るよ! ありがとう」
青い蝶は飛んで行きました。

源は「川の流れですずんでいる自分」を、寝てもさめても想像しました。

3章 野良君お願い


野良ね


仲良しの野良猫が遊びに来ました。
源は考えました。どうしたら連れってくれるかな…
源「そうだ! この野良くんに川へ連れて行ってもらう姿をイメージしよう! こんなかな?」
源は野良猫にまたがり、川に向かう姿をイメージしました。

野良「ああ、退屈だな…、何か面白いことない?」
源「野良くんは川を見た事ある?」
野良「もちろんあるよ、この先の小学校の横に流れてるよ。」
源「川には、水が流れているの?」
野良「そうさ、それも冷たいんだ。美味しそうな魚も居るんだぜ!」
源「へえ、すごいね!」
源は毎日毎日、野良に川のことを聞きました。
遂に野良が
野良「じゃあ、川に連れていってあげるよ。」

源「もっと大きな川がいいな。町の向こうに大きい川があるそうだよ。
  そこに連れって行ってくれないかな?」
野良「大きい道を渡らないと行けないんだ。車がビュンビュン走っていて怖いな!」
源「大丈夫! 人間について行けばいいんだよ。」
野良は一瞬考えました。
野良「よっしゃ じゃあ乗りな。」

4章 いざ出発



野良が、源を川まで連れていってくれることになりました。
源は背中にまたがり、しがみつきました。
野良は、次々と人間を追い越し、あっという間に公園に着きました。
子供に追いかけられたり、ハトをおどかしたりして公園を抜けたら、大きな通りに出ました。

大きなバスとか車が走っています。
ひかれたらペッチャンコになってしまいます。


源「落ち着いてね! あのお婆さんと一緒にわたろう。」
お婆さんは、我々に気付きました。
お婆さん「あら エライね、赤信号で待つなんて賢い猫だわ!
  さあ、一緒に渡りましょう。後ろを付いて来なさい」
野良「二ャアーン ありがとう!
  源ちゃんの言う通り、人間に付いてけば安全だね!」


通りを無事に渡り、町に入りました。
道は歩行者天国、人で一杯です。
人「あ! 猫だよ。 可愛いね!」
野良「この町を通り抜ければ、大きな川にでるよ。
    一気に走り抜けるから、しっかり握っていて!」
野良は人々の合間をかけ足で走りぬけました。
源は落ちそうになり、尻尾にしがみつきました。
あっという間に走り抜け、川原に到着しました。

野良「源ちゃん 川に着いたぞ」
源「これが川なんだ! 広いんだね。 川の中に落としてちょうだい」


野良「了解 じゃあね」 ポチャン
源「野良くん ありがとう!
 道を渡る時は、人間に付いて渡るんだよ!」
源は、川の流れの中で、心地よい水の流れを感じていました。

源は願いがかなう事を学びました。

5章 流される!


ある日、すずんでいると大つぶの雨がバチバチと水面をたたき始めました。
風がふき、空は真っくらになり、ゴロゴロ ゴロゴロ 大きな音が鳴り ピカと空が光り
水の流れがどんどん増えてきました。
源はこわくなりました。
ピカと空が光ったと同時に、バリードーン!
黒い流れがやってきて、源は浮き上がりました!
源「あー あー流される!」


真っくらな中、ゴロゴロと回転しながら流されます!
源「目がまわる!」
あっちこっちにぶつかりながら、回転して目がまわってしまいます!
夢中で何かにしがみつきました。
しがみついたのは、流木でした。
源は、はげしいしんどうで意識を失いました。

6章 これが海だ



目をさますと、源は浜にいました。
目の前は、まっ青な海とまっ青な空が広がっています
大きな波が、ザブンザブンと打ち寄せています。
休みなく波は打ちよせ、台地を飲み込もうとしているかのようです。
遠くにいくほど、海はあおくなり一本のスジになり、すきとおる青い空が続いています。
源「なんという広大な、すがすがしい大自然だ」
源はあっとうされました。
源「これが海か?どこまで続いているんだろう!」

夕ぐれ時、空は一瞬まっ赤にそまった後、暗くなりました。
薄暗くなった空にキラキラ光る宝石のような光のつぶがかがやいています。
空は星が降って来そうにかがやいています。
源「きれいな空だな! あのキラキラ光っている物は何だろう?」
亀「星だよ」
源は、その声にビックリして振り返りました。
声の主は、うみ亀でした。


源「ホシっていうの?」
亀「そうだよ。 遠〜い遠〜い宇宙にある星だよ」
源は亀から、海はとても広く、海の向こうに大陸があり、この地は地球であり球体であることを教わりました。
亀は、物知りで、毎晩毎晩、海のこと、空のこと、星のこと、宇宙のことを教えました。
源は、大空にかがやく星空を見上げ、その美しさに見とれました。
源「何という美しい空なんだ!
  あの星に行きたい! どうすれば行けるかな?」
亀「そりゃ無理だよ。すごく遠いんだよ。
  あの北極星までの距離は、なんと431光年だよ。」
源「光年?」
亀「世の中で一番早い光のスピードで行っても、431年かかるだよ。」
源「光のスピードって?」
亀「光は秒速30万キロ、1秒間に地球を7周半しちゃうんだよ。
  一番近いのが、あの大きな月だよ。あそこまで38万キロで、人間が行ったことがあるんだよ。でもね、ロケットでも4日かかっただよ。」
源「へ〜 あそこまで人間は行ったんだね!」
それから、源は月を見上げ、行ってみたいと思いました。

7章 出会い


春が終わり、夏も終わり、秋が来た時のころでした。
浜辺に、見覚えのある青い蝶がやって来ました。
夢実現の方法を教えてくれたあの青い蝶です!
青い蝶を追って、おさない子が寄って来ました。


青い蝶は、源の上にとまりました。
追ってきた子供は、源をつかみ上げました。
なお「ママきれいな石見つけたよ! 目がついてるみたい。」
その子は、源をポケットに入れました。
子供は家に帰ると、源を机の上に置きました。
なお「きれいな石だね。私はなおこ。今日から、あなたは私のお守りだよ。」

その日から、なおちゃんは石ころ源の夢を見るようになりました。
夢の中で、源はなおちゃんと宇宙に飛び出し、月を一周したり、火星の輪をくぐったりして遊びました。
そして亀さんに教わった地球のこと、天体のことを、なおちゃんに教えました。
なお「源ちゃんが、“月はどうして落ちてこないの?”なんて言うから、夏休みをつぶして、調べたっけね!」
源「そう、引力とか地球が回っていること!」
なお「その地球の周りを月が回っていて、
  その遠心力で落ちてこないんだよね!
  源ちゃん 宇宙って面白いね! 重力の原理もわかって
  いないし、まだまだ分からないことだらけなんだね。」

勉強


源「そうなんだよ。勉強すればする程、分からないことが出てくるね!」
なお「源ちゃんといっしょに勉強しようね。もっともっと勉強して、源ちゃんと宇宙に行きたいわ!」
源「一緒に宇宙に行きたいね!
  僕、夢をかなえる方法知っているよ。」
なお「え〜 なにそれ?」
源「一緒に宇宙にいることをイメージするんだ! なんどもなんどもね。」
なお「へ〜」
源「自分には、無理と思っちゃダメだよ! 夢の実現が、自然と思えるぐらい何回もイメージするんだ。」
なお「いいかも〜 紙に書いて机の上に貼って、宇宙にいることイメージするわ。」
源「一緒に無重力でフワフワ浮いている姿をね。」
なおと源「ハハハ!」
二人は、毎日宇宙のことを勉強しました。

8章 宇宙に飛び立つ


なおちゃんは、大学で航空宇宙工学を学び、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に勤め、宇宙飛行士になりました。
宇宙に行くことが、現実になったのです。


なおちゃんは、今、宇宙に出発のためロケットに乗ってます。
いよいよロケットは発射、なおちゃんはポケットの中で石ころ源を握っています。
なお「源ちゃん 私を守って。」
源「大丈夫 いつも一緒だよ!」



無事大気圏外に出て、石ころ源を窓に置きました。
源「わあ〜 宇宙だ! きれいだな…  あれが地球かな。」
窓からは、だんだん小さくなる青く光る地球が見えます。

なかま


ここは、源のいた庭です。
源のなかまたちは、月を見上げています。
仲間「源ちゃんが、あそこに行ったんだって!」
全員「すごいんね〜」
仲間「俺たちは、手も足もないから、しょせん何もできないと思っていた。
でも違うだね、俺でも夢を持っていいんだね!」
仲間「おいらも夢もとう」
全員「もとう もとう」

石ころ源は、大きな大きな夢をかなえたのでした。 

        完



あとがき
この物語は、劇団おかげさまで演じる寸劇の脚本です。

著者 大隅裕 h-osumi@colorbasket.org
監修 チームおかげさま

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