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銭湯巡礼記⑨~【閉館】東京都稲城市「よみうりランド丘の湯」(24年1月)

思い出深い「よみうりランド丘の湯」さんが、2024年の1月8日をもって20年の営業を終えた。最後のお別れに家族で訪問。

目の前がよみうりランドなので大観覧車が眼前に。日中の仕事を終えてからだといつも宵からしか来られなくて、そのたびに遊園地に入りたがる娘を「今日は遅くなっちゃったから、別の日に来ようね」となだめながら、結局、遊園地には1度も入らずに、この「丘の湯」最終訪問日を迎えてしまった。そしてこの日も遊園地には入らず。

「丘の湯」さんは我が家にとって、それぞれの1年の労をねぎらう忘年会か、もしくは年末年始の繁忙期をなんとか乗り切った新年会の会場であって、なので訪問は年に1,2回ではあったものの、大事な場所なのだった。こうして(上写真)エントランスにちゃんと門松が飾ってあって「あぁ新年だな」と感じさせてくれて、内装も季節のあつらえをしてあって、歳時記を感じられる場所なのだった。

内湯も外湯も湯船の数が豊富で、浅いのから深いのから打たせ湯やらなにやら、まだ小さかった娘と何度この風呂で冒険をしただろうか。サウナを怖がって入らなかったのも懐かしい。

館内もこの日は閉館を惜しむ客でにぎわっていた。住職はここの蕎麦が好きで、母はここのマッサージが好きだった。風呂上りに待ち合わせをしてすっぴんの家族たちがご飯を食べている光景って、すごーくいいよね。みんな支えあって生きてるって感じが、そんな高尚なものじゃなくて、みんなそれぞれの人生で生活をしてる、って感じが、すごーくよかった。「丘の湯」さんはその受け皿になってた。

われわれ家族は、ここの蕎麦もさておき、隣の建物の2階に入っている「天安」さんで食事をするのがちょっとした贅沢なのだった。高台で見晴らし抜群の2階からは、夜イルミネーションをまとった遊園地がよく見えて、光って滑り降りていくジェットコースターを眺めながら、火のショーを遠くから眺めながら、窓側の円卓で中華料理を食べる。それが幸せなのだった。

「丘の湯」さんが閉店すると、すぐそばに新しい施設がオープンするとのこと。HPを覗くと入館料も食事もとても高くて、あぁお風呂屋さんに来るというのは庶民の憩いの時間ではなくて、もはやエンタメとして消費されるものになったんだなと寂しい気持ちに。

【閉館】よみうりランド 丘の湯
東京都 稲城市 矢野口3302-8
TEL:044-969-1126

家族ができてからも、独身の頃も、ここは憩いの場所だった。露天風呂にTVがあってバラエティ番組を流しているのだけがイマイチだったけれど、だって見上げると星が見えるんだから。日常の煩わしさを忘れてほんのひととき非日常を味わうのに大型TVは無粋で、ただ、静かに星を見上げるような、曇り空でも雨空でも「うぅ寒い」などと呟きながら夜空を見上げてぼーっと出来るような、そんな時間がたまに無性に欲しくなって、TVの音さえ気にしなければ、ここの露天風呂ではそれが可能なのだった。

このお風呂のおかげで活力をもらってきた事は疑いようがなくて。

「丘の湯」さん、本当に永い間ありがとうございました。

満足度:★★★★★

<了>

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