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映画レビュー:22年11月の9本

あなたの顔の前に
(2021年/韓国/ホン・サンス監督)

従来観慣れた映画ならズームアップしてくだろう画を、逆にズームアウトしていく。ことごとく逆を行くので、生理的に腑に落ちずに、フワフワと何が描かれているんだかよく解らなくなる。この画作りは特殊効果だと思う。終盤、安い不倫映画みたいになりそうなのに、際際でならない、このバランス感覚なんなんだと慄く。

イントロダクション
(2020年/韓国/ホン・サンス監督)

いま私は何を見せられてるんだろう、、?あ、これデカローグだ、と気付く。つまんなさと退屈さの中に一瞬、興味深さが現れる。釣堀で釣りしてるような感覚に。

ヒューマン・ボイス
(2020年/スペイン/ペドロ・アルモドバル監督)

30分あっという間に終わる、ティルダ・スウィントンの独壇場。セットの骨組みを上から映したり、舞台芝居っぽくて(そりゃそうだ)新鮮。エンドロールで物凄い人数のスタッフが関わっている事に驚く。

パラレル・マザーズ
(2021年/スペイン・フランス/ペドロ・アルモドバル監督)

ペネロペ・クルスで眼福してるうちにいつの間にか主人公が入れ替わっていて、愛憎劇かと思ったらいつの間にか真剣な社会派問題提起にスイッチしている。前面に出ていたものが背景になり、背景のように触れられていた事柄が前面に出てきている。そのパラレル切り替わりがものすごく見事。僕のようにペネロペ・クルス目当てで鑑賞した客が、がっつりスペイン内戦について勉強したもんね。映画というメディアをうまく使っている。

すずめの戸締り
(2022年/日本/新海誠監督)

泣きすぎて声が出ました。別で詳しく(予定)。

モダン・タイムス
(1936年/アメリカ/チャールズ・チャップリン監督)

「フォーエバー・チャップリン ~チャールズ・チャップリン映画祭~」にて鑑賞。20年ぶりぐらいに観たけれど、やっぱりチャップリンにはいつも品がある。観て豊かな気持ちになる、映画史に残る一本だなと改めて。

マリー・ミー
(2022年/アメリカ/カット・コイロ監督)

飯田橋ギンレイホールが48年の歴史に幕。最終上映がこれ。ジェニファー・ロペスのLove Don't Cost a Thingが街中で流れていた時から今年でちょうど20年!!ジェニファー・ロペスがずっとジェニファー・ロペスのままで、強い。泣けた。ギンレイホールはあんまり個人的に響くセレクトが無かったので数回しか来なかったけれど、閉館となると残念。レンガ造りとかトイレが下階にある不便さとか、ユニバーサルデザイン以前の昭和の建築に趣きがあって嫌いじゃなかった。48年間ご苦労様でした。

ブラックパンサー
(2018年/アメリカ/ライアン・クーグラー監督)

チャドウィック・ボーズマンの存在が今作を「ただのマーベル・シネマティック・ユニバースのうちの1本」から、独立した意義深い文脈を持たせた。国王ティ・チャラ、いや、チャドウィック・ボーズマンが偉大。けれど内容は、、どんなに文明が進んでも最後は武力なのかなと、その描かれ方の稚拙さに切なくなる。劇場公開当事に長崎で観た時よりも今回(2回目)の方がそれを顕著に感じたなぁ。音楽は良い。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
(2022年/アメリカ/ライアン・クーグラー監督)

やはりチャドウィック・ボーズマンの存在が前作を神作に押し上げていただけで、不在になった途端に残念な作品に。。国王ティ・チャラ亡き後、製作陣が苦慮しまくった様子は伺えるんだけれど、それでもやっぱりドーン!バーン!ガシャーン!USA!の脳みそ使わないパカーン作品(マーベル)なので、正直お粗末すぎる。ティ・チャラが公人であることと私人であることをふまえて国を統治したのに、ブラコンの未熟な妹が「私が好きだったのは国王じゃなくて救世主じゃなくてお兄ちゃん!」とのたまってピンチを招く。この未熟さを主題に据えるあたりが、皇位継承とか王位継承といったものも無い、歴史の浅いアメリカの陳腐さなんだよ。

<了>

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