「聞く」と「聴く」は違う ~ LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる
「聞く：hearing」と「聴く：listening」の違いはどのようなものだろう。
本書ではListen（聴く）とはどういったことなのか
聴くとは、相手の話している内容に全神経を集中させ、かつ、自分の考えを脇に置いて相手の思いを汲み取っている状態。
私たちは基本的に人の話を聞きながら、自分の解釈を考えたり別のことを考えたりしてしまう。
それは、聞いているが、聴いていないのである。
相手の言葉の裏の感情や本音、何で私に話したのか、そもそも相手が自分で気づいていない内容を聞き出してこそ、聴けている、というのが本書の内容。
500ページあるが、コラム形式なので、サクサク読める。色んな角度から聴くことの重要性を説いており、山のようにポイントがある。その中で印象に残った内容をまとめる。そのため、以下は私の自戒のメモに近くなる。
哲学者エピクテトス
「自然は人間に、舌一つと耳二つを与えた。自分が話すその倍は、人の話を聞くように」
①誤りを正そうと思い批判してしまう
①は一生懸命に聞いた場合にもやりがちな失敗。相談された時に、「間違っている、こうした方がいい！」とアドバイスをしてしまうことは多々ある。
アドバイスをした側は、いいことをした、と満足するかもしれないけど、アドバイスをされた側はあまり響かない。
逆に批判されることで、今の状況や意思決定が間違っていないという弁明をしはじめてしまい、逆効果になる。
本人の判断を変えることができるのは、本人だけである。聴き手ができるのは、オープンで正直な質問（自分の意図に持っていこうとしない）を通じて、相手自身が気づき、行動を変えることである。
②「なぜ？」と直接的に理由を聞く
なぜ？なにが？どうやって？という直接的な質問はされた側を身構えさせてしまう。聞いた側にそのつもりがないにせよ、心理的な隔たりが生まれてしまう。
聞き方を気を付ける。できるだけ体験に沿った質問をし、その場面に入り込んで考えを聴くのがいい質問アプローチ。
私は、結構直接的に聞いてしまうので、気を付ける。直接的に聞くという行為は聞き手が楽をしているだけで、話し手のことを考えていないというケースがほとんど。
③人の会話を「ずらす」、自分の知っている話にすり替える
人が投げかけた会話に対して、若干話題をずらして自分が話したい内容にする。
Aさん：「エヴァの新作面白かったよ。」
Bさん：「私アニメ映画全然見ないんだよね。この前Netflixで見た全裸監督面白かったよ。」
これに似たやり取りはしばし見かける。このシーンでは同じ映画の話題を扱っているけど、Aさんの投げかけに対しBさんは自分が話したい映画の話題にずらしている。
話は続くけど、Bさんと話すとなんかしっくりこない、信頼できないなとなってしまう。
ここでは、人があなたに話すのには理由があるので、まず相手の話を受け止める。相手の気持ちのコップを満たすことが重要。
そのため、「Aさんはなぜ私にこの話をしたのだろう」「Aさんは今どんな気持ちなんだろう」ということを考えてみることから始める必要がある。
④近しい人のことをわかった気になる
①～③と違い、より近しい人（家族や親友）であればあるほど、自分がその人のことを聞かなくてもわかっている気になってしまう。
過去時点と現時点では、人間が感じていることや考えていることは変わっていく。なので、近しい人であればあるほど、頻繁に連絡を取って話を聴く必要がある。
以下心構え
第一に、疲れた時は聴けないということ
聴く時間が長いと疲れる、なので自分の限界を知り、聴けないときは無理をしない。中途半端に聴くことしかできないと、結果として相手を傷つけてしまう。知的・精神的に元気がないから聴かないという選択肢も非常に重要。
第二に、すべての人の話を聴く必要はないこと
話を聴きたい人を選ぶことができるようになるのも聴く力。ただし、最初から「この人の話を聴く必要はない」というバイアスはかけない
第三に、自分にも先入観があると心得ること
人間は先入観を持ってしまう。知らない人と話すときは特にその先入観によるラベリングを強く行ってしまう。他人の世界観を理解したいという好奇心を持って聴くこと
第四に、聴くことを鍛えること
注意深く聴く能力は鍛えることができる、注意深く読む能力と同じ。最初の頃は難しいかもしれないが、取り組むうちにできるようになっていく。
また、自分の思考のクセや弱さを理解すること。
自分が間違った判断をしてしまう時、人の話を聴けなくなった時に自分がどんな問題を持っていたか、など。
最後に、自分が聴いてもらう時間を作ること
人が聴いてもらうことを求めているように、自分自身も聴いてもらう時間が必要。聴いてもらわないで聴き続けると絶対パンクする。
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