【ショートショート】夢の中だから (1,620文字)
「キャー!」
悲鳴が聞こえて瞳を開けると俺はバスに乗っていた。一番奥の角に陣取り、窓ガラスに体重を預けて、どうやら長いこと眠っていたらしい。顎がやたらと痛かった。
外は爽やかに明るかった。なにがなんだかわからなかった。というのも、俺はさっきまで忘年会で気持ちよく酒を飲んでいたはずで、なぜ、自分がこんなところにいるのか、まったく思い出せなかった。
本当はあれこれ悩みたかったが、前の方から、
「黙れ。殺すぞ。静かにしろ」
と、興奮した男の怒声が響き渡って、そんな