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2023年の短歌活動ふりかえり

2023年ももうすぐ終わりですね。間違いなく人生で一番いい1年でした。この1年のためにこれまでの32年があったんじゃないかと思うくらいでした。

もともと2月に『57577ゴーシチゴーシチシチ きらきら青春編』の発売予定があったので、去年のうちから今年に期待はしていました。人生で2回も短歌のゲームを出版できるなんてほんとうに恵まれています。
自分でゲームを作って自分で売るのも楽しいですが(※私は短歌以外にもゲームをたくさん作っています)、ゲームは短歌と違って「作者」の概念が薄いです。自分で作って売るときは「作者」の存在感はまだあるのですが、57577を遊んでいる人の9割以上は私のことを知らないでしょう。
逆に言えば私のことを知らない人にまで届くのが出版のすごさで、出版社の方や取扱店舗の方にほんとうに感謝しています。

1月は『短歌同人誌ジングル』の連作がぜんぜんできないことにかなり悩んでいました。20首の連作がぜんぜんうまくできず、200首近くの短歌を作りました。ジングルのメンバー(貝澤駿一さん、志賀玲太さん、橋爪志保さん)はみんな良い短歌をつくるので、私だけがダメだったらどうしよう、と毎日不安でした。
迫り来る確定申告と同人誌の組版の期限から逃れるようにTHE FIRST SLAM DUNKを観に行ったあと、急速に連作のテーマがかたまって、最終的には納得のいく連作ができました。
このあと「自分は映画を観れば短歌が作れる特殊体質なのかも……」とおもってブルージャイアントと劇場版ドラえもんを立て続けに観た結果、そういう特殊体質ではないことはわかりました(映画はどっちも最高でした)。
『短歌同人誌ジングル』は橋爪さんの通販から買えるのでまだ読んでいない方はよろしくお願いします。


『57577ゴーシチゴーシチシチ きらきら青春編』の告知解禁日の前日、ハルカトミユキのハルカさんから連絡が来ました。ハルカトミユキは私が世界で一番好きなミュージシャンで、ハルカさんは私が短歌をはじめたきっかけで、私が世界で一番尊敬する人間です(ちなみに私が世界で一番憧れているのがミユキさんです)。

短歌のワークショップをやりたいということでいろいろ調べているうちに私が運営しているTANKANESSの短歌ワークショップの記事を見つけてくださったそうです……そんなことあります……? もちろんハルカさんがきっかけで私が短歌をはじめたことはハルカさんに何度も伝えてましたが、それにしてもそんなことあります……?!ということで、その日からずっと夢のなかにいます。このイベントの話が今年1番のトピックなのであとで書きます。

『57577ゴーシチゴーシチシチ きらきら青春編』発売後は、前作を遊んでいただいたふぉ〜ゆ〜さんに再びLINE LIVEで遊んでいただいたり、前作の『57577ゴーシチゴーシチシチ』が増刷(6刷)したりしました。ふつうならこれだけでもかなり良い1年と言えたレベルです。5月の文学フリマ東京で発売した『短歌同人誌ジングル』も発売後はたくさんの方に読んでもらえて、いろいろ嬉しい感想もいただきました。

9月の文学フリマ大阪で谷じゃこさんとの共同企画の『わりかしワンダーランド』を発売しました(通販でも買えます)。「大阪」に関するアンソロジーで、大阪の人をたくさん集めて、短歌・俳句・川柳・エッセイなどを掲載しています。これもめちゃくちゃ好評で嬉しかったです。これはあとがきにも書きましたが、AwichのRASEN in OKINAWALONGINESS REMIXからインスパイアされた企画です。YouTubeでMVを見てください。

宇野なずきさんの『最初からやり直してください』のリメイク版(私が表紙をデザインしました)発売を記念して、コラボフリーペーパー「最初から騒がしすぎる」を作りました。宇野なずきさんは私が好きな歌人を5人あげるときに毎回入れている大好きな歌人です。
以前、私が最初の私家版歌集『ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる』を発売したときに宇野なずきさんの『最初からやり直してください』がすでに発売されていて、当時もコラボの予定がありました。
ふたつのタイトルを組み合わせた『最初から騒がしすぎる』または『ふるさとからやり直してください』という最高の2択のタイトルだけが生まれて結局実現しなかったので、今年改めて実現できて嬉しかったです。

ほかにも、丸山萌さんと好きな音楽のプレイリストを交換して短歌をつくる共同企画「ホットケーキミクスチャー」や、四国キャラバン歌会でお会いした田丸まひるさんさんとエッセイを交換して短歌を作る共同企画「サイダーとアイス01」もありました。どちらも他の人から受け取ったものを自分なりに解釈してアウトプットする形だったのがかなり楽しかったです。どちらもnoteで読めるのでよろしくお願いします。

季刊の短歌同人誌『西瓜』に連作5首を毎回投稿しはじめて、江戸雪さんと野田かおりさんにそれぞれ「優」をいただきました。4回出して必ず誰かから言及していただきました。これまで新人賞にも投稿欄にもほとんど出していなかったのですが、西瓜の投稿はかなり自信になりました。来年も出し続けます。

あとは「カクヨム短歌コンテスト」(20首)に出したりヨミアウ内の「連作談義」(7首)に出したり、たにゆめ杯(10首)も出しました。
笹井宏之賞(50首)とあたらしい歌集選考会(100首 ※既発表作込み)にも出しました。4月〜8月は9月のイベントの告知をするために、毎週のように歌会に行ったり開催したり、好きな短歌の評を毎日ノートに書いたりしていました。

来年は2月15〜27日に大阪の中津にあるレトロ印刷JAMのギャラリーで、短歌同人ジングルに写真家の木村華子さんを加えた「ジングル+」による展示、「4×4FRAMES」を予定しています。作品はもう完成しています。
木村さんの写真も私たちの短歌もめちゃくちゃ良いのでよろしくお願いします。2週間あるので遠方の方もぜひこの期間に関西に遊びにきてください。
もうすぐ詳細が出ると思います。

2013年11月にハルカトミユキに出会って、2014年6月ハルカトミユキのライブの物販ではじめて歌集を買って、8月に短歌をはじめて、9月にはじめて歌会を開催してからずいぶん経ちましたが、今年ようやく短歌に対して本気だったと思います。
2月にハルカさんから声がかかった瞬間から、ずっと全力でした。
「自分はどうせこのあたりまでしかできんやろ」とおもっていた限界のレベルがどんどん上がっていって、「自分はまだこんなにできるんや」って思えました。
夢が叶ったあとはそんな気持ちも消えちゃうんかな、とか、燃え尽きて逆に何もできんくなるんちゃうかなとか、いろんなことが不安でした。夢が叶うまえはいろんなことがかなり怖かったけど、終わってからも私の全力は加速するだけでした。

この1年、イベントに本気すぎて仕事がおろそかになっていたはずなのになぜか査定があがっていました。イベントへの情熱の余波で仕事も頑張れていたっぽいです。たしかに今年は会社のために自分のできることを毎日探していた気がします。「自分にできることぜんぶやる」はイベント中ずっと考えていたことなので、それで仕事まで頑張れたのはマジでありがたいです。
今年、全力の私が作った600首の短歌が、たぶん来年もこのペースで作り続けたら生まれていくあたらしい数百首の短歌が、なんらかの形で結果を残せればいいなって、今はそのことしか考えてないです。

2023年9月16日、9月17日に開催された短歌と音楽のイベント、「おんなじことを何度もうたう」のことを、私は死ぬまで覚えてるんだろうな、と思います。走馬灯のなかで一番たくさん時間を使って再生すると思います。

世界で一番尊敬する人から声がかかって、半年間打ち合わせしながら一緒に企画ができて、世界で一番尊敬する人と世界で一番憧れている人にワークショップで自分の作ったゲームを遊んでもらって、世界で一番好きなミュージシャンのライブのあとに世界で一番尊敬する人のトークセッションの司会ができるなんて、身に余りすぎる光栄で、思い描いた以上の夢です。短歌をはじめた頃から自分のイベントにハルカトミユキを呼んでライブしてほしいって思ってたし言ってきたけど、さすがにここまでは想像してなかったです。

一緒に企画をした牛隆佑さんと奈良絵里子さん、葉ね文庫の池上さんは私が短歌をはじめた頃から付き合いのある大好きな人たちなので、大好きな人たちと一緒に夢を叶えられたのも嬉しかったです。
これからどんなことがあっても、2023年の9月に私が夢を叶えたという事実が絶対に揺るがない。それは一生私の誇りで、精神の支柱です。

とはいえ私は企画側の人間で、今回の主役はハルカさんと藤宮若菜さんでした。藤宮さんからハルカさんへの愛情は私の数百倍とかじゃ足りないレベルなので、藤宮さんを誘ったのは私ですが、マジでずっとおめでとうって思ってます。
藤宮さんに対しては本気でそう思えるけど、自分に対しては「私なんかが夢を叶えてよかったのか?」という気持ちもありました。私は短歌をはじめてからずっと短歌を楽しんできたけど、ずっと作歌に対しては適当で、いい加減で、へらへらしてて、実力もありませんし、評価もほとんどされてません。
短歌の企画者やワークショップデザイナーとしての自信はありますが、評価をされるのはいつも企画力と行動力なので、歌人としての自信は全くないです。イベントの準備が進むにつれてそのことがずっと気がかりになって、夢を見ているあいだも、夢を叶えたあともずっとそれを考えていました。

だからそれを払拭するために、めちゃくちゃ短歌を詠むことにしました。

来年は短歌研究新人賞と角川短歌賞と笹井宏之賞と現代短歌社賞と歌壇賞ととあたらしい歌集選考会に出す予定です。他になにか出すべきものがあったら教えてください。これまで9年間でほとんど新人賞なんか出してなかったのに急にぜんぶやりすぎやろって感じですが、絶対にやります。いつもこういう決意表明っぽいことをしてはまともに叶えられず、そのたびに自分のことが嫌いになってきましたが、今回はすでに1月の短歌研究新人賞と7月の笹井宏之賞の連作がほとんどできているので間に合うと思います。出すだけなら誰にでもできますが、その誰にでもできることをずっとサボってきたから、今からぜんぶやります。

ハルカさんがいなければ短歌をはじめてないし、ハルカさんの歌集を買えたのはミユキさんが「かたくてやわらかい」というすごい曲(主旋律が2つある)を作って、それを見るために名古屋にひとりで遠征したからです。ミユキさんがハルカさんの歌集に出会わせてくれたから、2人とも私の恩人です。

12月14日にハルカトミユキの11周年ライブがあって、リクエストした「かたくてやわらかい」を演奏してくれました。前に生で聴いたのは歌集を買った日だったので、歌人になってはじめて生で「かたくてやわらかい」を聴けました。聴きながらこんなに遠くまで私を連れてきてくれてありがとうございます、とずっと思ってました。

私はずっと、ハルカトミユキと出会えなかった世界線の私のために短歌をやってきました。TANKANESSもミソヒトサジもゴーシチゴーシチシチも短歌ワークショップも、ハルカトミユキと出会えなかったかもしれない私が振り向いてくれるかもしれないと思って考えた企画です。2人がいなければこんな景色は見れなかったし、2人と出会わなかった私はきっと今も理由のわからない苦しみのなかにいると思います。(もちろん夢が叶った今の私のなかにも苦しさや怒りはあるし、それはどんだけ夢を叶えても消えないし消す必要もないです。)

これまでは企画やゲームやワークショップやwebメディアでしかそういう私のために頑張ってこれなかったけど、これからはそういう私のために、良い短歌を作ります。短歌で昔の私を振り向かせます。
1年で600首も作ったらさすがに自信がついてきて、最近はじめて本気で、自分の短歌めっちゃいいな、と思えました。
この気持ちのまま、これからどこまでも行きたいです。自信を持って、いつか歌人として2人の前に立てる日まで頑張ります。

2023年、33年間生きてきて1番強く「生きててよかった」って思えたし、33年間生きてきてはじめて「今はまだ死にたくない」って思っています。
2024年も、私と私が作る短歌をよろしくお願いいたします。

人生はまだ続くけど今だけはクランクアップみたいに笑う

なべとびすこ私家版歌集『クランクアップ』


【追記】
このnoteを書き終えてから発表された「たにゆめ杯4」であの井さんの個人賞「えんがわのかがやき賞」をいただいていました。ありがとうございました。


サポートいただいた分はTANKANESSの運営費など、全て短歌のために使用します。サポートいただけると本当に助かります。