見出し画像

「対話型検討会ネットワーク」いざ出陣!in京都

講演会で座談会?!
自分たちの言葉で語る
楽しくてつらい(?)対話型検討会
モヤモヤの心地よさ
対話型検討会をするようになって変わったこと
対話×省察

 はじめまして!教職大学院M2のほなみです!
 今回は2020年2月15日に開催された京都連合教職大学院主催のフォーラム「院生の学びから考える新しい教職大学院の構想」の様子を、フォーラムに参加した私の感想を中心にレポートしていきます。

2019年度実践報告フォーラム A4チラシ 表

講演会で座談会?!
 今回お招きいただいたフォーラムでは「授業をめぐる省察と対話のあり方を教職大学院から変える」というタイトルで、「対話型検討会ネットワーク」のリーダーである渡辺貴裕先生が講演を行いました。講演ではこれまで私たちが取り組んできた対話型模擬授業検討会を中心に、「省察」や「対話」に関する学芸大での取り組みを紹介。フォーラムでは京教大の院生や先生方がこれまでの学びや取り組みを発表する場もあり、互いの大学院の取り組みのよさを吸収し、教職大学院という学びの場をよりブラッシュアップしていこうという意識が強く表れているフォーラムでした。

画像2

 私たち院生2名は、渡辺先生の講演の中で5分程度、「対話型検討会ネットワーク」が作成した『院生が答える! 対話型模擬授業検討会Q&A』に関する発表をする予定だったのですが、なんと前日に「講演のあとにプチ座談会をしよう!」と渡辺先生に提案され、急遽ステージに上がって座談会をすることになりました...!

自分たちの言葉で語る
 「対話型検討会ネットワーク」のメンバーが京教大に招いていただくのは、実は今回が2回目。2019年の夏から京教大との交流が始まり、秋には京教大で対話型模擬授業検討会の実演を行いました。その後、京教大などの学外で活動したことをもとに作成したのが『院生が答える! 対話型模擬授業検討会Q&A』です。今回のフォーラムでも配布し大好評の声をいただきました。

画像4

 この冊子を作成する上で大切にしたことは、「自分たちの言葉で語ること」。「これが正しい」「こうすべきだ」という正解のない対話型模擬授業検討会について、大学院での学びの軌跡を振り返りながら、自分たちの経験や感覚を自分たちの言葉で語っていきました。
 今回、プチ座談会の時間を設けたのもそんな「自分の言葉で語ること」を大切にしたいという思いがあったそうです。発表用に用意した言葉を語るのではなく、その場で考え感じたことをリアルタイムで語る。これまで対話型検討会を通して「省察」について学んできた院生の生の声を届けることがプチ座談会で目指されたことでした。
 フォーラムのような場所で発表をしたことがない、ましてや座談会なんてやったこともない!どうしよう!という焦りや不安を抱えた状態で臨んだ私でしたが、いざ壇上に出てみるとその場で思ったことをポロっと話していました。大勢の参加者の皆さんの前ではあるものの、いつもの対話型検討会のように話せたように感じます。その場で感じたことや考えたことを「自分の言葉で語ること」ができたのは、これまで取り組んでいた対話型検討会で鍛えられた成果かもしれません。

楽しくてつらい(?)対話型検討会
 プチ座談会では、はじめに講演の感想や対話型検討会に関する考えを話す場面がありました。そのときに院生二人が話したのは「対話型模擬授業検討会は楽しそうに見えるけど意外とつらい」というものでした。
 対話型模擬授業検討会を見た方からよく言われることの一つが「皆さん楽しく仲良くやっていていいですね」というものです。たしかに、柔らかくフラットな雰囲気で対話型模擬授業検討会は進んでいきますし、私自身、話したり聞いたりしながら話を深めていくことが好きなので、対話をしながら進めていくのは楽しいです。
 しかし、私は授業者として参加しても、学習者として参加したとしても、「自分は何を感じていたのか、何を考えていたのか」ということを常に問い続けなければならない場でもあると思います。この問い続け言語化し続けるということが結構大変です。特に授業者として参加したときは「なぜこの活動を取り入れたのか」「模擬授業で現れた学習者の姿は、この授業で目指す学習者像と一致していたのか」など、自身の指導観や授業観、教育観を見つめなければならなくなることが多くあります。自分自身がきちんと考えずに授業をしてしまっていたことを突きつけられる瞬間はヒヤッとするものです。一緒に登壇した院生の三塚平さんは「自分が考えたり当たり前だと思っていたことが、ひっくりかえってしまう瞬間がある。いいことではあるけど、根本から見直さなくてはならないので結構つらい」というように話をしていました。

モヤモヤの心地よさ
 プチ座談会の冒頭でのこの話を受けて、参加者の方から「『対話型模擬授業検討会がつらい』という話があったが、そのつらさはどう乗り越えているのか?」という質問がありました。
 そのときにはうまく答えることができませんでしたが、今考えると「乗り越えられていないし、乗り越えようともしていなかった」という回答になるのではないかと思います。
 以前メンバーと話していたときに、「対話型模擬授業検討会は宿題を持ち帰る検討会だ」という話が出てきました。私たちは対話型模擬授業検討会を、明日の授業改善のための検討会というよりは、自分自身の教育観などを問い直す検討会であると考えています。ですので、今振り返るとある意味、答えや方向性を見出すという「乗り越えること」に執着していなかったのではないかと思います。何か乗り越えてすっきりするよりも、モヤモヤを持ち帰るという感覚のほうが対話型検討会では強くあります。モヤモヤしているのが当たり前だったので、乗り越えるという感覚や乗り越えよう(すっきりしよう)という気持ちで臨んだことがなかったことに気づきました。
 モヤモヤを持ち帰って、自分でまた問い直す。一人で考えるだけでなく周りの仲間とさらに対話しながら深めていく。それらの繰り返しをすることで、自分自身と向き合い、教育観や指導観などに対する考えを深めることができるのではないかと思います。きっと確固たる自分の教育観を確立させるのには何十年もかかるだろうし、もしかしたらずっと確立できないものかもしれない。そのような、教職人生をかけて考え続けなければならないことに、突然はっと気づかされるのが対話型検討会なのだと思いました。対話型検討会ではたしかにつらいと思う瞬間はあるけれど、そこで解決できないモヤモヤを持ち帰って、自分の中で温めたりこねくり回すのが結構面白いなと最近感じています。対話型検討会の後、すっきりしている方がそわそわしてしまうというか、自分の課題を乗り越えてすっきりするよりも、モヤモヤしているほうが心地よいという感覚でしょうか。モヤモヤという自身の変化の過程を味わっているような感じです。

画像5

対話型検討会をするようになって変わったこと
 プチ座談会の中で印象に残っているのは「対話型検討会を通して変わったことはあったか?」というものです。私が話したのは、「授業者の先生とのやりとりが変わった」ということでした。対話型検討会を通して、授業の見方や問いの持ち方など様々なことが変化したと感じていますが、その中でも実感が大きかったものがやり取りの変化でした。
 授業見学をさせていただく際、私はよく「授業後何を質問しよう」「研究会では何を発言しよう」などと、授業後に何を聞くか考えながら授業を見学することが多くありました。せっかく見学させていただいたのだし、何か質問をしないといけないと勝手に思っていた部分もあると思います。授業を見学した後そのまま帰るのは、自分で自分の学びの機会を手放してしまっているように感じていて、何を質問するか絞り出していたことが多くありました。
 対話型検討会をしていくうちに、授業の見方が変わっていきました。授業者の発言や動き、時間配分を追ったり、学習者の様子を観察したりするのではなく、自分が学習者として授業と向き合うようになりました。授業見学の際は、手持ちのバインダーに8つの問いを書きながら学習者として感じたことや考えたことをメモするようになりました。すると、授業を見学していてどんどん気になる部分が出てくるようになったのです。「ここもう少し考えたかったな~」「もっと友達の考えを聞きたい」など学習者のWantが出てくるようになりました。対話型検討会で使っていた8つの問いを使用することで、これまで絞り出すようにしていたことが楽にできるようになりました。また、授業後、見学させていただいた先生に時間を取っていただくことができた際には、「あのときもう少し考えたいな~って思ったんです」「このときはわくわくしたんですけど、急にわからなくなってしまって...」など、私が学習者として感じたことをベースに話しかけるようになりました。これによって、私の「質問しなきゃいけない!」という心的負担が減りました。
 しかし、負担軽減以外にもよさがあるように思います。それは、授業者の先生に対して、質問をするよりも学習者としての私の感覚を伝えたほうが授業者の思いを聞きやすいということです。
 たとえば、授業を受けている際に「発問がわかりにくいな」と感じたとします。これまでの私は授業後に「あの発問の意図は何ですか」などと質問をしていたと思います。すると授業者の先生から返されるのは、少し形式ばった回答でした。「~という学習者の様子があったから、○○の意図をもって発問した」などというものです。このような回答が来ると、私もそれを受け止めて終わってしまうことが多くありました。せっかくの機会なのにうまくその時間を活かせていないと感じていました。
 しかし、「もう少し考えたいなと思っていたけれど、発問があって頭が混乱してしまった」などと、学習者として感じたことや考えたことを伝えることによって、授業者の先生からの返答が少し柔らかくなりました。「あ~そうだよね、本当は~したかったんだけど○○だったから…」というように、授業者の思いや葛藤を聞くことができるようになっていきました。すると、私もさらに質問を重ねやすくなり、より深く聞くことができるようになっていきました。同じ意図を聞くというやり取りですが、その内容や質に違いがあるように感じます。
 対話型検討会をする前までの私はどこか着飾った言葉で質問をしていました。とにかく何かそれっぽいことを聞こうとしていたのかもしれません。しかし、そうすると授業者の先生の言葉も用意していたような言葉になってしまう。見学していた私から感覚ベースの言葉を投げかけることによって、授業者のWantやFeelを聞くことができるようになりました。すると、授業者の思いを知ることができ、質問をしやすくなっただけでなく、より深く話を聞くことができるようになりました。対話型検討会を通して、授業の見方が変わっただけでなく、授業見学後の授業者とのやりとりの質も変わったのです。

画像4

対話×省察
 これまで話してきたように、プチ座談会の中で話すことによって気づくことが多くありました。プチ座談会が終わって「これでよかったのかな」という思いが強く残りましたが、参加者の方から「自分たちの言葉で話しているのがよくわかったし、だからこそ伝わったよ」と声をかけていただき、私たちも少しは何かできたのかなぁと思っています。「あぁそういえば…」と思いながら話していると、まとまらない部分も多くありましたが言語化することで大学院の2年間を振り返ることができました。このように考えると、私にとって今回のプチ座談会は「対話」をしながら「省察」を深めていく学びの機会になっていたのだと思います。渡辺先生の講演の内容ともマッチしていることに気づき、執筆しながら驚いているところです...!
 今回は私の感想や考えたことを中心にレポートしました。今後も「対話型検討会ネットワーク」のメンバーによって様々なレポートが記されていくと思います。今後の記事・レポートもぜひお楽しみに!
 最後に、今回お招きいただいた京都教育大学教職大学院の皆様及び京都連合教職大学院の皆様!本当にありがとうございました!(佐藤穂奈美)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?