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見返り般若


地下鉄に乗ると、「ちかん・強盗・強制わいせつゼッタイ許しません!」の広告が貼ってあった。
その言葉の隣には、可愛いらしい婦警さんが怒った顔をして「ストップ!」とでも言いたげに右手をパーの形で広げているイラストが描かれている。

初めて見たとき、私は「可愛いなぁ」と思った。しかし、厳しく注意しているのだから、きっとこの広告は可愛さは求めていない。だとすれば、この広告からはどうも危機感のような切迫した雰囲気を感じることが出来なかった。

もしかしたらこの可愛らしいビジュアルは、人の目を引きやすく、とっつきやすく、嫌悪感を抱かせないようにするために敢えてそうしているのかもしれない。

しかし、もし私が犯罪者だったら、この広告を見て「はっ!!ダメだ、犯罪はやめよう!!」と改心するだろうか?一瞬躊躇するかもしれないが、怯むことはあるだろうか。

実は、私は広告を見て「可愛い」と思うと同時に「ナメてるなぁ」とも思った。ナメているのは、被害者にも犯罪者にもである。仮にこの婦警さんが痴漢の被害者だとして(婦警さんごめんなさい)あんな可愛らしい怒り顔で「やめてください!」と言われて犯罪の手を止めるなら、こんなに深刻な問題にはなっていないのではないか。
そもそもこの私の考えこそがナメているのかもしれないが、世の中の認識と大きく外れているとは一概には言えないのではないかと思う。

では、この広告はどうあるべきなのだろうか?
文句ばかり思っていてもしょうがないので、改善策を考えてみることにした。

色々と考えていると、私が小さい頃に家族から聞いたある話を思い出した。

私の親戚に、スレンダーな叔母がいる。
ある夏の日の深夜、叔母は自分が経営する飲み屋から徒歩10分程の自宅に向かって歩いていた。すると、後ろから「ねぇ、彼女!」と若い男が声を掛けてきたらしい。田舎の飲み屋街だから人も出歩いておらず、お店もほとんど閉まっている。逃げ場がない状態で「どうしよう…!」と思っている間に肩を叩かれてしまった。恐る恐る振り返り、声を掛けてきた若い男と目が合う。
「うわぁぁぁぁっ!!!」
目が合って直ぐに叫びながら逃げていったのは、叔母ではなく若い男の方だった。
叔母は当時の年齢は50歳前後だったと思う。いくら後ろ姿がスレンダーでTシャツ越しにナイスバディを見せつけても、飲み屋の暗めな電灯にも映えるような濃い化粧越しでも分かる疲れ切った形相では、若い女性を期待していた男にとってはトラウマものだっただろう。

これだ…!!!

という経緯で描いたのがこちらの絵です。
般若のお面(叔母が当時「化粧を落としたらまるで般若」と言われていたのを思い出して)は、画像を拝借して上からなぞり書きしました。難しかったけど楽しかったです(子供か)。

街中にはあらゆる広告が溢れ返っていて、見ていてとても興味深いです。
誰が見ても分かるようなキャラクターものだったり、想像しやすい実写のものだったり、オシャレでスタイリッシュなイラストだったり。文字のフォント、大きさ、色使い、空間の使い方など。
今回、何も知識のないど素人が偉そうにしてしまいましたが、下手なりにも絵を描く身としては、広告からは色々なことを学ばせてもらっています。
日常の中にそういう機会が潜んでいると思うと、外に出るのも悪くないですよね。お陰で、外でスマホを弄る時間が少し減りました。

調べると、広告展というものもあるみたいですね。
いつか行ってみたいです。



全く関係ない今日の話

バスに乗りました。
連日の大雪のせいで、普段から交通量の多い道路はちょっとした渋滞になっていました。

行きはそんなに遅れはありませんでしたが、私が座った座席近くの停車ボタンが壊れていた為に、降りたいバス停で降りれないという、ちょっとしたハプニングがありました。
ボタンを押すと「ピンポーン」と音が鳴り、ランプも点灯するのですが、数秒後にその点灯が消えるという謎の故障。
最初は点灯が消えたことに気付かず、降りたいバス停を素通りされて、「えっ?!スルー?!公共交通機関に無視された…?ということはそれを取り仕切っている市や国から無視されたってこと…?」という妙な思考に走りながらも、次のバス停で降りなければ流石に大変なことになるので、もう一度ボタンを押して、ようやく状況を把握しました。
これまでにない経験だったので拙いながらも運転手さんにも故障を伝え、その後は除雪が追いついていない歩道の雪の中を全力疾走しながら目的地に向かいました。

逆に、帰りは遅れが顕著で、私がバスに乗る頃には既に予定時間よりも10分遅れとなっていました。バスは、私が乗ったバス停から約100m先に交差点で右に曲がるのですが、交通量+雪道で通常片側二車線なのが一車線になっていることで対向車線の車が左に曲がるだけで精一杯。中々進むことも出来ず、やっと曲がれたのは乗ってから20分後のことでした。
たかだか100m進むのに20分。雪って凄いですね。段々面白くなってきて、もうそろそろ曲がるだろうという頃には心の中でスポーツ実況並みに盛り上がってしまいました。「バス選手行くのか?!行けるのか?!いや、まだ行けないっ!!まだ行けません!!!ここは対向車に譲ります!なんという漢気!!カッコいいぞー!次のチャンスに期待です!!さて、いよいよ曲がれるか?曲がるのか?!行くのか?!行け……行ったぁぁぁぁーーーーー!!バス選手!行きました!!!!」完全に雰囲気です。

仕事の為にバスに乗ったのですが、仕事先の人曰く今日は吉日だそうです。色々思うことはありますが、楽しかったので良しとします。

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