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ジャズ記念日: 2月13&17日、1976年@ニューヨーク

Feb. 13 & 17, 1976 “We’ll Be Together Again”
By Pat Martino & Gil Goldstein
At Blue Rock Studio, NYC for Muse Records (We’ll Be Together Again)

パットマルティーノのクリアで残響がかかったギターと、ギルゴールドスタインのレトロなエレキピアノ、フェンダーローズによる音色の相性の良いデュオ演奏。

同じく白人同士の同じ楽器の組み合わせ、この十四年前のアコースティックのビルエバンスとジムホールのギター演奏と比較すると、時代の波で両者の楽器が共に電化しているのと演奏スタイルが従来の伝統的なジャズから進化してフュージョン化しているが、寄り添う演奏スタイルは共通している。

ゴールドスタインと、この2年半後の時を経て収録されたエバンスによる”Affinity”でのエレピを比較するのも面白いが、その特徴を活かした音のボイシングは類似しているように思われる。マルティーノのギターの特徴はシングルトーンによる正確で粒の揃ったピッキングで、メロディーを重ねるように紡ぎ出すスタイルが、このソロ演奏でも存分に捉えられている。シングルトーンのスタイルはグラントグリーンと同じで、似たようにオルガン奏者との演奏を得意としているが、ソウルに根差したグリーンとは違った、ロジカルで理路整然とした緻密なアプローチとクリーンなトーンが対照的。

そして楽曲もさながら東海岸の冷たい冬の空気感が、クールなマルティーノの淡麗なスタイルと相性良く収録されている。冬という収録の季節を意識すると、アルバムジャケットすら、凍える冬を表現しているように思える。そのアルバムジャケットは二種類存在している。表題はリイッシューの際に採用された風景画。一方、下部に掲載したものは、発売当初のジャケットのパットマルティーノの肖像写真で、白黒でクールな感じから、それはそれで冬らしさがある。

この二つを比較すると、誰がどうやってアルバムジャケットのデザインを選定するのか、そのセンスと選定理由が気掛かりになる。調べたら、この絵はスウェーデン人アーティストのグナーノーマンによるもの。この作家の作品は白黒の寂しげな、まさに冬という感じの風景画が多い。アルバムの雰囲気を受けた選定と考えると合点は行く。

一方、オリジナルジャケットの肖像写真には、比較対象がある。それはジャズギターの巨人、ウエスモンゴメリー。下部の写真でポーズを比べてみて欲しい。マルティーノの若かりし頃の逸話として、師匠のレスポールと共にニューヨークでウエスモンゴメリーのステージを観に行ったところ、そこにグラントグリーンとジョージベンソンも観にきていて、その流れでウエスを交えた巨匠ギタリスト五人で朝食を共にしたそう。何と豪華な顔触れ。
※最下部に本人が逸話を語る動画(英語)あり

曲の題名は、「また会いましょう」という名のスタンダード曲で、その歌詞からアメリカのテレビドラマの最終回でも何度も採用されているそうだ。

1972年に設立された新興レーベルのミューズ作品。本作のようなコンテンポラリー系の音楽をプロデュースした。

時を経て2013年に同メンバーで”We Are Together Again”をワーナーで発表したが、これは日本企画で、その名前の通り、オリジナル本アルバムの日本での根強い人気が企画の源泉にある。

MUSE盤の発売当初のジャケット写真。白黒だと冷たさを感じさせる。

上記のポーズ、何処と無く先人のウエスモンゴメリーの1967年六月収録作品の名盤、”A Day In The Life”内の写真のポーズに似ている。意識しているのか、いないのか。マルティーノはウエスへのトリビュートアルバムも制作している事から、意識していると考えたい。そしてウエスの方がカラー写真で目を開けているということもあってか、ギターのトーン同様に温かみがある印象を受ける。

パットマルティーノ本人によるジャズギターレジェンド参集の逸話(英語)は、こちら。

この巨匠五人の集合写真を探していたら出て来たのがこちらのポスター。マルティーノとレスポールを除く三名が登場している。このポスターの主、マークウィットフィールドは、美男トランペッターのクリスボッティのバンド等でギターを担う実力者。三人に加えた残りの一人がジミヘンというところが、この人のエンタテイナーとしての資質の表れ。歌心があり、ブルースが上手い黒人の実力派というのが、この四人の共通項。

このウィットフィールドによる演奏に興味がある方はこちらをご覧ください。

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