映画の感想『フェイフェイと月の冒険』

ネットフリックスオリジナル作品。映画と言っていいかはわかんないけどまあネトフリでは映画の括りのところにあったので映画扱いということで。

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 米中合作のCGアニメ作品。中国のパール・スタジオという会社メインで作られてるっぽいけど、首脳級のスタッフはほとんど米国人なので作品全体のトーンとしてはアメリカ色……というよりかはディズニー出身の人が監督を務めてることもあってディズニー色が非常に強い作品。それもあってか、アニメーションの質は非常に良質。キャラクターの表情がぬるぬる動き、動きのあるシーンや、ミュージカル作品としての歌のシーンの出来は中々に高い。ピクサー作品と言ってもまあ通じるだろうな、というレベル。音楽の質も高く、演出面の評価は高い。

 ただ、脚本の作りはちょっと雑かな、というのが正直なところ。数年前に母親を失った少女が、再婚を決めた父にそれを諦めさせるために、恋人を亡くした後も一人で月で生き続ける女神様の実在を証明して、永遠の愛が実在することを示すために月へ向かって写真を手に入れようとするという話。大筋自体は悪くなく、亡くなった人は帰ってこないから未来を見ていこうという作品全体のメッセージもまあ悪くない。だけども、中国要素やキャラクターの造形に、大分粗さが目立つ。
 神話以外の中国要素は月餅ととってつけたように突然チラッと登場するリニアモーターカー、無理矢理捻り出した感のある卓球ラップくらいしか出てこないので、これで良いのか……?という感じが強い。特に物語のキーポイントの7割くらいが月餅で原因かきっかけになって解決してるので、本当に月餅の記憶しか残らない。月餅のステマ作品と言われたら納得できるくらいに月餅推しである。正直「流石に何か他のモン使えただろワレェ!」という感じの気持ちになる。月の世界も中国神話感よりもSF感が強いので、そこも個人的にはうーん……?となったところである。
 キャラクターの造形に関しても主人公とその弟がどっちも微妙。主人公は理数系に関して天才的な頭脳を持つ少女という設定があり、その頭脳を生かして月へ向かうロケットを自作するのだが、月に行った後はこの頭脳が役に立ってる感は殆どなく、月に生かせる方法を作らせるための無理矢理な設定に思えてならない。そもそも月に神様がいると信じてる夢みがちな少女を天才設定にするのも少し無理がないか……、というところもつっかえる。弟に関してはもう単純にウザすぎる。一応作中の設定からウザキャラとして作られてるっぽいのだが、割と洒落にならないくらいウザイのでまあ見てて結構な人がイライラする気がする。これでキャラデザが可愛ければどうにかなるのだが、中国の子供のリアルっぽさを強調してるらしく、再現度は高くて「こんなの居たな〜」って感じなのだ。端的に言ってしまうと、エロ漫画に登場するマジで可愛くないタイプのクソガキみたいなデザインなのでマージで可愛くない。本当にただただウザい。子役の子が吹き替えを担当しててその吹き替えも上手いのだが、上手い結果さらにウザい。
 

 これ以外にも、結構尺の長い話をやるのに上映時間は2時間なくて、なおかつ演出に時間を取られるミュージカル作品なので、いまいち展開が急だとか、そういうツッコミどころは多々ある。まあCGアニメーションのクオリティは高く、ミュージカルとしての曲のシーンの演出はめちゃくちゃ良くできている。卓球ラップあたりでまあ見た甲斐はあったかな、という感じ。ただ、色々作劇が杜撰なのが致命的な気はするので、人に勧めるものではないな、という感じ。金に物を言わせて作画の質を上げるのもいいが、もーちょっと脚本も頑張って欲しいなって思った作品だった。なんか中国のアニメ見るたびにこんなことを思ってる気もする。

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